年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
「そうかも。リッカルドを産んだことが転機になったんだと思うわ」
「頑張りすぎないでくださいね」

 自己犠牲なんてしてほしくない。

 リッカルドさまも大切だけど、奥さまも大切だもの。

「うん、大丈夫。それに、あの子の成長を見たり聞いたりするのが楽しい。この子のお顔を見るのも楽しみ」
「本当に無理をなさらないでくださいよ」

 心の底から楽しんでいらっしゃるのはわかるけど、無理を重ねないでいただきたい。

 頼れるところは頼ってほしいし、相談事だってたくさん受け付けるもの。

 ……力になれるかは、微妙なところだけど。

「まぁ、とにかく。あなたはあなた自身のために生きてね。……サイラスも同じことを思っているわ」

 出てきた名前に自然と顔が歪んだ。あふれてきた涙を誤魔化すように、袖で乱暴に目元を拭う。

「失礼いたします」

 本当に全部見抜かれていた。

 私がサイラスさんの人生を歪めてしまったのではないか。

 心の奥底に根付いている、私の気持ち。

(最近、本当にそう思ってしまう)

 たくさんの愛情を与えてもらった。その愛情は、本当は私がもらうべきものじゃなかったはずなのに。
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