狂気のお姫様
「えーっと、分かってもらえたんだったらもう行っていい?」

お前らに割く時間などこちらにはないのだ。早く昼飯食わせろ。

しれっと影武者となっている小田の腹をつねると「びゃっ」と変な声を出したので、思わず笑いそうになった。やめてくれ。


「えと…あ、うん…」

私へ返す言葉が見つからないのか、歯切れの悪い返事をする鹿島杏奈。まぁそれが賢明な判断だよな今は。

なのに、

「そういう言い方なくない?杏奈傷ついてるのに!」

やっぱりバカはいるもので。

いやいや、そういう友情ごっこ、いらないから。

「えと、もういいから…」

鹿島杏奈は下がろうとするが、他の女はそれを許さないらしい。友達のためとでも思っているのだろう。だが、当の本人鹿島杏奈は内心焦っているはずだ。

これ以上下手なこと言うんじゃねぇって目をしてる。


「え、話の内容って私関係あんの?」

「そういう問題じゃ…」

「え、じゃあどういう問題?別に友達でもないのに話聞かなきゃなんないの?」

ていうかそもそも友達でもないのに下の名前で呼ばれていることが不愉快だ。

「そんな言い方ないでしょ!!」

「そうやって杏奈をイジめて天から遠ざけようとしてるんでしょ!?」

あー、もう。天まで出してくるならそれは違うよ。

周りの人たちも、ただ事じゃないと思ったのだろう。チラホラと立ち止まって私たちの話に耳を傾けている人がいる。

「なんでその人をイジめなきゃならないの。こないだまで名前も知らなかったのに」


鹿島杏奈の口元がピクリと動く。余程プライドが高いのだろう。自分のことを知らないなんて信じられないとでもいうような目をしている。

「東堂お腹減った」

小田は黙ってほしいので、軽く肘打ちをしてしずめる。

「ていうか、イジメって具体的に私がその人に何したの」

あくまで鹿島杏奈を『その人』呼びの私。しょうがない。友達ですらないんだもの。

「天に杏奈の悪口言ってるんでしょ!?」

「へー、それ、天が言ってたんだ」

ていうかそれ、証拠はあるんだろうな。

「違うのっ。律ちゃんが私の悪口を言ってたのを聞いたって友達が言ってて…」

すかさず鹿島杏奈がフォローに入る。

また友達か。又聞きが多いんだねあなたは。そりゃそうか。自分が見たって言って天に否定されたら嘘がバレちゃうもんね。


「その友達って誰?」

そう問い詰めると、

「それは覚えてないけど…」

と少し狼狽える。ま、そんな人いないもんね。だって何回も言うけど私悪口なんて言ってないもん。ていうかお前の悪口に時間を割くほど暇じゃないんだけど。

「まぁいいや。とりあえずあなた自身、私が天にあなたの悪口言ってたところを見てないわけだ」

嘘なんてすぐバレるのに。

「そうだけど…」

「嘘なんてつくわけないじゃん!!」

「さっさと認めたら!?」

頭の悪い虫けらたちがブンブン鳴いても結果は一緒。言ってないものは言ってないので認めるも何もない。

「じゃあ天に直接聞こうか」

まぁこうなるよね。
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