狂気のお姫様
第5章

第1節 非現実的なストーカー

甘さ控えめのカフェオレをズズッと飲み、チーズケーキに手を伸ばすと、小田は神妙な面持ちで口を開いた。



「なぁ東堂、そろそろアレがあるんだが」

「そうだな」

「それでだ、自分のノートを見返してみておっとびっくり。ミミズみたいな字で何書いてるのか分からねぇ」

「そりゃ寝てるからな」

「ちゃんと毎時間きちんとノートをとっているのにだ」

「ちゃんと毎時間きちんと寝てんだよ」

「唯一解読できたのは『唇にハンドクリーム』という文字の羅列のみときた」

「なんの夢見てんだよ」

「数学の授業で『唇にハンドクリーム』なんて出てきたか?いや、多分出てきてない」

「多分じゃねぇよ絶対だよ」

「もしかしたら何かの暗号かもしれない」

「数学になんの暗号使うんだよ」

「もしかしたらその時の私にとって大事なことだったのかもしれない」

「まず唇にはリップだろ」

「だからこれは置いておくとして」

「消せよ」

「ということでだ、ノート見せろ」

「唐突な命令形」

「留年する」

「すればいいと思う」

「来年も私と同じクラスになりたいだろ」

「自意識過剰か」

「なりたいよな、そうかそうか」

「すごい頭してるな」

「だから見せような、ほら早く、出してみ。な?」

「え、なんで私が諭されてんの?」

「怖くないよ、ほら」

「いや怖いわ。お前の脳みそが怖いわ」



拒否したところで私のノートを奪っていくのは明白なので、しょうがなく渡してやるが、まじでこいつの脳みそは深層まで腐ってると思う。こんな女が他にいるか。


「あざす!これでいい点とれなかったら東堂のせいな!」

「責任転嫁激しいなお前」

「私の成績は東堂にかかってるからな」

「私は塾の先生かなんかか」

「欠点とったらパフェおごりな!」

「逆だろ」

「私金欠」

「そういう問題じゃないだろ」



そう、今はなんの期間かというと、みんな大好きテスト期間なのだ。

こんなふざけた高校でもテストだけはちゃんとするんだな、なーんて思っていたが、レベル的に言うとなかなか難しいと小田から聞いた。ただ、発信源がアホの小田なので難しいというのは信じてない。

陽ちゃんからも、テストが難しいなどと聞いたことがないので、やっぱり小田の妄言だろう。
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