Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―

西の村の決戦②  ミモザとの戦い

 その頃。カノープスとアヴィオールは西の村に入った。想像以上に荒んだ場所だ。
 家屋があまりなく、あったとしても荒ら屋なのである。雑草が伸び放題の地面には簡易テントが無造作に備えられていて、中からは薄汚れた服を着た人々が出てくる。時折、こちらを見るが、あまり興味がないようですぐに視線を逸らして行ってしまう。
 こいつら、自分たちの生活で精一杯なのか……カノープスはなんとなしに感じた。
「何だか…生気のない所だね」
 アヴィオールのつぶやきすら響いた声に聞こえる。
「ここの雰囲気なんてどうだっていい。俺たちの使命はポラリスを奪い返し、アルセフィナとミモザを連れ戻すことだ」
 自分のことで精一杯――それはカノープスも同じだった。だが、紫微垣候補生であることが、彼を別の使命感にかきたてようとしていた。
「アヴィオール」
 突然、カノープスが声を掛ける。あまりに唐突で、アヴィオールは「な、何?」と身構えた。
「お前、アルセフィナのことが好きだろ?」
 絶句する代わりに、「と、突然何を!?」という表情で答えるアヴィオール。
「お前、アルセフィナと一緒にいることが何度かあったろ? そういう日の夜、あいつはお前の話をよくしていたよ。アルセフィナもお前のことが好きみたいだ」
 アヴィオールは自分の顔が赤くなるのが分かった。まさか、両想いだなんて……それにしても、カノープスから恋愛のことを聞いても心が浮かれないのはなぜだろう? たぶん、淡々と話してくるせいかも。というか、彼から恋愛のことを聞くなんて思わなかったなあ。
「この戦いが終わった時、誰が生き残っているか分からんが…」
 と前置きをした後、
「お前とあいつがくっつくのはかまわん。その代わり、あいつを泣かせたら逆さに吊す」
 敵に向けるような殺気のこもった視線を送ってきた。恋バナで戦慄するなんて初めてだ……と思いながら「は、はい」と返事をした。
 しばらく歩くと、距離にして五百メートル先に大きめの建物が見えた。他のあばら屋、テントと違って裕福そうに見える。おそらく、この村で一番大きい家だろう。
 その少し前に人影があった。目を凝らしてみると――七星剣を持った男と、手首足首を縛られた女性だ。
「ミモザ! アルセフィナ!」
 アヴィオールが叫んだ。2人ともマルケブに誘拐されたのに、この構図は何だ?
「カノープス…お前を殺す」
「は?」
 ミモザの言葉にカノープスはきょとんとした。今、「殺す」って言ったか? 聞き返す暇もなく、ミモザは七星剣で一の秘剣・魚釣り星を繰り出してきた。剣先はカノープスたちの横にあった岩に当たり、ガンッ、という音とを立てて岩を破壊した。
「おい、何の真似だ、ミモザ」
 アヴィオールが唖然とする横で、カノープスは動じることなくミモザをにらむ。だいたいの察しはついた。おそらく三つ目の暗黒十字で操られているんだろう。でなければ、紫微垣候補生の筆頭であるミモザが、攻撃を仕掛けてくるはずがない。
 そう思っているうちに、ミモザはどんどん攻撃してきた。カノープスもアヴィオールも、元々の味方に攻撃できないのに、ミモザはためらうことなく攻めてくる。避けながらアヴィオールが叫んだ。
「ど、どうしようカノープス! これじゃいつかやられちゃうよ!!」
 カノープスは無言で避けていたが、ミモザから間合いをとってアヴィオールに近寄ると、作戦を提案してきた。
「俺がミモザと切り結ぶ。その隙に、五行の星鏡で反撃しろ」
「え、でも……」
「ぐずぐずするな、殺されたいのか」
 カノープスの言葉は冷徹だ。思い起こせば、彼はいつも沈着冷静で、激昂するのは食べ物を粗末にした時だけだ。ヤングケアラーとしての過酷な生き方が、彼の性格形成に影響してきたのだろう。
「本気でいけ、ミモザは候補生の筆頭だ。簡単に死にやしねえよ」
「…分かった」
 アヴィオールは腹をくくった。このままでは自分も、そしてアルセフィナも死ぬ。だったらやるしかない。
「まず、ミモザとアルセフィナを切り離すよ。その上でミモザを仕留める。カノープス、斬撃を打ちながらアルセフィナから離れて。その時、僕ら3人の周りを火で囲むから」
 カノープスはアヴィオールの意図がいまいち飲み込めなかったが「了解」と返答した。早速、カノープスがミモザに向かっていき、斬撃を打ち込む。すさまじい攻防を繰り広げ、2人はアルセフィナから徐々に離れていった。
 そして50m離れた地点に来た時、アヴィオールは木の星鏡で二の秘剣・螺旋昴を放った。すると、アヴィオール、カノープス、ミモザの3人の周りを太い木の根と枝がぐるっと囲んだ。
さらに、一の秘剣・魚釣り星に火の星鏡を組み合わせ、木を燃やした。3人の周りに炎の壁ができあがったのだ。
(やるな…)
 こういう機転が利くのかと、カノープスは感心した。ミモザやミアプラに押されて目立たなかったが、実力はあるのだろう。
 カノープスはミモザに向かっていった。
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