早河シリーズ短編集【masquerade】
「短大出て就職した会社は上司と揉めてすぐに辞めちゃった。親にも勘当されて行き場のなかった私を、サユリママが拾ってくれて私はメルシーで働くようになった。銀座で働いて専門学校の学費を貯めるつもりだったの」
『それなら学費が貯まれば服飾の学校に行けばいいだけだろ?』
矢野がハルナを押し倒した。ハルナは慈しみの眼差しで矢野を見上げる。
「専門学校の学費にいくらかかるか知ってる?」
『それは……かなりの金額だよな……』
「初年度で120万くらい。私が希望する学科は3年課程だから、1年で100万としても卒業するには300万はいる。学費の他に生活費もかかる。このままメルシーで働いて貯金しても、歳だけとっていくだけなのよ」
耳元で聞かされる現実的な数字は矢野の想像を越えていた。彼はハルナを抱き締めて目を閉じる。
「私がメルシーで働き始めた頃から指名してくれているアパレルブランドの社長が、専門学校の費用全部出してやるから俺と結婚しろって言ってきたの。学費も生活費も心配しなくていいんだよ。こんなチャンス二度とないでしょ?」
『それで結婚するのか? 愛してもない男と……』
「そうよ。夢のために愛してもない男と結婚する」
ハルナの指が矢野の背中から腰を撫でる。くすぐったくて甘い感覚に彼は酔いしれた。
「一輝は今年やっと大学生になった。でも私は今24歳。一輝が大学卒業して社会人になるのを待っていたら30過ぎちゃう。やっぱり二十代のうちに結婚したいし、服飾の夢も諦めたくない。夢を叶えるためなら愛してもない男と結婚もできる」
『ハルナはそれでいいの? 本当にそれで幸せ?』
「幸せだよ。一輝は身内が政治家だから実感ないと思うけど、持たざる人間にはお金と後ろ楯が必要なの」
冷たい響きを含んだハルナの言葉が矢野の心を激しく抉《えぐ》る。
高校を卒業した矢野は今春に国立大の法学部に進学した。大学入学と同時に居候していた武田家を出てこのマンションで独り暮らしを始めた。
それなりに広い1LDKのマンションの家賃も、大学の学費も武田が支払っている。金銭的な苦労は何ひとつない。
政治家である伯父の庇護の下で悠々と暮らすお坊ちゃん。今の自分は周りからはそう見えているだろう。もちろんハルナにも。
初めの出会いから自分達は間違っていた。ハルナにとって矢野は最初から政治家の甥だ。
『もし俺がハルナより年上でハルナを学校行かせてやれるくらいの稼ぎがあったら、ハルナは俺を選んでくれた?』
「そんな悲しいこと聞かないで?」
ハルナは笑ってまた矢野にキスをした。彼女は矢野の下半身に潜り込み、最後の奉仕を彼に施す。
悲しいのに、切ないのに、苦しいのに、身体の反応は素直で悔しい。
矢野はハルナの口の奥にさらに己を押し込む。苦しそうな声を出して涙目になるハルナを見下ろす彼の目にも涙が浮かんでいた。
小柄な身体をベッドに組み敷き、涙目で顔を歪めるハルナの身体を貪った。
触れるとたちまち濡れるハルナのソコは矢野を受け入れ、もっと触れてと言わんばかりに彼女は腰を妖艶にくねらせていた。
『それなら学費が貯まれば服飾の学校に行けばいいだけだろ?』
矢野がハルナを押し倒した。ハルナは慈しみの眼差しで矢野を見上げる。
「専門学校の学費にいくらかかるか知ってる?」
『それは……かなりの金額だよな……』
「初年度で120万くらい。私が希望する学科は3年課程だから、1年で100万としても卒業するには300万はいる。学費の他に生活費もかかる。このままメルシーで働いて貯金しても、歳だけとっていくだけなのよ」
耳元で聞かされる現実的な数字は矢野の想像を越えていた。彼はハルナを抱き締めて目を閉じる。
「私がメルシーで働き始めた頃から指名してくれているアパレルブランドの社長が、専門学校の費用全部出してやるから俺と結婚しろって言ってきたの。学費も生活費も心配しなくていいんだよ。こんなチャンス二度とないでしょ?」
『それで結婚するのか? 愛してもない男と……』
「そうよ。夢のために愛してもない男と結婚する」
ハルナの指が矢野の背中から腰を撫でる。くすぐったくて甘い感覚に彼は酔いしれた。
「一輝は今年やっと大学生になった。でも私は今24歳。一輝が大学卒業して社会人になるのを待っていたら30過ぎちゃう。やっぱり二十代のうちに結婚したいし、服飾の夢も諦めたくない。夢を叶えるためなら愛してもない男と結婚もできる」
『ハルナはそれでいいの? 本当にそれで幸せ?』
「幸せだよ。一輝は身内が政治家だから実感ないと思うけど、持たざる人間にはお金と後ろ楯が必要なの」
冷たい響きを含んだハルナの言葉が矢野の心を激しく抉《えぐ》る。
高校を卒業した矢野は今春に国立大の法学部に進学した。大学入学と同時に居候していた武田家を出てこのマンションで独り暮らしを始めた。
それなりに広い1LDKのマンションの家賃も、大学の学費も武田が支払っている。金銭的な苦労は何ひとつない。
政治家である伯父の庇護の下で悠々と暮らすお坊ちゃん。今の自分は周りからはそう見えているだろう。もちろんハルナにも。
初めの出会いから自分達は間違っていた。ハルナにとって矢野は最初から政治家の甥だ。
『もし俺がハルナより年上でハルナを学校行かせてやれるくらいの稼ぎがあったら、ハルナは俺を選んでくれた?』
「そんな悲しいこと聞かないで?」
ハルナは笑ってまた矢野にキスをした。彼女は矢野の下半身に潜り込み、最後の奉仕を彼に施す。
悲しいのに、切ないのに、苦しいのに、身体の反応は素直で悔しい。
矢野はハルナの口の奥にさらに己を押し込む。苦しそうな声を出して涙目になるハルナを見下ろす彼の目にも涙が浮かんでいた。
小柄な身体をベッドに組み敷き、涙目で顔を歪めるハルナの身体を貪った。
触れるとたちまち濡れるハルナのソコは矢野を受け入れ、もっと触れてと言わんばかりに彼女は腰を妖艶にくねらせていた。