年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
 私が顔をあげると、不意に視線を感じた。気になって視線を向けると、視線の主はアルロイさんで。

 彼は私を凝視していた。

(ひぇっ)

 しかも、やたらと優しいまなざしだった。私は気まずくて、露骨に視線を逸らす。

 アルロイさんは私の動きを気にすることなく、私の手を握った。

(ちょ、ちょっと!)

 場所が暗いから、周りには見えないだろう。そこは安心できる。ただ、私の心臓がうるさすぎて観劇どころじゃなくなるんです!

(手汗とか、大丈夫よね……?)

 不安で不安でたまらない。軽く振りほどこうとするけど、アルロイさんは私の手を離してくれない。

 視線で抗議してみても、彼はどこ吹く風だ。

(絶対、絶対絶対、あとで文句を言ってやる――!)

 このままだったら、全然演劇の内容が頭に入ってこない。

 私の心配は現実となり、手から伝わるぬくもりに意識が集中して――結局、舞台の内容なんてほとんど頭に残らなかった。

 唯一覚えていたのは、ロレインさんがとてもきれいだったこと。それだけ。
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