狂気のお姫様
第7章

第1節 魔の巣窟

「気がひける…」

目の前の階段でさえ重厚感を感じるのに、この上に行ったら死ぬんじゃないかと思う。

というのも、今私は天の巣窟、屋上へ続く階段の目の前にいるのだ。


いや、行くつもりは全くない。が、ちょっと金髪に野暮用だったりする。

こないだカーディガンを借りたので返したいのだ。

中庭にいるかなと思ったが彼はおらず、とことんタイミングが悪い奴だな、と心の中で舌打ちをした。あわよくば通りかかってほしいものだが、相変わらずここは閑散としているので無謀だったかもしれない。

でもあの人いつもカーディガン着てるんだもん。早く返した方がいいのかな、とか思うじゃん。

ちなみに全身びしょ濡れだった私は、次の授業もさぼり、ドライヤーで永遠と服を乾かしていた。

そしてそれを同じように永遠と見ていた鳴さん。人が服を乾かしているのを見て何が楽しいかと思ったが、彼曰く「律ちゃんマイナスイオン出てるわぁ」らしい。出てない。誰がパワースポットだ。

ただ、後半は私の足をガン見していたので、ただの変態だと思う。



そして問題の小田のノート。

序盤は頑張っていた。それは認めよう。認めるが、後半は最悪。もはや字を書いているのか、図を書いているのかも分からず、ノートの線をこれでもかというほど無視していた。

予想はしていたので、というか予想しかしていなかったので諦めた次第だ。


「はぁ」

それでだ。


一応鳴さんには連絡もした。

が、一向に既読はつかず。

こないだまで、無視しても無視しても無駄なメッセージを送ってきてたくせに。

陽ちゃんにも連絡してみたのだが、もれなく返事がない。なんなのみんな。最近の男子高校生ってこんなもんなの。

かくいう私も返事遅いけどさ。





この先に行く気はさらさらないので、階段の一段目に腰を下ろして頬杖をつく。


「はぁ」


もういいかな。このまま帰って。

いや、でもびしょびしょのところを助けてもらったしなぁ。

待てよ。私もこないだストーカー事件のとき助けてあげたよな。

なんだか貸しをつくった気分だったが、これでプラマイゼロじゃないか。

あーあ。やっぱり帰ろうかな。

でももやもやするし返しておこう。

いやいやでも待つのもだるいし。

そもそも全員と一応知り合いだし、別に嫌われてるわけでもないし、このまま屋上に行っても問題はないのではないか。

うん、ないだろう。

前…佐々木夕が屋上おいでよとか言ってたし…。

まぁ…、自分の気持ちの持ちようだな後は………。


行く気は…さらさら…ないけど…。





「………ぐぅ…」

寝たよね。
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