狂気のお姫様
「じゃあ、もういいよね」

やっと終わった。

女はねちっこいからダメだ。あの手この手で陥れようとしてくる。大した策もないくせに。

さて小田を回収するか。

四ツ谷鳴の登場は思いがけなかったが、疑いが根こそぎ晴れたので良しとしよう。天本人からの証言がとれたのだから誰も何も文句は言わないだろう。


「えー、修羅場終わり?」

あんたは何を望んでるんだ一体。

「終わりです。ていうかそもそも修羅場じゃないです」

ぶーぶー言ってる四ツ谷鳴にサラッと言い放つ。

あんたが来たせいでより一層注目されてるじゃないか。早くこの場から離れたいんだけど。小田を回収してとっちめてやらないといけないし。

と、思ったがまたしてもそれが阻まれた。


「あれ、愁ちゃん珍し。機嫌なおったー?」

「うるさ」

「え、なおってないじゃん」

銀髪登場ですってよ。


「うそ…」

「神…」

「かっこいい…」


周りの女子、いや、男子からも口々に声が聞こえる。

羽賀愁に会うのは珍しいらしく、見れたらラッキーだと小田が前に言ってた気がする。確かに、羽賀愁以外の4人はよく見る気がする。よく見るというか…よく私の前に出没するだけだが。


「何してんの。はやく行くぞ」

「律ちゃんの修羅場見てた」

「どこが血の海なの」

え、サラッと失礼なこと言うこの人。

ちょっとちょっと、びっくりしたよ東堂さん。『修羅場=血の海』っていう解釈がまず違うから。この前のはイレギュラーパターンだから。常時じゃないから。

まあいい。安易に突っ込んで殺されたくはないので受け流してやろう。

羽賀愁は注目を浴びているのが嫌なのか、早く屋上に行きたい様子。

いいよ、行ってくれ。ていうか早く行ってくれ。昼休みの時間は限られてるぞ。

しかし、空気を読めないのが

「愁さん!お久しぶりですー!」

鹿島杏奈なのだ。


打算的なところもあるしあまり地雷は踏まないのに、なんでこういうところだけバカなんだろうか。ていうか羽賀愁のことを『愁さん』なんて呼んでるが、ちゃんと許可はとってるんだろうか。

多分羽賀愁が本命なのだろう。取り巻きたちをズイッと掻き分けて前に出てきた鹿島杏奈。

ほんと、その自信はどこから出てくるのだ。

「屋上で会ってから全然会ってないんですけどー」

プクッと頬を膨らませる鹿島杏奈に、周りの男たちはメロメロ。それに加えて、羽賀愁にこんなにフレンドリーに話しかける奴は他にはいないので、みんな尊敬やら羨望の眼差しで鹿島杏奈を見つめている。
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