早河シリーズ短編集【masquerade】
 12月11日、午前11時半。爆破事件の影響で会社は休みとなり、隼人は自宅待機を余儀なくされた。

仕事に必要なデータのリサーチをネットでしている隼人のもとに上野警部から一報が入る。

{美月ちゃんが無事に保護されたよ}
『そうですか……。良かった……』

 明鏡大学の爆破後から行方がわからなかった美月は、莉央の話ではキングと共にいると言う。莉央が側にいる以上、美月の身に危害は及ばないと信じてはいても心配なことに変わりはない。

キングに軟禁されていた赤坂ロイヤルホテルから助け出された美月は自宅に送り届けられた。美月の携帯電話は事情があって警察が預かっているそうだ。

 隼人は美月の自宅に電話をかけた。電話に出た美月の母親と数分話をし、彼は自宅を出た。

 世田谷区の美月の自宅に車を走らせる道中に何台ものパトカーとすれ違い、街で警備をする警官の姿も見かけた。道路のあちらこちらで交通規制もかかっている。

今日は来日したアメリカ大統領との日米首脳会談が行われているが、都内全体の物々しい雰囲気の原因はそれだけではないだろう。

 やがて浅丘家に到着した。美月に面差しのよく似た母親の結恵が出迎えてくれる。

『美月は部屋に?』
「ええ。思ったよりも元気そうで……。本当にあの子が戻って来てくれてホッとしました」

 結恵の目元には充血とクマが現れていた。美月が行方不明になってからは夜も眠れなかったようだ。隼人もまともな睡眠はとれていない。

 二階の美月の部屋の前に立つ。彼女とこれからどんな話をしようか思案しながら、扉をノックした。
開けられた扉から姿を見せた愛しい人は無言で隼人の胸元に顔を埋める。二人はきつく抱き締め合った。

「会いたかった……」
『俺も会いたかった。お帰り』
「ただいま」

今は他の言葉はいらない。お帰りとただいま、これだけで充分だ。

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