狂気のお姫様
「そういやさぁ、あの教科書事件の2人、誰かに言いふらしたりしないの?」


早速私のノートを書き写しだした小田だが、早々とペンを回しはじめ、おしゃべりタイムに突入。まじで留年しろ。

かくいう私は、授業の内容は大体頭に入っているので欠点をとるまでもない。



「しないでしょ」

「なんで?」

「言ったところで誰も信じないから」

「あー」


こないだ、犯人にされかけた私だが、客観的に見ると、教科書をとられたのはあのアミとかいう女だ。あの2人を恨むなら、アミ以外にいない。ということは私は全く関係がないということになる。

その関係のない私が、何故あの2人をボコボコにしなければならないのか。そこが結びつくことはまずないだろう。

『東堂律にやられた』などとほざけば、『何故東堂律がそんなことしなければならないのか』『また東堂律への当てつけか』などとオーディエンスたちは思ってくれるはずだ。

普通の一女子高生が人の両腕を折り、鼻と肋骨を折り、ボッコボコにする、なんて普通に考えて信じてもらえないだろう。

それに加えて、タイミング良く羽賀愁が現れた。私と普通に喋っていたところを見ると、彼と私が知り合いだということも明白。佐々木夕に大怪我を負わせるところだった、という負い目と、それに対する天からの報復への恐怖も鑑みて、わざわざ天を敵には回したくないだろうから誰かに言うことはまずないだろう。



「よくそこまで考えられるな」

小田が若干引き気味なのは癪だが、こういうことを考えてしまう性分なので仕方がないのだ。


「ま、隅々まで考えないと隙をつかれたら負けるかもしれないからね」

「東堂の頭がほしいとちょっとだけ思ったわ」

「小田はそこまで考えなくていいから数学を考えろ」

「無茶言う」

「どこが無茶だ」

「数学は最強の天敵」

「それ前物理に対しても言ってただろ」

どんだけ最強の天敵いるんだよ。


「理系に殺される」

「お前文系も苦手だろ」

「勉強が苦手」

「間違いない」



放課後、友達とカフェにてテスト勉強。

字面だけで見たら今どきの女子高生感満載だが、実際はそんな可愛いものでもない。ていうか小田という存在が可愛くない。



「東堂これなんだ」

「まずAの集合あるだろ」

「Aがそんなにいっぱいいるのか」

「そういう意味じゃない」

「なんだよ。集合ってことはAがいっぱいいるってことだろ」

「そんな数学あってたまるか」

「うわ、こっちはBがいっぱいいる」

「話聞いてたか?」

「絵を描けばいいんだな」

「図な」



小田のご両親よ、先に謝っておきます。あなたたちの娘は進級に向いてません。
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