Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―

西の村の決戦③

 その頃。カペラとミアプラは村の外にテントを張って休んでいた。遠目にドンパチやっているのが見えたが、今、彼女らにできることはない。
「大丈夫かしら…」
 すると、寝ていたミアプラが起き上がり、七星剣を掴んで立ち上がった。
「ちょ、ミアプラ、どこに行くの!?」
「ミ、ミモザのところへ…」
 フラフラしながらもテントを出て、歩き出す。カペラはミアプラの体を抱えて止めた。
「無茶よ! あなたは今、つわりなのよ! これだけひどいってことは、妊娠悪阻になっているかもしれない! 安静にしてなさい!」
「…いやだよ!」
 ミアプラはカペラの手を振り切る。
「ミモザが…きっとすぐそこにいる…会いに行かなきゃ…」
 七星剣を杖にして歩き出す。その姿を見て、安静にしろとはもう言えなかった。
「待って、私も行くわ」
 カペラは心に決めた。危険になったら自分が盾になってでもこの子を守る。フォマルハウトの大切な娘だもの。守ってみせる。

 一方、火の陣の中にいた3人は激闘を広げていた。カノープスがミモザと切り結び、アヴィオールが隙を見て攻撃を仕掛ける。2対1ではあるが、卑怯とは言っていられない。とにかく、ミモザを戦闘不能にして洗脳を解き、アルセフィナの安全を確保しなければならない。
 アヴィオールは七星剣に金の星鏡を使った。すると剣が大きくなって攻撃範囲が広がった。
「くっ!」
 ミモザの顔に焦りが見える。さすがにカノープスとアヴィオールの2人を相手にするのは難しいようだ。
そうこうしているうちに、ミモザを火の壁に追い詰めた。「チャンス!」とばかりに、アヴィオールは土の星鏡で一の秘剣・魚釣り星を発動させた。ミモザの足元の土が盛り上がって丘になったかと思うと、バランスを崩して転げ落ちてきた。
「今だ!!」
 アヴィオールは最後の水の星鏡で小さな津波を起こそうと七星剣を振るった。が――。

 ガキイン

 という音とともにアヴィオールの七星剣が折れて吹き飛んだ。切っ先は先ほどの丘の天辺あたりに突き刺さった。
「嘘だろ!?」
 七星剣が折れてしまった。黄色の星鏡はまだ輝きを放っているが、徐々に光が弱くなっている。
「残念だったな!」
 ミモザが狂気じみた声で叫びながら、アヴィオールに襲いかかった。そこにカノープスが割って入る。
「アヴィオール、逃げろ!」
 七星剣が折れては戦えない。しかも、彼が持っていた五行の星鏡はすべて使ってしまったのだ。
「で、でも…」
「いいから逃げろ! アルセフィナを連れて行け!!」
 そうか、彼女をひとまず避難させることはできる。そう思って駆け出そうとしたら、バシンッ、とミモザの魚釣り星が飛んできた。
「くっ!」
 カノープスと戦いながらこんな芸当ができるなんて…やはり紫微垣候補生の筆頭なだけある。
「アヴィ!!」
 ふと、聞き覚えのある女性の声がした。振り返ると、少し離れたところに――母・カペラと異母姉のミアプラの姿があった。ミアプラはつわりが辛いのか、座り混んでいる。
「これを!!」
 カペラが何かを投げてきた。受け取ると、赤い星鏡の七星剣だった。ミアプラの剣だ。
「使って!」
「ありがとう!!」
 これでまた戦える。アヴィオールはカノープスと共にミモザに攻撃を仕掛ける。とにかく、当て身で気絶させられればいい、どうにか止めないと――。しかし、次々に繰り出す秘剣は跳ね返されてしまう。埒が開かない。
 双方、間合いを取り、相手の出方をうかがう。その姿勢で1分ほどした頃――。ゴゴゴという音が聞こえた。
「何だ?」
 音は、土の星鏡でできた丘から聞こえた。正確には、折れたアヴィオールの七星剣が刺さった所からだ。
 水がチロチロと流れていたが、突然、堤防が決壊したかのように水が溢れ、土を巻き込んで濁流となって流れてきた。
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