狂気のお姫様
「でもあの人、どことなく頭良い感じがするんだよなぁ」
「あー、頭は良いらしいよ」
「やっぱり?」
「学年でも上位のほうだって」
「頭悪そうな髪色してるのに」
「シンプルに悪口」
綺麗な色ではあるけどね。
そんなことを話していると、2人の姿はもう消えていて、どうせ今からイチャコラするんだろうな、とシラケた気持ちになる。よく好きでもないやつとできるものだ。
「頭悪い女を頭悪いなりに使ってる感」
「あーー、分かる」
「見下してるよね」
「私たちにはそうでもなくない?」
「私たち別にイケメンを前にして興奮するような女でもないもん」
「間違いない」
だから面倒なのだ。
四ツ谷鳴や他の天たちに興味のない女の子だってたくさんいるはず。いるはずなのだが、何せうちの高校は偏差値が低い。バカばかりなのだ。なので欲望のままにイケメンを求めている奴が多い。
その中で私たちの存在は異質だろう。小田だけであれば目立ってはいなかっただろうが、何せ私が天のうちの1人である陽ちゃんと知り合いだからな。その上自分たちに発情しない女なんて、そりゃ普通に話しかけてくるだろう。
「あ、鹿島杏奈はどうなったの?」
抹茶ラテをズズーッと吸いきり、カコッとテーブルに置いた小田は、そういえば、と顔を上げた。
「えー、一時休戦?」
「何も仕掛けてこないの?」
「んー、しばらくはないでしょ。あんだけ恥かいたし」
「『誰?』だったっけ」
「まさかすぎて私もびっくりしたわ」
「さすがとしか言えないわ羽賀さん」
「まぁ自分の手を汚したくはないだろうから、これからも大々的には動いてこないと思うけど」
「早くぶちのめしてほしいんだけど」
「かかってこなけりゃこちらから仕掛けることもないよ」
「早く仕掛けてこないかなぁ鹿島杏奈」
「物騒なこと言うな」
「東堂の存在が物騒だもんな」
「失礼」
そろそろ私も体づくりをはじめなければならないから暇ではなくなるのだ。だから仕掛けてくるならばさっさとしてほしいものがある。あ、でも体つくってるときに仕掛けてきたら逆にボッコボコにやり返せるかもしれないけど。
なんのための体づくりかというと、ジローおじ様からの辞令のためである。あのおっさん、まあまあ危ない橋を渡らせるので、ちゃんとトレーニングしてから行かないと死ぬし、腕の1本や2本持ってかれる可能性があるのだ。
「ま、本音を言うと、試したいことあるから仕掛けるならちゃっちゃとしてほしいけどね」
「怖い何それ」
「まだ内緒」
「まじで怖い」
「今せっせとつくってるから」
「怖い。なんの兵器。毒ガスとか?」
「物騒なこと言うなよ、と思ったけど、間違いではないかも」
「え、私この街を出ればいいかな?」
バカか。本物なわけないだろう。