狂気のお姫様
「ほなはふいちぇちた」

口を尖らせ、その上にシャーペンを乗せているやる気のない小田になるまで、時間はかからなかった。ていうか一瞬だった。


「なんて言ったのか全然分かんなかったんだけど」

「お腹すいてきた」

「さっきケーキ食べただろ」

「あんなの腹の足しにもならんだろ」

「でぶが」


蔑みを込めてそう吐き捨てるが、すまし顔の小田。

普段から運動もしないし食べてばっかりなのに、なんでこいつは太らないのか。しかも今はテスト期間中で、ついつい食べすぎて太りやすい期間なのに。甚だ謎である。


「なんか食べたい。でも金がない」

「万年金欠」

「ひもじい東堂」

「奢らねぇぞ」


復習を兼ねて自分のノートをパラパラとめくるが、あまり勉強するところがないのでつまらない。でも古典は少し苦手なところもあるからな。詰めて勉強しないと。

なんて思っていると、窓の外をボケッと眺めている小田。

勉強しろよバカ。


「何見てんの」

「あれ。四ツ谷さんじゃない?」

「あー…?あ、ほんとだ」


小田が指さした方を見ると、少し派手目の女の子と歩いている四ツ谷鳴の姿。あちらはこちらに気づいていないようだ。



「また女連れてるよ」

「派手だな」

「顔はまあまあ綺麗だけど」

「ああいうのがタイプなのかな」

「前遭遇したときもギャルと一緒にいたよな」

「いた。あれだ、鹿島杏奈初遭遇事件だ」

「事件は笑う」


事件だろ。

派手目な女の子は、四ツ谷鳴の腕にしっかりがっちり自分の両腕を絡ませており、傍から見ればカップルだ。



「あの人って女好きなの嫌いなの、どっちなの」

前遭遇したときは、話遮っただけでボコボコだったもんな。理不尽すぎておったまげたわ。

自分が容認して一緒に歩いてるんじゃないのかよ、と突っ込んでしまいたいぐらいには理不尽だ。



「好きだとは思うけどな」

「でも扱いひどいよね」

「分かる。マイペースとかじゃなくて…なんというか」

「超自分勝手」

「それだ」

「絶対嫌だわそんな男」

「全ては顔だからな。顔が良ければ許されるんだよ」

「人間こわ」


まぁ顔が良くても陽ちゃんにやられたら即蹴りを決め込むがな。
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