早河シリーズ短編集【masquerade】
 フリーフォール、バイキング、空中ブランコ、ミラーハウスと遊園地の定番アトラクションを乗り継いで有紗は観覧車を見上げた。

『次はこれ?』
「うん。やっぱり観覧車には乗らないとね」

 観覧車の順番待ちをしている間、有紗はバッグから巾着袋を出した。中に入る金平糖の包みを出して空にかざす。
色とりどりの金平糖が青空に鮮やかに映えた。

「何色になるかなぁ。当てっこしよ」
『ゴンドラの色をか?』
「うん。私は赤だと思う!」

 ここの遊園地の観覧車のゴンドラは赤、橙、黄色、緑、青、紫、ピンクの七色があり、ひとつずつ色が違う。

順番待ちの列から自分達の番を数えると赤色のゴンドラが回ってきそうだ。
有紗は赤色の金平糖を袋から出して手のひらに乗せた。

「早河さんは? 探偵さんだから何色が来るか推理してよ」
『俺はホームズでもポアロでもないぞ』

そう言いつつ、早河は首を伸ばして順番待ちの列の前方を見た。
早河達の前には四組並んでいて順番で行けば一組目のカップルが緑、二組目もまたカップルだったがこちらは青、三組目の家族が紫、四組目の小学生の少女四人組がピンク……。

なるほど、有紗の言うようにこのまま行けば自分達はピンクの次の赤色のゴンドラになる。

 早河は三組目の家族連れに目を留めた。彼は確信した顔で有紗の持つ巾着袋からピンク色の金平糖を出して口に入れた。

『ピンクだな』
「えー? なんで?」
『前に並んでるあの親子見てみろよ。小さい女の子がいるだろ?』

前の列の親子連れは三人家族で3歳くらいの女の子がいる。

『あの子がさっきからずっとソワソワしてる。あれはトイレに行きたいんだ』
「あー……!」

 有紗が納得の声を出した直後、小さな女の子は母親に手を引かれて列から離脱した。父親も列から離れて順番がひとつ早くなる。

『観覧車に乗るのにトイレ我慢するのはキツイ。ここからトイレまでは距離があるし、一度列を外れて後ろに譲るしかなくなる』
「そっか! だからピンクって言ったんだね。前の人がいなくなると順番が早くなるから」
『そういうこと』

たった今、あの親子連れが乗るはずだった紫色のゴンドラに早河達の前にいた小学生四人組が乗り込んだ。次がピンク色だ。

「早河さんやっぱり凄い! 人のことよく見てる」
『刑事時代の癖だな』

 係員が早河と有紗が乗るピンク色のゴンドラの扉を開けた。ゆっくり動くゴンドラに飛び乗って扉が閉められる。しばしの空の旅だ。
< 11 / 272 >

この作品をシェア

pagetop