早河シリーズ短編集【masquerade】
 開幕早々に演歌を歌い出す鈴川や、踊りつきで流行りのアイドルソングを歌う麻子と薫、池田は男性デュオの歌で美声を披露した。

皆が思い思いに二次会を楽しむ最中も美月は亀山の一言が気にかかって、この場を心からは楽しめなかった。


 ──“池田はいい奴だよ。表向きは”──


 亀山の真意を聞きたくても池田がいる前では聞けない。どうにかもう一度亀山と二人きりになりたかったが、当の亀山はマイクは握らずに聴き手に回っていた。

 次の曲のイントロが流れ始めて、麻子と薫がマイクを握った。

「ではでは、次の曲は私と麻子ちゃんからの美月ちゃんへのプレゼントです。美月ちゃんご結婚おめでとうございまぁーす!」

唐突に流れるウェディングソングと麻子と薫からの祝いの言葉に美月は驚愕する。女性二人が歌うウェディングソングは誰もが知る定番の曲だけに、中盤からは鈴川も歌詞を口ずさみ、室内は祝福ムードに包まれた。

 麻子と薫の歌のサプライズの後は盛り上げ役の鈴川が再び乾杯の音頭をとり、カラオケボックスではよくある冷凍食品のピザやフライドポテトがテーブルに並ぶ。

歌って食べて飲んで歌って、延々と続いた二次会も22時を過ぎた頃には、酔い潰れた麻子がソファーで横たわっていた。

『おいおい麻子ちゃん。気を付けないとパンツ見えるって』

スカートがめくれあがっている麻子に鈴川が自分のジャケットをかけてやった。ギャグばかり言っている鈴川は何気に気が利く人間だ。

『この状態で麻子ちゃんひとりで帰れるのか?』
「お持ち帰りしちゃう?」
『薫ちゃん酷いなぁ。俺のイメージそんなん? こう見えてけっこう紳士なんだけど』

 鈴川と薫の会話の狭間で美月はスマホを確認する。迎えを頼んだ隼人からメールが入っていた。
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