年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
(アルロイさんは私のことを好きだと言ってくれたけど――)

 やっぱり、信じることができなかった。

 視線を床に向けていると、手首をつかまれた。驚いて顔をあげると、アルロイさんの視線と私の視線が交わる。

「――俺、クレアさんに本気です」

 彼がはっきり宣言した。

「彼女とはなんでもないんです。ただの、知り合いですから」

 その言葉、信じていい……のよね?

「俺が好きなのはクレアさんだけだから。交際したいって思ってるのも、結婚したいって思ってるのもあなただけ」

 真剣な瞳に偽りは見えなかった。

 今は、彼の言葉を信じよう。それに、せっかく劇場に来たんだから、楽しまないと損だよね。

 私みたいな庶民には手が出せない席で観るわけだし。

「――信じてないでしょ」

 アルロイさんがふてくされたみたいな声をあげた。うん、やっぱり正直――ね。

 ごまかしの笑みを浮かべる私に対して、アルロイさんはむっとした表情だ。
< 43 / 59 >

この作品をシェア

pagetop