Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
幼い盗賊たち
「ど、どういうことだよ!?」
抱き合っている2人を見て、カストルは大声を上げた。年の差カップルはその声にビクッと反応する。
「ああ、そうか。お前は知らなかったな。あの2人、付き合い始めたらしい」
「おいおい、教師と生徒の恋愛なんて…燃え上がるじゃねえか!!」
ポルックスが「声が大きい」とカストルの頭をはたいた。やっぱりこいつは肝心なところがずれているようだ。
「どうしたんですか、レグルス先生。こんなところで」
アルクトゥルスがしれっと尋ねると、レグルスはばつが悪そうに近寄ってきた。
「…まあ、見ての通りだ」
「デネボラから聞きました。他言するつもりはないですけど、他の者に見られたら面倒ですよ」
ポルックスがたしなめるように言う。
「え? え? っていうか、何でお前ら知っているの? 三羽ガラスで俺だけ知らなかったのか? というか、他の人間に言っちゃだめなのか?」
「うるさいからお前は少し黙っていろ」
再びポルックスがカストルをどつく。
「恥ずかしいところを見られちゃったわね。ごめん、内緒にしていてね」
デネボラがいたずらっぽくはにかみながらウィンクし、右手の人差し指を唇に持ってくる。柔らかそうな唇に指が当たると、ぷるんとかわいくはじけた。
アルクトゥルスは一瞬見とれたが、気を取り戻してここに来た理由を言った。
「怪しい足音を聞いたんです。人数は20人前後、この時間帯にこの辺りに来るのであれば、ポラリスを狙う賊の可能性があります」
「何だって!?」
レグルスは驚く。
「とにかく、木の陰に隠れていてください。俺はここを見張ります」
アルクトゥルスは七星剣を構え、山道の前に仁王立ちとなった。七星剣の水色の星鏡が、闇の中でキラリと光る。
ポルックスは木刀を持って構えた。文武両道のこの男は、剣を握らせたら同世代の人間では随一の腕を誇る。
カストルは長い木の槍を地面に突き立てた。彼は剣は苦手だが、それ以外の武器や体術は屈指の腕である。
その姿を見てデネボラが「…なんか、演劇のヒーローみたいね」とつぶやく。
「ヒーロー! いいねえデネボラ、ポラリスを狙う盗賊を迎え撃つ三羽ガラス…演目になりそうだぜ!」
カストルは演劇――歌舞伎や講談の荒事のようなものを想像しているのだろう。テレビであれば戦隊ものが近い。
「そういえば、赤と青と黄色の手ぬぐい持っているから巻いてみる?」
デネボラの提案で、アルクトゥルスが赤、ポルックスが青、カストルが黄色の手ぬぐいを受け取り、それぞれ左腕に巻いた。本当に戦隊もののようになり、アルクトゥルスとポルックスは微妙な笑みを浮かべ、カストル1人がはしゃいでいる。
ちなみに、アルクトゥルスの赤はやや薄くてピンク色に見えなくもない。そうなると、不思議な力でかわいく変身する某戦闘少女アニメらしくもなる。
「すげえ、何かテンション上がるな!」
「お前、もうちょっと緊張感持てないのか?」
ポルックスが冷静に突っ込むが、カストルは「そうそう、カノープスじいさんが作った夜食を持ってきたんだ、食べるか?」とおにぎりや魚の竜田揚げの包みを差し出す。日中や夕方にあれだけ食べて、さらに夜食をねだっていたのか…。
「もういいよ…」
「食べる」
呆れるポルックスをよそにアルクトゥルスは手を伸ばした。実は腹が減っていたのだ。
「ところでアルク、足音は聞こえるか?」
竜田揚げをむしゃむしゃ食べながら、カストルが聞いた。
「それがな、足音が消えちゃったんだよ」
妙なこともあるものだ。さっきまでドカドカと聞こえていたはずなのに……。
「どうなっているんだろうな。それこそ空を飛ばない限りは足音が聞こえ……」
アルクトゥルスが何気なく空を仰いだ瞬間、何かが落下してきた。そこにはキラリと光る刃が!!
「っと!!」
アルクトゥルスは紙一重でかわし、地面に転げた。その瞬間、持っていたおにぎりを落としてしまった。
「カストル、ポルックス! 上から来るぞ!!」
「はあ!?」
二人が空を見上げると、夜空から人間が降ってきた。20人はいるだろう、全員ナイフのような得物を持っている。
「途中から足音が消えたのは、木の枝を飛び移ってきたからか」
「うおりゃああ!!」
カストルが叫びながら木の槍を振り回した。が、盗賊どもは軽い身のこなしでかわしていく。
「気をつけろ! こいつら、猿みたいに身が軽いぞ!」
ポルックスも木刀を構えて踏み込むが、斬撃はどんどんかわされていく。
「2人とも、左右に跳べ!!」
後ろからアルクトゥルスが叫んだ。カストルとポルックスが離れると、鞭状に変形した七星剣が盗賊たちに向かっていった。
「一の秘剣・魚釣り星!」
紫微垣の初歩の秘剣である。中長距離の範囲をカバーし、攻守ともに使える汎用性の高い技だ。しなりを上げて敵の6、7人に命中した。
「うわっ!!」
「ぎゃっ!!」
その声を聞いて三羽ガラスは驚く。甲高い声だ。
「まさか、女!?」
しかし、目をこらしてよく見ると――男の子供たちであった。甲高い声は、声変わりする前なのだろう。
「なんで子供が!?」
カストルが驚いていると、別の方向から賊の1人が襲いかかってきた。
「うおっ!!」
避けたとたん、夜食が落ちた。すると、地面に落ちた夜食を目指して賊の少年たちが群がる。腹が減っているのか?
「ちっ!」
カストルは持っていた夜食をすべて地面にばらまいた。ポルックスも、手に持っていたおにぎりを放り投げた。すると、少年たちは食べ物に群がり始めた。
抱き合っている2人を見て、カストルは大声を上げた。年の差カップルはその声にビクッと反応する。
「ああ、そうか。お前は知らなかったな。あの2人、付き合い始めたらしい」
「おいおい、教師と生徒の恋愛なんて…燃え上がるじゃねえか!!」
ポルックスが「声が大きい」とカストルの頭をはたいた。やっぱりこいつは肝心なところがずれているようだ。
「どうしたんですか、レグルス先生。こんなところで」
アルクトゥルスがしれっと尋ねると、レグルスはばつが悪そうに近寄ってきた。
「…まあ、見ての通りだ」
「デネボラから聞きました。他言するつもりはないですけど、他の者に見られたら面倒ですよ」
ポルックスがたしなめるように言う。
「え? え? っていうか、何でお前ら知っているの? 三羽ガラスで俺だけ知らなかったのか? というか、他の人間に言っちゃだめなのか?」
「うるさいからお前は少し黙っていろ」
再びポルックスがカストルをどつく。
「恥ずかしいところを見られちゃったわね。ごめん、内緒にしていてね」
デネボラがいたずらっぽくはにかみながらウィンクし、右手の人差し指を唇に持ってくる。柔らかそうな唇に指が当たると、ぷるんとかわいくはじけた。
アルクトゥルスは一瞬見とれたが、気を取り戻してここに来た理由を言った。
「怪しい足音を聞いたんです。人数は20人前後、この時間帯にこの辺りに来るのであれば、ポラリスを狙う賊の可能性があります」
「何だって!?」
レグルスは驚く。
「とにかく、木の陰に隠れていてください。俺はここを見張ります」
アルクトゥルスは七星剣を構え、山道の前に仁王立ちとなった。七星剣の水色の星鏡が、闇の中でキラリと光る。
ポルックスは木刀を持って構えた。文武両道のこの男は、剣を握らせたら同世代の人間では随一の腕を誇る。
カストルは長い木の槍を地面に突き立てた。彼は剣は苦手だが、それ以外の武器や体術は屈指の腕である。
その姿を見てデネボラが「…なんか、演劇のヒーローみたいね」とつぶやく。
「ヒーロー! いいねえデネボラ、ポラリスを狙う盗賊を迎え撃つ三羽ガラス…演目になりそうだぜ!」
カストルは演劇――歌舞伎や講談の荒事のようなものを想像しているのだろう。テレビであれば戦隊ものが近い。
「そういえば、赤と青と黄色の手ぬぐい持っているから巻いてみる?」
デネボラの提案で、アルクトゥルスが赤、ポルックスが青、カストルが黄色の手ぬぐいを受け取り、それぞれ左腕に巻いた。本当に戦隊もののようになり、アルクトゥルスとポルックスは微妙な笑みを浮かべ、カストル1人がはしゃいでいる。
ちなみに、アルクトゥルスの赤はやや薄くてピンク色に見えなくもない。そうなると、不思議な力でかわいく変身する某戦闘少女アニメらしくもなる。
「すげえ、何かテンション上がるな!」
「お前、もうちょっと緊張感持てないのか?」
ポルックスが冷静に突っ込むが、カストルは「そうそう、カノープスじいさんが作った夜食を持ってきたんだ、食べるか?」とおにぎりや魚の竜田揚げの包みを差し出す。日中や夕方にあれだけ食べて、さらに夜食をねだっていたのか…。
「もういいよ…」
「食べる」
呆れるポルックスをよそにアルクトゥルスは手を伸ばした。実は腹が減っていたのだ。
「ところでアルク、足音は聞こえるか?」
竜田揚げをむしゃむしゃ食べながら、カストルが聞いた。
「それがな、足音が消えちゃったんだよ」
妙なこともあるものだ。さっきまでドカドカと聞こえていたはずなのに……。
「どうなっているんだろうな。それこそ空を飛ばない限りは足音が聞こえ……」
アルクトゥルスが何気なく空を仰いだ瞬間、何かが落下してきた。そこにはキラリと光る刃が!!
「っと!!」
アルクトゥルスは紙一重でかわし、地面に転げた。その瞬間、持っていたおにぎりを落としてしまった。
「カストル、ポルックス! 上から来るぞ!!」
「はあ!?」
二人が空を見上げると、夜空から人間が降ってきた。20人はいるだろう、全員ナイフのような得物を持っている。
「途中から足音が消えたのは、木の枝を飛び移ってきたからか」
「うおりゃああ!!」
カストルが叫びながら木の槍を振り回した。が、盗賊どもは軽い身のこなしでかわしていく。
「気をつけろ! こいつら、猿みたいに身が軽いぞ!」
ポルックスも木刀を構えて踏み込むが、斬撃はどんどんかわされていく。
「2人とも、左右に跳べ!!」
後ろからアルクトゥルスが叫んだ。カストルとポルックスが離れると、鞭状に変形した七星剣が盗賊たちに向かっていった。
「一の秘剣・魚釣り星!」
紫微垣の初歩の秘剣である。中長距離の範囲をカバーし、攻守ともに使える汎用性の高い技だ。しなりを上げて敵の6、7人に命中した。
「うわっ!!」
「ぎゃっ!!」
その声を聞いて三羽ガラスは驚く。甲高い声だ。
「まさか、女!?」
しかし、目をこらしてよく見ると――男の子供たちであった。甲高い声は、声変わりする前なのだろう。
「なんで子供が!?」
カストルが驚いていると、別の方向から賊の1人が襲いかかってきた。
「うおっ!!」
避けたとたん、夜食が落ちた。すると、地面に落ちた夜食を目指して賊の少年たちが群がる。腹が減っているのか?
「ちっ!」
カストルは持っていた夜食をすべて地面にばらまいた。ポルックスも、手に持っていたおにぎりを放り投げた。すると、少年たちは食べ物に群がり始めた。