早河シリーズ最終幕【人形劇】
 フェイシャルにボディエステ、ヘッドスパと髪の毛のトリートメントを受けている最中にネイリストが美月の爪にネイルを施す。
昔、絵本で読んだお姫様がパーティーに出掛ける準備さながらの優雅な時間を美月は過ごしていた。

(綺麗にしてもらって嫌とは言わないけど素直に喜べないなぁ)

仕上がりが間近の片手五本の爪を眺める。ホワイトピンクをベースにしたジェルネイルの表面にはスワロフスキーのストーンが置かれてキラキラと輝いていた。

(やっぱり謎。なんでキングは私にこんなことを?)

 貴嶋の策略が読めない以上、どれだけエステやネイルを施されても手放しで喜べない。

 ネイルの次に美月が案内された場所はエステの施術ルームの隣室。部屋全体が大きなクローゼットになっているその部屋は衣装部屋という言葉がぴったりだった。

どこを見ても色とりどりのドレスが並ぶ光景に圧倒されて立ち尽くす美月に構わず、サロンのスタッフが見繕ったドレスを何着も運んでくる。

 白やピンク、赤、黒、ラベンダー色のパーティードレスが美月の前に並べられ、試着室に放り込まれた彼女は次から次へと試着の波に追われた。着せ替え人形にでもなった気分だ。

(着せ替え人形っていうか、これは着せ替え人間だよね……)

 四着目の白いドレスに着替えた時にその場にいたサロンスタッフ達が満場一致でこのドレスが良いと頷いた。

美月が纏うドレスはデコルテ周りに花のレースがあしらわれたプリンセスラインのミニドレス。ウエスト部分にはサテンの白いリボンがついていて丈は膝上15センチほど。

スカートの短さは気にはなるが、美月も試着した中でこのドレスが一番気に入った。

 ドレスが決まれば後は早い。ヒールの高いシルバーのドレスシューズやアクセサリーも決まり、最後にメイクとヘアセットを行って美月はようやくエステサロンから解放された。

 磨き上げられた二の腕や脚は余分な角質が取れたのか一段と肌の白さが増し、触るとすべすべとして気持ちがいい。

ネイルも初めてのジェルネイルに気分も高まる。日々のセルフケアではここまで綺麗にはできず、プロの技術を実感した。

 髪はゆるく巻かれたアップヘアー。簡単な編み込みなら自分で出来ても本格的なヘアセットは初めてだ。

鏡に映る自分の姿の何もかもがいつもの自分とは違っていた。
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