早河シリーズ短編集【masquerade】
「“だぁーれだ?”」
『“レイリー”』
佐藤は両目を覆う手を優しく掴んだ。シルバーのマニキュアを塗った爪がキラリと光る。
「“大正解”」
レイリーは大きなサングラスを外して微笑した。彼女は佐藤の隣に座り、彼が飲んでいる酒と同じものを注文した。
グラスを乾杯させてさっそく本題に入る。
「“あなたに頼まれていた件ね、あれはチンハイが関係してる”」
『“チンハイの誰が仕切ってる?”』
「“No.2”」
『“リ・スンヨウか”』
レイリーの情報は佐藤の予想通りだった。
チンハイは中国最大の闇組織。薬物製造、人身売買、金になるなら殺人も行い、中国政府の幹部とも太い繋がりがある。
チンハイのNo.2のリ・スンヨウの名は、この世界にいれば当然のごとく頻繁に耳にする。組織の実質的な主導権を握る彼は獰猛で狡猾、リ・スンヨウの怒りを買った者には容赦なく死が待っている。
「“奴が日本の組織と手を組んで、でっかいバクチやって儲けてることは確かだよ”」
『“その組織なら見当はついてる。高瀬組……日本のヤクザだ”』
「“タカセって組織がチンハイと一緒になってカオスの邪魔してるってこと?”」
『“ああ。うちのキングはかなりのご立腹だ”』
どこの犯罪組織のトップも似ているもの。佐藤が属する犯罪組織カオスのキングも傲慢で気分屋、笑いながら容赦なく人を殺す。
『“リ・スンヨウの居所は?”』
「“知ってるけどここじゃ嫌”」
『“焦らしが上手いな”』
「“あなたほどじゃない”」
レイリーは佐藤の肩に頭を預けた。彼から香るコロンの香りは、レイリーが初めて佐藤と会った日から彼女の記憶に強く残り続けている。
佐藤は不思議な男だ。彼についてレイリーが知っていることは国籍は日本人、ファーストネームはシュン、日本の裏社会を支配する犯罪組織カオスの幹部と言うことだけ。
店を後にした二人は雨の降る街をひとつの傘に入って歩く。到着した場所は富裕層が居住する高層マンション。ここの最上階に佐藤の自宅がある。
レイリーが何度も訪れたことのある彼の部屋は今日も綺麗に片付いていた。
「“いつ来ても物が少ない部屋ねぇ”」
綺麗に整理整頓されている室内で唯一の乱雑な場所はデスクの上。デスクには日本製のノートパソコンや数台の携帯電話、レイリーには読めない日本語の文章が並ぶ書類が散らばっていた。
「“私の他に女は連れ込んでいないの?”」
『“ここに入れる女はレイリーだけだ”』
「“どこまでが本当かな。男は平気で嘘をつくから”」
衣擦れの音と外で響く雨の音が重なり合う。
二人が沈む先は大きなベッド。
誘われ導かれ、国籍の違う男と女は駆け引きを繰り返す。女を売り、女を買う。
それもこの世界では必要なことだ。
『“レイリー”』
佐藤は両目を覆う手を優しく掴んだ。シルバーのマニキュアを塗った爪がキラリと光る。
「“大正解”」
レイリーは大きなサングラスを外して微笑した。彼女は佐藤の隣に座り、彼が飲んでいる酒と同じものを注文した。
グラスを乾杯させてさっそく本題に入る。
「“あなたに頼まれていた件ね、あれはチンハイが関係してる”」
『“チンハイの誰が仕切ってる?”』
「“No.2”」
『“リ・スンヨウか”』
レイリーの情報は佐藤の予想通りだった。
チンハイは中国最大の闇組織。薬物製造、人身売買、金になるなら殺人も行い、中国政府の幹部とも太い繋がりがある。
チンハイのNo.2のリ・スンヨウの名は、この世界にいれば当然のごとく頻繁に耳にする。組織の実質的な主導権を握る彼は獰猛で狡猾、リ・スンヨウの怒りを買った者には容赦なく死が待っている。
「“奴が日本の組織と手を組んで、でっかいバクチやって儲けてることは確かだよ”」
『“その組織なら見当はついてる。高瀬組……日本のヤクザだ”』
「“タカセって組織がチンハイと一緒になってカオスの邪魔してるってこと?”」
『“ああ。うちのキングはかなりのご立腹だ”』
どこの犯罪組織のトップも似ているもの。佐藤が属する犯罪組織カオスのキングも傲慢で気分屋、笑いながら容赦なく人を殺す。
『“リ・スンヨウの居所は?”』
「“知ってるけどここじゃ嫌”」
『“焦らしが上手いな”』
「“あなたほどじゃない”」
レイリーは佐藤の肩に頭を預けた。彼から香るコロンの香りは、レイリーが初めて佐藤と会った日から彼女の記憶に強く残り続けている。
佐藤は不思議な男だ。彼についてレイリーが知っていることは国籍は日本人、ファーストネームはシュン、日本の裏社会を支配する犯罪組織カオスの幹部と言うことだけ。
店を後にした二人は雨の降る街をひとつの傘に入って歩く。到着した場所は富裕層が居住する高層マンション。ここの最上階に佐藤の自宅がある。
レイリーが何度も訪れたことのある彼の部屋は今日も綺麗に片付いていた。
「“いつ来ても物が少ない部屋ねぇ”」
綺麗に整理整頓されている室内で唯一の乱雑な場所はデスクの上。デスクには日本製のノートパソコンや数台の携帯電話、レイリーには読めない日本語の文章が並ぶ書類が散らばっていた。
「“私の他に女は連れ込んでいないの?”」
『“ここに入れる女はレイリーだけだ”』
「“どこまでが本当かな。男は平気で嘘をつくから”」
衣擦れの音と外で響く雨の音が重なり合う。
二人が沈む先は大きなベッド。
誘われ導かれ、国籍の違う男と女は駆け引きを繰り返す。女を売り、女を買う。
それもこの世界では必要なことだ。