蒼い空の下で愛を誓う〜飛行機を降りたパイロットはただ君を好きなだけの男〜

噂に翻弄される

翌日から通常業務。
旅行の疲れもあったが彼との関係が変わったことで幸せな気持ちに満たされ出勤した。
けれど周囲からの視線はどこか探るような、遠巻きに私のことを見ていて正直なところ、またか、と思わざるを得なかった。

「ねぇ、結城さんと旅行だったの?」

昼休憩になり噂好きの同僚から私はダイレクトに聞かれた。その声に周囲も聞き耳を立てているのがわかる。でもどうして結城さんとだなんて思われているのだろう。

「結城さんとではありません。なぜ結城さんの名前が出るのですか?」

私は思ったままに質問を返した。すると彼女は、

「結城さんも連休を取っていたのよ。鷺宮さんの前日から昨日まで。それに結城さんがグアム行きの便に搭乗していたからみんなの噂になっているのよ」

なるほど。偶然にも結城さんは私の休みと一緒で、グアムの便に乗っていたのね。偶然にしてもほどがある。私がひとりで飛行機に乗っていたので誤解されたのだろう。

「私は友人との旅行です。結城さんとはお会いしていません」

「そんなわけないでしょう? こんな偶然があるわけないわ。それにあなた空港で薬指にエンゲージリングをつけていたと噂になっているわよ」

あの時のCAさんが話したのだろう。目ざといとしかいいようがない。指輪をつけていたのは現実だが、結城さんからもらったものではない。

「結城さんと一緒ではありません」

プライベートなことなのに立ち入りすぎだろう。食事をしにきたのに多くの人に聞き耳を立てられ休まるわけがない。私は食事の途中だが立ち上がるとトレイを持つと片付けをした。
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