早河シリーズ最終幕【人形劇】
部屋に入れと言われても美月は従わなかった。三十階のバルコニーから見える東京の景色は絶景で、冬の空はどこまでも澄んだ青。
朝日を浴びてひんやりした空気を吸い込むと少し気分も晴れた。
『これ昨日落としただろ?』
三浦が美月の手のひらに花の形のイヤリングを落とした。これはエステサロンからの借り物だ。
「やっぱり階段で私を追いかけてきた人は三浦先生だったんですね」
『それが俺の仕事だ』
「そんな仕事、嫌になりませんか? 私みたいな子供の監視したり世話したり……」
くしゃみをした美月の肩に三浦が着ていたジャケットがかけられた。煙草の香りのするジャケットは彼の体温が残っていて温かい。
『確かに君の世話が一番楽じゃないな。寒いなら中に入っていればいいものを。世話が焼ける』
「世話が焼けるなら……焼かなきゃいいじゃない」
ふいっと顔をそらしてむくれる美月の可愛らしさに彼の身体が疼く。煙草を携帯灰皿に捨てた彼は自分のジャケットを羽織る美月を抱き寄せた。
抱き寄せられた胸元に美月は鼻先を擦り付ける。
この人はかつて愛した人とは違う人。そんなことわかっている。
でも何故こんなにもあの人と同じなの?
抱き締める手も温かい胸元も優しい瞳も、何もかもがあの人と同じ。だけどこの人とあの人は別の人間。
「これも仕事……? 私を慰めたり優しくするのも仕事だから?」
高層階に吹く風が美月の髪をなびかせる。彼は彼女の髪を撫でて偽りの答えを口にした。
『ああ、仕事だ』
言葉とは裏腹に抱き締める力が強くなった。顔を上げた美月と彼の視線が交ざり合う。
唇と唇が触れ合う寸前に彼の動きが止まり、歯止めが効かなくなる前に彼は美月を手離した。
抑えきれない愛を隠すのも限界が近い。
「思わせ振りなことばっかりするんですね」
『期待したか?』
「別に……」
『くだらないことを考えてないで早く部屋に入りなさい。君に風邪を引かれると困る』
本音はそのままキスをされるかと思った。そうなってもいいと美月は思った。
キスをして欲しかった。自分が三浦に片想いしているみたいで悔しくなった。
朝日を浴びてひんやりした空気を吸い込むと少し気分も晴れた。
『これ昨日落としただろ?』
三浦が美月の手のひらに花の形のイヤリングを落とした。これはエステサロンからの借り物だ。
「やっぱり階段で私を追いかけてきた人は三浦先生だったんですね」
『それが俺の仕事だ』
「そんな仕事、嫌になりませんか? 私みたいな子供の監視したり世話したり……」
くしゃみをした美月の肩に三浦が着ていたジャケットがかけられた。煙草の香りのするジャケットは彼の体温が残っていて温かい。
『確かに君の世話が一番楽じゃないな。寒いなら中に入っていればいいものを。世話が焼ける』
「世話が焼けるなら……焼かなきゃいいじゃない」
ふいっと顔をそらしてむくれる美月の可愛らしさに彼の身体が疼く。煙草を携帯灰皿に捨てた彼は自分のジャケットを羽織る美月を抱き寄せた。
抱き寄せられた胸元に美月は鼻先を擦り付ける。
この人はかつて愛した人とは違う人。そんなことわかっている。
でも何故こんなにもあの人と同じなの?
抱き締める手も温かい胸元も優しい瞳も、何もかもがあの人と同じ。だけどこの人とあの人は別の人間。
「これも仕事……? 私を慰めたり優しくするのも仕事だから?」
高層階に吹く風が美月の髪をなびかせる。彼は彼女の髪を撫でて偽りの答えを口にした。
『ああ、仕事だ』
言葉とは裏腹に抱き締める力が強くなった。顔を上げた美月と彼の視線が交ざり合う。
唇と唇が触れ合う寸前に彼の動きが止まり、歯止めが効かなくなる前に彼は美月を手離した。
抑えきれない愛を隠すのも限界が近い。
「思わせ振りなことばっかりするんですね」
『期待したか?』
「別に……」
『くだらないことを考えてないで早く部屋に入りなさい。君に風邪を引かれると困る』
本音はそのままキスをされるかと思った。そうなってもいいと美月は思った。
キスをして欲しかった。自分が三浦に片想いしているみたいで悔しくなった。