早河シリーズ最終幕【人形劇】
マリオネットは祈っている

あの人に会いたい
ああ……あの人に会いたい

この身体にまとわりつく呪われた糸を引きちぎって今すぐあの人に会いにいきたい

どうしてあの人は私を受け入れてくれないの?
私が人間じゃないからかしら?
私が人形だからかしら?

カタカタカタカタカタカタ
ひとりでに動き出す操り人形

会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。

あの人は今どこにいるのかしら?
前にここに現れたあの人間の女と一緒にいるのかしら?

ああ……もし私が人間だったら
あの人の隣にいたのは私なのに
ああ……人間になりたい
こんな糸で吊るされた体はもう嫌よ

あの人だけのものになって
今度は私があの人を操るの

カタカタカタカタカタカタカタカタ
ひとりでに笑い出す操り人形

良いこと思い付いたわ
あの人間の女を殺してしまおう
そうだそうだ、殺してしまおう
そうすればあの人はまたここに帰ってくる
私のところに帰ってくる

殺してしまおう殺してしまおう
あの人間の女の命を貰って私が人間になればいいのよ

そのためにもこの糸から自由になろう
切ってしまおう切ってしまおう

ブチ ブチ ブチ ブチ ブチ

会いにいきたい
会いに行きたい
会いに生きたい

ねぇ、私にその命、くださいな
私のために死んでくださいな

あの人の隣にいるのはあなたじゃないの
私なの
だからごめんね?

私は糸の切れたマリオネット
命を獲たマリオネット

人間になったマリオネット……

        *

12月6日(Sun)午後3時

 カーテンコールで出演者が全員舞台に揃うと劇場は拍手喝采に包まれた。客席の早河となぎさも壇上にいる主演女優、本庄玲夏に拍手を贈る。

今日は玲夏の主演舞台、〈命のマリオネット〉の千秋楽。最後の公演を終えた玲夏は晴々しく安堵の表情を浮かべていた。

『演技とは言え、凄い迫力だったな。あれは本物の操り人形にしか見えなかった』
「うん。人形が自分で糸を切る場面は鳥肌立って怖かった」

 観客で混雑する劇場のロビーの片隅でなぎさはパンフレットを開いた。マットな質感の黒色のパンフレットには銀色の文字で命のマリオネットとこの舞台のタイトルが綴られている。

ページをめくると、出演者一覧の最上部に本庄玲夏の顔写真が載っていた。
< 15 / 167 >

この作品をシェア

pagetop