年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
「あ、アルロイさん」

 意を決して彼に声をかけると、彼が腕時計から顔を上げた。

 彼の茶色の双眸が大きく見開かれる。……引かれてないよね?

「その、準備に時間がかかってしまって。……お待たせして、すみません」

 ペコリと頭を下げて謝るも、彼はなにも言わない。

 ……怒ってる? そりゃあ、怒ってるよねぇ。

 私が眉を下げたことに気づいてか、アルロイさんはゆるゆると首を横に振った。

「いえ、気にしないでください。俺がはりきって早く来てしまっただけなので」

 アルロイさんはぽりぽりと頬を掻く。頬は微かに赤く染まっていた。

「な、なんかすみません。気を遣わせてしまって……」

 普段どういう風に会話をしていたかわからなくなって、私は謝ることしかできなかった。

「……そんなことないです。本当に俺が早く来てしまっただけなので……」

 彼の視線は私に向いていない。けど、全然不快じゃない。彼の頬に朱が差しているだけで、照れているのがわかるから。

「俺、クレアさんの隣を歩いていて、変じゃないですかね?」

 不意に彼が零す。驚いた私が彼の顔を見上げると、彼は私から視線を逸らす。
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