Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
四年後の再会①
「うわああ!!」
「紫微垣だ、逃げろ!!」
北辰の祠から慌てふためいて逃げる盗賊たち。そこには――19歳となり、威風堂々とした四代目紫微垣・アルクトゥルスの姿があった。
「これで今週は3回か……」
アルクトゥルスは、月明かりの美しい夜空を仰いだ。あの夏から、もう4年の月日が流れたか。
「よう、夕べも大変だったみたいだな。アルク」
昼頃、カストルが庵を訪ねてきた。この男は警備兵になってからというもの、仕事そのものは真面目に取り組んで上司や同僚の信頼を勝ち得てきた。たまに悪ノリをしたり、町の見回りの最中に経路から外れて友人に会ったりすることはあるが……。
「お前、仕事は?」
「今日は非番だ。それより今週は多いな」
盗賊の数が、である。アルクトゥルスが紫微垣になってからというもの、集団による襲撃は15歳の夏の時だけであった。あとはひと月かふた月に1度あるくらいで、基本的に平和だったのである。
それが最近、盗賊の数が増えてきた。ひと月に2、3回、多いと5回ほどある。特に今週は3回もあって、徐々に増えてきているのだ。
「ポルックスも心配していたぜ。気をつけろってな」
カストルはテーブルにあった干菓子を口に放り込んだ。気が付くと来客用のソファに横になっている。
「お前な…」
「固いこと言うな。ここに来ると落ち着くんだよ」
人の庵で勝手にくつろぐな、と言っても無駄か。
ポルックスは卒業と同時に役場の文官となり、こちらも堅実にキャリアを積んでいる。ポラリスを狙う盗賊のことは報告が行くらしく、そのような心配をしているのだろう。
「仕事が終わったら、あいつも来るって言っていたぜ。まあ、積もる話はその時しようや」
夕方。ポルックスもやって来て、例の茶屋で食事をした。ここは三羽ガラスが食事をするのによく利用する。アルクトゥルスの師であるカノープスもいるし、人の出入りもあって情報が得られやすいのだ。
その日の夜に定食をたいらげた後、ポルックスがテーブルに北の町の地図を広げた。地図には、赤い丸印がいくつか書かれていた。貧民街の南の浜辺、墓地の奥にある森、町中にあるあばらやなどである。
「何だ、これ?」
カストルがデザートのまんじゅうをほおばりながら言った。
「不審者がいた場所だ。職質したら逃げたらしい。いずれもすばしっこくて捕まえられなかったようだ…ってカストル、お前の部署では共有されていないのか?」
「いや、まったく」
ポルックスは額に手を当てる。警備兵の部署は、組織的なマネジメントがうまくできていないようだ。
「この2週間に見つけた不審者たちは、町のあちらこちらにいる。一見、何の共通点もなさそうだが、見てみろ」
ポルックスが赤丸を線でつなぐと――。
「北辰の祠を囲んでいる?」
「そう、北辰の祠が扇の要になり、赤丸をつなぐ線が開いた扇になるんだ」
アルクトゥルスがさらにたたみかける。
「まさか…集団で狙いに来ているのか?」
「それはまだ分からない。だが、こうも度々不審な動きがあると、組織的な犯罪のにおいがしてくる」
また、あの夏のような事件が起きるのだろうか。そうつらつら考えていると、突然アルクトゥルスが立ち上がった。
「どうした!?」
カストルの言葉には応えず、耳をそばだてて目を瞑る。
「1人、2人、3人……10人ほどが、北辰の祠に向かっている」
「露骨に怪しいな、どうする?」
「決まっているだろう」
三羽ガラスは、それぞれ手に武器を取って店を出た。
先頭を走っていたアルクトゥルスは、武曲の祠に10人ほどの人影を視認した。その人影たちは、急いで山道を登ろうとしている。
「そうはいくか!!」
アルクトゥルスは三の秘剣・三連突きを見舞った。突然、突進してきた槍に、人影たちは慌てふためく。
何とかかわした人影たちは、間合いを取って対峙した。
「相変わらずの腕だな、アルクトゥルス」
人影の1人が言った――聞き覚えのある声だ。
(誰だ?)
林から出て、月明かりのある位置に移動したその人影は……
「レグルス…先生!?」
「紫微垣だ、逃げろ!!」
北辰の祠から慌てふためいて逃げる盗賊たち。そこには――19歳となり、威風堂々とした四代目紫微垣・アルクトゥルスの姿があった。
「これで今週は3回か……」
アルクトゥルスは、月明かりの美しい夜空を仰いだ。あの夏から、もう4年の月日が流れたか。
「よう、夕べも大変だったみたいだな。アルク」
昼頃、カストルが庵を訪ねてきた。この男は警備兵になってからというもの、仕事そのものは真面目に取り組んで上司や同僚の信頼を勝ち得てきた。たまに悪ノリをしたり、町の見回りの最中に経路から外れて友人に会ったりすることはあるが……。
「お前、仕事は?」
「今日は非番だ。それより今週は多いな」
盗賊の数が、である。アルクトゥルスが紫微垣になってからというもの、集団による襲撃は15歳の夏の時だけであった。あとはひと月かふた月に1度あるくらいで、基本的に平和だったのである。
それが最近、盗賊の数が増えてきた。ひと月に2、3回、多いと5回ほどある。特に今週は3回もあって、徐々に増えてきているのだ。
「ポルックスも心配していたぜ。気をつけろってな」
カストルはテーブルにあった干菓子を口に放り込んだ。気が付くと来客用のソファに横になっている。
「お前な…」
「固いこと言うな。ここに来ると落ち着くんだよ」
人の庵で勝手にくつろぐな、と言っても無駄か。
ポルックスは卒業と同時に役場の文官となり、こちらも堅実にキャリアを積んでいる。ポラリスを狙う盗賊のことは報告が行くらしく、そのような心配をしているのだろう。
「仕事が終わったら、あいつも来るって言っていたぜ。まあ、積もる話はその時しようや」
夕方。ポルックスもやって来て、例の茶屋で食事をした。ここは三羽ガラスが食事をするのによく利用する。アルクトゥルスの師であるカノープスもいるし、人の出入りもあって情報が得られやすいのだ。
その日の夜に定食をたいらげた後、ポルックスがテーブルに北の町の地図を広げた。地図には、赤い丸印がいくつか書かれていた。貧民街の南の浜辺、墓地の奥にある森、町中にあるあばらやなどである。
「何だ、これ?」
カストルがデザートのまんじゅうをほおばりながら言った。
「不審者がいた場所だ。職質したら逃げたらしい。いずれもすばしっこくて捕まえられなかったようだ…ってカストル、お前の部署では共有されていないのか?」
「いや、まったく」
ポルックスは額に手を当てる。警備兵の部署は、組織的なマネジメントがうまくできていないようだ。
「この2週間に見つけた不審者たちは、町のあちらこちらにいる。一見、何の共通点もなさそうだが、見てみろ」
ポルックスが赤丸を線でつなぐと――。
「北辰の祠を囲んでいる?」
「そう、北辰の祠が扇の要になり、赤丸をつなぐ線が開いた扇になるんだ」
アルクトゥルスがさらにたたみかける。
「まさか…集団で狙いに来ているのか?」
「それはまだ分からない。だが、こうも度々不審な動きがあると、組織的な犯罪のにおいがしてくる」
また、あの夏のような事件が起きるのだろうか。そうつらつら考えていると、突然アルクトゥルスが立ち上がった。
「どうした!?」
カストルの言葉には応えず、耳をそばだてて目を瞑る。
「1人、2人、3人……10人ほどが、北辰の祠に向かっている」
「露骨に怪しいな、どうする?」
「決まっているだろう」
三羽ガラスは、それぞれ手に武器を取って店を出た。
先頭を走っていたアルクトゥルスは、武曲の祠に10人ほどの人影を視認した。その人影たちは、急いで山道を登ろうとしている。
「そうはいくか!!」
アルクトゥルスは三の秘剣・三連突きを見舞った。突然、突進してきた槍に、人影たちは慌てふためく。
何とかかわした人影たちは、間合いを取って対峙した。
「相変わらずの腕だな、アルクトゥルス」
人影の1人が言った――聞き覚えのある声だ。
(誰だ?)
林から出て、月明かりのある位置に移動したその人影は……
「レグルス…先生!?」