Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
西の村の決戦①
マルケブは天狼の祠の横にある庵で、酒をびんのままあおっていた。しかも裸の男の上にまたがり、腰を激しく揺すっていたのだ。上の服は着たままだが、下は何もまとっていない。
「マ、マルケブさん、もう俺はだめだ…」
げっそりとしている男は許しを乞うように言ってくるが
「だめじゃないでしょ。まだ7回しか出していないじゃない」
腰の動きを速め、マルケブは男の液を受けた。これでこの男は今日、8回目だった。
「…あら? もしかして死んじゃった? まあ、2カ月間毎日やったら無理ないかな」
まるで壊れたおもちゃを捨てるような口調で、マルケブは男から離れて顔を蹴った。ったく物足りないわね、最近の男って。
こんな生活をしているのに妊娠することがなかった。アルセフィナを生んだ後、体に異常が発覚し、もう子供を生めなくなったのだ。しかし、性欲は残った。それどころか、離婚した時を境に年々増していき、1人で複数の男と関係を持ったり、一度に複数を相手にしたりした。同時に酒の量も増えていった。
マルケブは性行為依存症とアルコール依存症になっていたのだ。こんな生活は続けられないと思いつつも、抜け出すことができないでここまで来てしまった。そして、コラプサーを手にしてから欲望の渦がさらに激しくなってきたのだ。
「いつまで震えているの、アルセフィナ?」
マルケブは暗がりの方に声を掛けた。そこには――檻のようなものに囲われたアルセフィナがいた。たった今もそうだが、このような凄惨かつふしだらな光景を何度も見せられている。気が狂いそうになっているのだった。
その横に、ミモザが鎖でつながれて倒れている。かなり強力な呪いをかけられているようで、起き上がれない。「ううう…」と声にならないうめきを漏らしている。
マルケブはミモザに近寄り、あごをくいっと上げて唇を強引に重ねた。
「んっ……!」
ミモザは抵抗しようとしたが体が動かない。口づけが終わると、マルケブはミモザの顔を突き放した。頭がゴン、と床に打ち付けられる。
「あなたを連れてきたのは兵隊にするため。そろそろ働いてもらうわよ」
マルケブは妖艶に微笑み、三つ目の暗黒十字をミモザにかざした。
ミモザの目の前が真っ暗になった。ここはどこだ……? あ、覚えがある、自分の幼い頃の悔しい気持ちや嫉妬。友達とけんかして負けて泣いたり、弟に愛情を注ぐ親に拗ねたり……そんな嫌な感情だ。
でも、そんなものはまだかわいい。誰もが抱いても不思議ではないものだ。それらの光景の後に、1人の男の姿が見えた。
「カノープス……」
突然、紫微垣の候補生として現れた少年。何年も修行し、やっと七星剣を手に入れた自分が候補生の筆頭だった。それに次ぐのがミアプラだったはずだ。しかし、彼は自力で七星剣を作るという試練をクリアし、秘剣だって瞬く間に習得した。その様子を見る師匠・フォマルハウトの目は期待で輝いていた。まるで、彼が候補生の筆頭になったかのように。
後から出てきたヤツに追い抜かれた――そんな小さな嫉妬が、僕の心に一点の墨のように生まれた。
師匠はカノープスを一番に頼るようになった。それまでは僕を頼ってくれていたのに……。もしかしたらカノープスが紫微垣になるかもしれない。そうしたら、僕やミアプラは彼にひざまずかなければならないのか? 後輩に? 冗談じゃない、僕らにだってプライドがある。候補生筆頭は渡さない!
しかし、僕はその嫉妬を表に出さないようにした。出せば皆から幻滅されるだろう。ミアプラすらも心が離れるかもしれない。2人ともカノープスが好きじゃなかったから、そんなことからも心が通うようになったのだろう。ミアプラがカノープスへの嫌悪を話すたびに、少しの優越感を持ちながら慰めていた。彼に嫉妬している僕だって、同じ心境だったはずなのに……。
そんな僕らをよそに、カノープスは忌々しいまでに一行を指揮し始めた。北の町に行った時が最初だ。本来なら僕がやるべき仕事を奪い取った。嫌悪感はさらに増したが、表には出せなかった。ミアプラと同じ離れに泊まったのは、彼女が心配だったのもあるが、カノープスと一緒にいたくなかったのだ。
暗黒十字って、人間の醜い心や心の隙に入り込むっていうけど、本当みたいだな。僕は自分の意志が、黒く染まっていくのを感じた。
「坊や、お目覚め?」
マルケブが声を掛けると、ミモザが立ち上がった。その手には、深緑色の星鏡がはめ込まれた七星剣が握られている。
「さて、そろそろうちの息子が村に来る頃ね。迎え撃ってくれるかしら?」
「はい……」
ミモザは低く唸るような声で返事をして、アルセフィナの前に立った。その様子を見たアルセフィナは、びくっと肩をすくめる。
――天牢庵で見たことのあるミモザさんじゃない。そう感じた瞬間、アルセフィナはぐいっと腕を捕まれた。すごい力だ。悲鳴を上げる暇もなく彼女はミモザに抱えられ、庵の外に出された。
「マ、マルケブさん、もう俺はだめだ…」
げっそりとしている男は許しを乞うように言ってくるが
「だめじゃないでしょ。まだ7回しか出していないじゃない」
腰の動きを速め、マルケブは男の液を受けた。これでこの男は今日、8回目だった。
「…あら? もしかして死んじゃった? まあ、2カ月間毎日やったら無理ないかな」
まるで壊れたおもちゃを捨てるような口調で、マルケブは男から離れて顔を蹴った。ったく物足りないわね、最近の男って。
こんな生活をしているのに妊娠することがなかった。アルセフィナを生んだ後、体に異常が発覚し、もう子供を生めなくなったのだ。しかし、性欲は残った。それどころか、離婚した時を境に年々増していき、1人で複数の男と関係を持ったり、一度に複数を相手にしたりした。同時に酒の量も増えていった。
マルケブは性行為依存症とアルコール依存症になっていたのだ。こんな生活は続けられないと思いつつも、抜け出すことができないでここまで来てしまった。そして、コラプサーを手にしてから欲望の渦がさらに激しくなってきたのだ。
「いつまで震えているの、アルセフィナ?」
マルケブは暗がりの方に声を掛けた。そこには――檻のようなものに囲われたアルセフィナがいた。たった今もそうだが、このような凄惨かつふしだらな光景を何度も見せられている。気が狂いそうになっているのだった。
その横に、ミモザが鎖でつながれて倒れている。かなり強力な呪いをかけられているようで、起き上がれない。「ううう…」と声にならないうめきを漏らしている。
マルケブはミモザに近寄り、あごをくいっと上げて唇を強引に重ねた。
「んっ……!」
ミモザは抵抗しようとしたが体が動かない。口づけが終わると、マルケブはミモザの顔を突き放した。頭がゴン、と床に打ち付けられる。
「あなたを連れてきたのは兵隊にするため。そろそろ働いてもらうわよ」
マルケブは妖艶に微笑み、三つ目の暗黒十字をミモザにかざした。
ミモザの目の前が真っ暗になった。ここはどこだ……? あ、覚えがある、自分の幼い頃の悔しい気持ちや嫉妬。友達とけんかして負けて泣いたり、弟に愛情を注ぐ親に拗ねたり……そんな嫌な感情だ。
でも、そんなものはまだかわいい。誰もが抱いても不思議ではないものだ。それらの光景の後に、1人の男の姿が見えた。
「カノープス……」
突然、紫微垣の候補生として現れた少年。何年も修行し、やっと七星剣を手に入れた自分が候補生の筆頭だった。それに次ぐのがミアプラだったはずだ。しかし、彼は自力で七星剣を作るという試練をクリアし、秘剣だって瞬く間に習得した。その様子を見る師匠・フォマルハウトの目は期待で輝いていた。まるで、彼が候補生の筆頭になったかのように。
後から出てきたヤツに追い抜かれた――そんな小さな嫉妬が、僕の心に一点の墨のように生まれた。
師匠はカノープスを一番に頼るようになった。それまでは僕を頼ってくれていたのに……。もしかしたらカノープスが紫微垣になるかもしれない。そうしたら、僕やミアプラは彼にひざまずかなければならないのか? 後輩に? 冗談じゃない、僕らにだってプライドがある。候補生筆頭は渡さない!
しかし、僕はその嫉妬を表に出さないようにした。出せば皆から幻滅されるだろう。ミアプラすらも心が離れるかもしれない。2人ともカノープスが好きじゃなかったから、そんなことからも心が通うようになったのだろう。ミアプラがカノープスへの嫌悪を話すたびに、少しの優越感を持ちながら慰めていた。彼に嫉妬している僕だって、同じ心境だったはずなのに……。
そんな僕らをよそに、カノープスは忌々しいまでに一行を指揮し始めた。北の町に行った時が最初だ。本来なら僕がやるべき仕事を奪い取った。嫌悪感はさらに増したが、表には出せなかった。ミアプラと同じ離れに泊まったのは、彼女が心配だったのもあるが、カノープスと一緒にいたくなかったのだ。
暗黒十字って、人間の醜い心や心の隙に入り込むっていうけど、本当みたいだな。僕は自分の意志が、黒く染まっていくのを感じた。
「坊や、お目覚め?」
マルケブが声を掛けると、ミモザが立ち上がった。その手には、深緑色の星鏡がはめ込まれた七星剣が握られている。
「さて、そろそろうちの息子が村に来る頃ね。迎え撃ってくれるかしら?」
「はい……」
ミモザは低く唸るような声で返事をして、アルセフィナの前に立った。その様子を見たアルセフィナは、びくっと肩をすくめる。
――天牢庵で見たことのあるミモザさんじゃない。そう感じた瞬間、アルセフィナはぐいっと腕を捕まれた。すごい力だ。悲鳴を上げる暇もなく彼女はミモザに抱えられ、庵の外に出された。