早河シリーズ短編集【masquerade】
少しずつ地上を離れて上昇するゴンドラの窓から有紗は外を見下ろした。姿が小さくなる人々とおもちゃの国みたいな遊園地が一望できた。
『有紗……』
「なぁに?」
彼女はわざと向かい側にいる早河を見ないようにした。彼を見ずに返事だけを返す。
『俺……なぎさと結婚するんだ』
無言で景色を眺める有紗の心は静かだった。予感していたことが現実になっただけ。そこに驚きはなかった。
「……うん。なんとなく、そうなのかなぁって思ってた。なぎささんの話をする早河さん、とっても優しい顔してたから。女ってね、そういう勘は働くんだよ」
まだ早河の顔は見れず、窓に当てていた両手を下ろして膝の上で握る。
「だけど……結婚かぁ。付き合ってるのかもとは思ってたけど、まさかこんなに早くに結婚するとは思ってなかった。それはちょっと……びっくり」
『そうだよな』
有紗にどんな言葉をかけても慰めにはならない。中途半端な優しさも慰めも有紗を傷付けるだけだ。
「いつ結婚するの?」
『クリスマスまでには婚姻届出そうと思ってる』
「うわぁ……もうすぐじゃん! なぎささん、早河なぎささんになっちゃうんだね」
やっとの思いで顔を上げた有紗の瞳は懸命に涙を堪えていた。
「去年は二人とも恋愛感情はないって言ってたのにやっぱりくっついちゃってぇ」
『有紗に嘘つく形になっちまったな。悪い』
頭を垂らす早河の隣に有紗は移動した。彼女は彼の腕にしがみついて顔を寄せる。
「ホントだよ。嘘つき。でもしょうがないよね。早河さんはこんなに格好いいし、意地悪だけど優しいし、喧嘩は強いし仕事はできるし、さすが私の好きな人! なぎささんも優しくてお料理上手で美人だし、私にとってはお姉ちゃんみたいな人。……だから」
有紗は早河の頬にキスをした。
「許してあげる。結婚する相手がなぎささんなら文句ないもん。結婚おめでとう」
『ありがとう』
精一杯の有紗の笑顔に早河も精一杯の誠意で応えた。
一周したゴンドラが再び地上に辿り着く。早河と手を繋いで有紗はゴンドラを降りた。
短くて長い、一瞬の永遠の時間だった。
『どうする? 帰るか?』
「あと少しで遊園地のイルミネーションが始まるんだ。それまでいていい?」
『いいよ』
もうすぐ午後4時。日暮れと共に園内がライトアップされる時間だ。
夕暮れの空を背景にイルミネーションがぽつぽつと点灯を始めた。この時間になると園内に家族連れの姿は少なくなり、カップルの姿を多く見かける。
繋がれたこの手を離さなければいけない時間が迫っている。けれどもう少しだけ、もう少しだけ、この人を独り占めさせてください。
『有紗……』
「なぁに?」
彼女はわざと向かい側にいる早河を見ないようにした。彼を見ずに返事だけを返す。
『俺……なぎさと結婚するんだ』
無言で景色を眺める有紗の心は静かだった。予感していたことが現実になっただけ。そこに驚きはなかった。
「……うん。なんとなく、そうなのかなぁって思ってた。なぎささんの話をする早河さん、とっても優しい顔してたから。女ってね、そういう勘は働くんだよ」
まだ早河の顔は見れず、窓に当てていた両手を下ろして膝の上で握る。
「だけど……結婚かぁ。付き合ってるのかもとは思ってたけど、まさかこんなに早くに結婚するとは思ってなかった。それはちょっと……びっくり」
『そうだよな』
有紗にどんな言葉をかけても慰めにはならない。中途半端な優しさも慰めも有紗を傷付けるだけだ。
「いつ結婚するの?」
『クリスマスまでには婚姻届出そうと思ってる』
「うわぁ……もうすぐじゃん! なぎささん、早河なぎささんになっちゃうんだね」
やっとの思いで顔を上げた有紗の瞳は懸命に涙を堪えていた。
「去年は二人とも恋愛感情はないって言ってたのにやっぱりくっついちゃってぇ」
『有紗に嘘つく形になっちまったな。悪い』
頭を垂らす早河の隣に有紗は移動した。彼女は彼の腕にしがみついて顔を寄せる。
「ホントだよ。嘘つき。でもしょうがないよね。早河さんはこんなに格好いいし、意地悪だけど優しいし、喧嘩は強いし仕事はできるし、さすが私の好きな人! なぎささんも優しくてお料理上手で美人だし、私にとってはお姉ちゃんみたいな人。……だから」
有紗は早河の頬にキスをした。
「許してあげる。結婚する相手がなぎささんなら文句ないもん。結婚おめでとう」
『ありがとう』
精一杯の有紗の笑顔に早河も精一杯の誠意で応えた。
一周したゴンドラが再び地上に辿り着く。早河と手を繋いで有紗はゴンドラを降りた。
短くて長い、一瞬の永遠の時間だった。
『どうする? 帰るか?』
「あと少しで遊園地のイルミネーションが始まるんだ。それまでいていい?」
『いいよ』
もうすぐ午後4時。日暮れと共に園内がライトアップされる時間だ。
夕暮れの空を背景にイルミネーションがぽつぽつと点灯を始めた。この時間になると園内に家族連れの姿は少なくなり、カップルの姿を多く見かける。
繋がれたこの手を離さなければいけない時間が迫っている。けれどもう少しだけ、もう少しだけ、この人を独り占めさせてください。