狂気のお姫様
「律ちゃんはだって…ねぇ?」
やめろその意味深な笑み。ていうか離れろって。
「なんですか。何か含んだような言い方やめてくださいよ」
「面白いから、律ちゃんは」
「聞き捨てならないですけどねそれ」
面白くしてるつもりはまったくない。
「こないだ夕が律ちゃんのこと話してたわー」
あ、あの童顔こないだのこと言いやがったな。「俺も見たかったなー」なんて話してるが、目の前の女たちはなんのこっちゃ分からない。置いてけぼりの鹿島杏奈はさぞ悔しいだろう。
ていうか四ツ谷鳴が来たおかげで1つ疑問が減るじゃないか。
それをこいつらは気づいているんだろうか。
「そういえば鳴さんに聞きたいことがあるらしいですよ、彼女たち」
しょうがないから背中を押してやろう。
「えー、なに。めんどくさ」
おいおい。
しかしめんどくさいとは言いつつ、話は聞いてくれるらしい。私に抱きつくのをやめ、次は肩に腕を置く。いや、離れろって。
取り巻きたちは、まさか話が振られると思ってなかったのだろう、完全に焦っているが…、さっきまでの話の流れでこの話が出ないことがおかしいだろう。バカなのか。
「え…と…」
「ほら聞きなよ早く」
狼狽える取り巻きたちに、冷ややかな目線を送る。
さっきまで上から目線で言いたいこと言ってたくせに、天が現れたらこれか。情けない。
「鳴さんっ、実は、律ちゃんが私の悪口を天のみんなに言ってるって友達が言ってて…」
鹿島杏奈は、アホの取り巻きたちに話させるよりかは自分が言ったほうがいいと判断したのだろう。
目をうるうるさせながら四ツ谷鳴に訴えているが、まるで効いてない。
「それってほんとなのかなって思ったんです…っ」
「何それ知らないけど」
はい噂破れたりー。
「そうなんですね…私の勘違いだったみたい…っ。ごめんね律ちゃん」
目の中が狂気と嫉妬と怒りで大荒れに見えるけど、まぁ今回は許してやろう。
「いいよ」
素っ気なくそう言うと、一層怒りが濃くなった。
ていうか、四ツ谷鳴って女好きだから女の子に優しいんだと思ってたんだけど、なんか態度悪くない?前鹿島杏奈と対峙したときもサラッと受け流してたよな。こういうタイプは嫌いなのかな。いやでもこないだ性格悪そうなコギャルと歩いてたけど。
「律ちゃん敵多いね」
コソッとわざわざ耳元でそう言ってくる四ツ谷鳴を少しだけ睨む。こいつ面白がってるな。
案の定鹿島杏奈の顔はすごいことになっている。他の人は気づいていないみたいだが。
勘弁してくれまったく。
そして小田、寝るな。