早河シリーズ短編集【masquerade】
「美月ちゃんは帰る?」
「うん。主人が迎えに来てくれるから、そろそろ出るね。麻子ちゃんは寝てるけど……薫ちゃんと麻子ちゃんのプレゼントとっても嬉しかった。ありがとうね。鈴川くんも池田くんも亀山くんも、今日は楽しかったよ。また皆で遊べたらいいな」
『おう! また飲み会しような!』

 鈴川が笑い、薫も微笑んでいる。池田と亀山は無表情だったが美月が部屋を出る時に池田が突然立ち上がった。

『旦那さんどれくらいでこっち着く?』
「あと10分はかかるかな」
『俺も一緒に待つよ。夜の新宿でひとりで待つのは危ない。すぐ戻るから皆は続けてて』

 他のメンバーを残して池田は美月と共に部屋を出ていった。
ピザのひと切れを咀嚼した鈴川が失笑する。

『池田ちゃんが一緒にいる方が危ないと思うのは俺の気のせい?』
「気のせいじゃないかもねぇ。池田くんどうする気だろ。旦那さんに喧嘩売っても仕方ないのに」

薫もビールを飲み干して苦笑いする。亀山は相変わらず無表情で、何を考えているかわからない。

『美月ちゃんが未婚ならまだしも結婚してるんだから、池田ちゃんも往生際が悪いと言うか』
「惜しいイケメンって池田くんみたいな人を言うのかも。美月ちゃんの旦那さんの写真見せてもらったことあるけど、池田くんが霞んじゃうくらい相当イケメンなのよ」

 薫は泥酔して寝入っている麻子に目を向ける。鈴川のジャケットは彼女にかけられたままだ。

「ね、本当に麻子ちゃんのこといいの? 鈴川くんが今夜パスするなら私が麻子ちゃん連れて帰るよ。どうせ帰る方向同じだから」
『今夜はいい。ちゃんと連れて帰ってあげて』

すやすや眠る麻子の顔を見つめる鈴川の眼差しは優しい。彼が麻子に好意を持っていることは一目瞭然だ。

「チャラいと見せかけて本命には手が出せないタイプなのね」
『意外でしょ?』
「すっごく意外。お、カメヤマンはトイレ?」

 無言で立ち上がる亀山を薫が呼び止める。
この数時間の飲み会で亀山のあだ名がカメヤマンに定着してしまった。
亀山は写真が趣味らしく、“カメラマン亀山”をもじって鈴川が名付けた。

亀山は振り向き様に頷いただけでそのまま部屋を後にした。
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