狂気のお姫様
「律ちゃんみっけー。助けてよもー」

出た。

出たよ。

出たよもう!!!!!!!!!


絶対奴らのうちの誰かだとは思っていたが、ちょっとは違うんじゃないかと期待してた。

だけど、期待したところで、他にこんなことしてくる奴なんていなかった。


え、待って小田消えてない?どこにもいないんだけど…………あ、いたわ。いるいる。壁に同化してやがる。何してんだこっちこい。意地でも目を合わせないつもりかコノヤロウ。


「なんですか、四ツ谷さん…」

渋々問いかけると、綺麗な金髪が視界の端にうつった。

「うそ…四ツ谷さん…」

「かっこいい…」

「なんでこんなところに…」

取り巻きたちは目をキラキラさせながら四ツ谷鳴を見つめているが、そのかっこいい四ツ谷鳴はガッチリ私に抱きついている。

四ツ谷鳴にはピンクの光線を放っているが、私への睨みは欠かさない。律儀だね。で、この男いつ離すんだ。


「愁が荒れててさー、もう俺には手に負えねー」

うわこっわ。

でもあんたも充分手に負えないからな。

「なんでですか…」

「知らね。カレーパンでもなかったんじゃねぇの」

「いやそんな人間いるんですか」

そんなことで人間が怒るわけないだろ。ていうか羽賀愁にカレーパンが似合わないんだってば。

「今日も朝から遅刻してきたかと思えば目に入る奴なぎ倒してさぁ」

闘牛かよ。

危ない。思わず突っ込むところだった。

「大変ですね」

「もー愁くん怖すぎて疲れたーと思ってたら抱き心地良さそうなおなごが」

おなご言うな変態。

「はぁ…左様ですか」

「あれ、修羅場中?」

あんたが来なかったらもう終わってたんだよ。


「鳴さん!お久しぶりですっ」

長らくお待たせしました鹿島杏奈さん。どうぞ。

「あー…、久しぶりだねー」

うわ、絶対忘れてたでしょこの人。めっちゃ考える仕草してたけど?そしてめっちゃ間があったけど。

だけどそんなことお構い無しの鹿島杏奈。

「会いたかったですよー、もう…全然屋上呼んでくれないんですからっ」

「あら、そうだっけー?ごめんね?」

返事が適当な気がするのは気のせいか。いや、気のせいじゃないな。

「律ちゃんと仲いいんですね」

顔はニコニコ笑ってるのに、目の中には嫉妬が渦巻いているのが見てとれる。

私が抱きついてるわけじゃなくて、あくまで抱きついてるのは四ツ谷鳴からだからね。さすがに不可抗力だし、この状況で『近づくな』とは誰も言えないものね。
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