Star Shurine Gardian ―星の大地にある秘宝の守護者―
四年後の再会②
「はあ、はあ……あいつ、どんだけ健脚なんだよ」
カストルが息を切らす。警備兵でも指折りの身体能力を誇るはずだが、紫微垣にはさすがに適わない。ポルックスとどうにか追いついた時、アルクトゥルスは盗賊の一団と対峙していた。
「おっ、まだ始まってねえな! よっしゃ、俺も加勢するぜ!!」
カストルは意気揚々と隠し持っていた槍を取り出す。
「…お前、今日は非番だろうが。勝手に武器を持ち出すなよ」
「いいのいいの! 何が起こるか分からないから、得物は持ち歩くのが一番だ!」
槍を組み立て、地を蹴って走り出した。が、
「待て!」と伸びてきたポルックスの腕が顔面にぶつかり、ひっくり返った。当たり所が悪かったのか、地味に痛い。
「いって…何すんだよ、ポルックス!!」
「様子が変だ」
月明かりが盗賊たちの顔を照らす。先頭に立っている男を見て、カストルとポルックスも驚愕した。
「レグルス先生!?」
「はあ!? どういうことだ!?」
2人から少し距離のある位置で、かつての師弟がにらみ合う。
「どういうことですか、レグルス先生! 盗賊と一緒にいるなんて……」
アルクトゥルスがとがめる。4年前に紫微垣となった時、クラスメイトと一緒に喜んでくれたのではなかったか!? すると、レグルスは落ち着きはらって答えた。
「アルク、私はもう君の先生ではない。卒業生だから、という以前に私は教師をやめたんだ」
「なっ!」
どういうことだ!? 卒業の時、三羽ガラスを「しっかり世の役に立てよ!」と送り出してくれたレグルスと、同一人物なのか!?
「…聞かせてくださいよ。なぜ教師をやめたんです?」
「…アルクトゥルス。この大地は貧富の格差がひどすぎる。もはや一介の教師では、子供たちを救うことはできないんだ」
「は?」
「だから私は教師を辞して、蟹の目町に身を寄せて貧しい子供たちを集めて、一大盗賊団を作ったんだ」
……話が所々飛躍していて読めん。
「アルクトゥルス、われわれの邪魔をするのであれば、容赦はしないぞ」
とりあえず敵であることは認知した。であれば、やることは一つだ。
「一の秘剣・魚釣り星!」
アルクトゥルスの放った七星剣は、鞭のようにしなりながら盗賊どもを蹴散らした。
「うわっ!」
「だっ!」
盗賊たちは悲鳴を上げて回避する。外れた秘剣が後ろの岩に当たると、岩は真っ二つに割れた。
「今のは威嚇だ。これ以上祠に近寄るのなら、次は当てるぞ」
アルクトゥルスは殺気をみなぎらせる。
「アルク、怖えな…」
カストルがポツリとつぶやく。普段は穏やかだが、紫微垣としての任務になると一切のためらいがない。
「…まあいい」とレグルスが右手を上げた。すると、周りにいた盗賊たちが1カ所に集まる。
「今日は偵察に来ただけだ。いずれまた会おう」
そう言うと、足早に去って行った。
翌日。アルクトゥルスは七星剣を手入れしながら、レグルスのことを考えていた。一体どういうつもりなのだろう、先生は。教職をやめて盗賊団の首領になり、ポラリスを狙っている。それも、子供たちを救うためとは…?
そういえば、デネボラはどうしているんだ? 確か、学舎を卒業したらレグルスと結婚すると言っていたけど、今もなお夫婦でいるのだろうか?
さまざまな疑問が浮かんできた時、庵の扉が開いた。カストルである。
「アルク、悪い知らせだ。聞きたくないだろうが、教えておいた方がいいと思ってな」
装備をしているところからして、見回りの最中だろう。曰く、不審者の数や見かける回数が増えているらしい。おおよそ3~5人でひと組となり、北の町のいたるところに潜伏しているようだった。警備兵たちも見回りを強化しているものの、出くわすとさっと逃げ散ってしまうという。
レグルス、盗賊団、不審者たち、そしてポルックスが書いた地図――ひとつひとつの事象がつながり、その後の事件に発展することになる。が、今は点と点が結び合わず、全体を見ることができなかった。
そこへ今度はポルックスが訪ねてきた。
「デネボラの消息が分かった。今、貧民街で一人暮らしをしているらしいぞ」
カストルが息を切らす。警備兵でも指折りの身体能力を誇るはずだが、紫微垣にはさすがに適わない。ポルックスとどうにか追いついた時、アルクトゥルスは盗賊の一団と対峙していた。
「おっ、まだ始まってねえな! よっしゃ、俺も加勢するぜ!!」
カストルは意気揚々と隠し持っていた槍を取り出す。
「…お前、今日は非番だろうが。勝手に武器を持ち出すなよ」
「いいのいいの! 何が起こるか分からないから、得物は持ち歩くのが一番だ!」
槍を組み立て、地を蹴って走り出した。が、
「待て!」と伸びてきたポルックスの腕が顔面にぶつかり、ひっくり返った。当たり所が悪かったのか、地味に痛い。
「いって…何すんだよ、ポルックス!!」
「様子が変だ」
月明かりが盗賊たちの顔を照らす。先頭に立っている男を見て、カストルとポルックスも驚愕した。
「レグルス先生!?」
「はあ!? どういうことだ!?」
2人から少し距離のある位置で、かつての師弟がにらみ合う。
「どういうことですか、レグルス先生! 盗賊と一緒にいるなんて……」
アルクトゥルスがとがめる。4年前に紫微垣となった時、クラスメイトと一緒に喜んでくれたのではなかったか!? すると、レグルスは落ち着きはらって答えた。
「アルク、私はもう君の先生ではない。卒業生だから、という以前に私は教師をやめたんだ」
「なっ!」
どういうことだ!? 卒業の時、三羽ガラスを「しっかり世の役に立てよ!」と送り出してくれたレグルスと、同一人物なのか!?
「…聞かせてくださいよ。なぜ教師をやめたんです?」
「…アルクトゥルス。この大地は貧富の格差がひどすぎる。もはや一介の教師では、子供たちを救うことはできないんだ」
「は?」
「だから私は教師を辞して、蟹の目町に身を寄せて貧しい子供たちを集めて、一大盗賊団を作ったんだ」
……話が所々飛躍していて読めん。
「アルクトゥルス、われわれの邪魔をするのであれば、容赦はしないぞ」
とりあえず敵であることは認知した。であれば、やることは一つだ。
「一の秘剣・魚釣り星!」
アルクトゥルスの放った七星剣は、鞭のようにしなりながら盗賊どもを蹴散らした。
「うわっ!」
「だっ!」
盗賊たちは悲鳴を上げて回避する。外れた秘剣が後ろの岩に当たると、岩は真っ二つに割れた。
「今のは威嚇だ。これ以上祠に近寄るのなら、次は当てるぞ」
アルクトゥルスは殺気をみなぎらせる。
「アルク、怖えな…」
カストルがポツリとつぶやく。普段は穏やかだが、紫微垣としての任務になると一切のためらいがない。
「…まあいい」とレグルスが右手を上げた。すると、周りにいた盗賊たちが1カ所に集まる。
「今日は偵察に来ただけだ。いずれまた会おう」
そう言うと、足早に去って行った。
翌日。アルクトゥルスは七星剣を手入れしながら、レグルスのことを考えていた。一体どういうつもりなのだろう、先生は。教職をやめて盗賊団の首領になり、ポラリスを狙っている。それも、子供たちを救うためとは…?
そういえば、デネボラはどうしているんだ? 確か、学舎を卒業したらレグルスと結婚すると言っていたけど、今もなお夫婦でいるのだろうか?
さまざまな疑問が浮かんできた時、庵の扉が開いた。カストルである。
「アルク、悪い知らせだ。聞きたくないだろうが、教えておいた方がいいと思ってな」
装備をしているところからして、見回りの最中だろう。曰く、不審者の数や見かける回数が増えているらしい。おおよそ3~5人でひと組となり、北の町のいたるところに潜伏しているようだった。警備兵たちも見回りを強化しているものの、出くわすとさっと逃げ散ってしまうという。
レグルス、盗賊団、不審者たち、そしてポルックスが書いた地図――ひとつひとつの事象がつながり、その後の事件に発展することになる。が、今は点と点が結び合わず、全体を見ることができなかった。
そこへ今度はポルックスが訪ねてきた。
「デネボラの消息が分かった。今、貧民街で一人暮らしをしているらしいぞ」