早河シリーズ最終幕【人形劇】
『お前はクイーンの何なんだ? 付き人? 世話役?』
「そんなところですね」
『亮には会ったのか?』
多くを語らないあかりを揺さぶるには最適な方法だと思った。しかし隼人の思惑は外れ、まったく動じる気配のないあかりは信号待ちで立ち止まった。
「彼に会う必要がありますか?」
『元彼なら久々に会いたいと思わねぇの?』
「先輩は元カノに会いたいと思うことがあるんですか?」
これではただの押し問答だ。隼人は舌打ちしてあかりから視線をそらす。
『昔の方が可愛げがあったな。今のが本性か』
「どうにかして私の真意を探ろうとする先輩が悪いんですよ。彼の名前を出せば私が動揺すると思いました?」
あかりは隼人を無視して青に変わった信号を先に渡った。肩を落として隼人も足早に信号を渡る。
「先輩の会社、大変な騒ぎですね」
『しれっと他人事みたいに言うなよ。どうせお前らの仕業だろう?』
「お察しの通り。ですが、事情は少し違います。先輩の会社の爆破、本当は爆発の規模がもっと大きくなる予定だったんですよ」
コンビニや飲食店、オフィスビルが並ぶ通りを歩いて二人は路地裏に入った。路地裏に面したビルの扉を彼女は開けた。
『大きくなるって……』
「あの会社の……先輩がいる経営戦略部のフロアにも被害が及ぶ規模の爆弾が、当初は仕掛けられる予定でした。被害が比較的最小限に抑えられたのは事前に爆薬の量を変えたからなんです」
『じゃあもし爆薬の量を変えずに爆発していたら… 』
「先輩は今頃生きてはいません。先輩だけでなく、他の方達も。……どうぞ」
開け放たれた扉からビルに入ったあかりが扉を押さえて隼人を待っている。今頃自分は生きていなかったと思うと全身に寒気が走った。
隼人が中に入るとあかりが後ろで扉を閉めた。
『それってやっぱり俺を殺そうとして?』
「キングに命を狙われる心当たりが先輩にあるのなら、そういうことになりますね」
『心当たりってそんなもの……』
「ないとは言い切れないはずですよ。言っておきますが、クイーンはキングの恋人です。そして先輩は美月ちゃんの恋人ですよね」
見たところリフォーム途中のビルらしい。床はブルーシートで覆われ、室内はかすかに埃っぽい。電気も暖房もついておらず、小さな窓から差し込む太陽の光が唯一の光源だった。
『邪魔者の俺をキングが殺そうとしたってこと? お前のとこのキングってそんなに嫉妬深いのかよ』
「詳しくはクイーンに聞いてください。この階段を上がった先に彼女がいます」
コンクリートの階段をあかりが指差す。ここからはひとりで行けと言うことだ。
あかりの視線を背中に感じながら隼人は階段を上がる。途中の踊場で右に折れてまた上がり、数段上がると開けた空間が見えてきた。
「そんなところですね」
『亮には会ったのか?』
多くを語らないあかりを揺さぶるには最適な方法だと思った。しかし隼人の思惑は外れ、まったく動じる気配のないあかりは信号待ちで立ち止まった。
「彼に会う必要がありますか?」
『元彼なら久々に会いたいと思わねぇの?』
「先輩は元カノに会いたいと思うことがあるんですか?」
これではただの押し問答だ。隼人は舌打ちしてあかりから視線をそらす。
『昔の方が可愛げがあったな。今のが本性か』
「どうにかして私の真意を探ろうとする先輩が悪いんですよ。彼の名前を出せば私が動揺すると思いました?」
あかりは隼人を無視して青に変わった信号を先に渡った。肩を落として隼人も足早に信号を渡る。
「先輩の会社、大変な騒ぎですね」
『しれっと他人事みたいに言うなよ。どうせお前らの仕業だろう?』
「お察しの通り。ですが、事情は少し違います。先輩の会社の爆破、本当は爆発の規模がもっと大きくなる予定だったんですよ」
コンビニや飲食店、オフィスビルが並ぶ通りを歩いて二人は路地裏に入った。路地裏に面したビルの扉を彼女は開けた。
『大きくなるって……』
「あの会社の……先輩がいる経営戦略部のフロアにも被害が及ぶ規模の爆弾が、当初は仕掛けられる予定でした。被害が比較的最小限に抑えられたのは事前に爆薬の量を変えたからなんです」
『じゃあもし爆薬の量を変えずに爆発していたら… 』
「先輩は今頃生きてはいません。先輩だけでなく、他の方達も。……どうぞ」
開け放たれた扉からビルに入ったあかりが扉を押さえて隼人を待っている。今頃自分は生きていなかったと思うと全身に寒気が走った。
隼人が中に入るとあかりが後ろで扉を閉めた。
『それってやっぱり俺を殺そうとして?』
「キングに命を狙われる心当たりが先輩にあるのなら、そういうことになりますね」
『心当たりってそんなもの……』
「ないとは言い切れないはずですよ。言っておきますが、クイーンはキングの恋人です。そして先輩は美月ちゃんの恋人ですよね」
見たところリフォーム途中のビルらしい。床はブルーシートで覆われ、室内はかすかに埃っぽい。電気も暖房もついておらず、小さな窓から差し込む太陽の光が唯一の光源だった。
『邪魔者の俺をキングが殺そうとしたってこと? お前のとこのキングってそんなに嫉妬深いのかよ』
「詳しくはクイーンに聞いてください。この階段を上がった先に彼女がいます」
コンクリートの階段をあかりが指差す。ここからはひとりで行けと言うことだ。
あかりの視線を背中に感じながら隼人は階段を上がる。途中の踊場で右に折れてまた上がり、数段上がると開けた空間が見えてきた。