早河シリーズ短編集【masquerade】
「やらかしちゃったんだよね。はぁ……」
麻子の落ち込み様は尋常ではない。鈴川と何かあったのは“お察しの通り”だろう。
「鈴川くんに告白されたの?」
「告白ならまだいいの。告白ならね! もうすぐ甥っ子の8歳の誕生日で、プレゼント選びに付き合ってもらった後にバーで飲んだの。元彼の愚痴聞いてもらったりしたんだけど、私って調子乗ると飲み過ぎる馬鹿だから、あの日も飲み過ぎちゃったみたいで……。朝起きるとホテルにいて隣にアイツが寝てたってこと。社会人1年目でやらかしちゃったぁってヤツ」
美月も大方の状況把握はできた。ここまで“お察しの通り”だとは思わなかったが、落ち込む麻子を責める気にはなれない。
「そうしたら今回のことはなかったことにしようって言われたの。ホテルのベッドの上でよ? なかったことって何? こっちは酔ってたとは言え、なんでこうなって何したのかは覚えてるんだよ。何もなかったならまだしも実際ヤってるんだし……それをなかったことって何なの? ってなるじゃないっ?」
麻子の勢いに気圧されて、美月は苦笑いして頷くことしかできなかった。薫がまぁまぁと麻子をなだめる。
新宿の街が一望できる5月の屋上庭園。向こうのベンチからは女性社員の楽しげなお喋りが聞こえる中で、ひそひそ話をしているのは美月達だけだ。
「だけど麻子ちゃん。さっきも言ったけど4月の飲み会では鈴川くんは麻子ちゃんをお持ち帰りしなかったんだよ。スカートめくれ上がってる麻子ちゃん気遣って自分の上着かけてあげたりして。ね、美月ちゃん?」
フォローする薫に話を振られて美月は4月の二次会の出来事を思い返した。カラオケの席で酔い潰れて寝てしまった麻子にジャケットをかけてやる鈴川は、確かに紳士だった。
「うん。あの時の鈴川くんは優しい顔して麻子ちゃんを見てたよ。なかったことにしようって言うのも鈴川くんなりの気遣いなんだと思う。麻子ちゃんが気にしないようにって……」
「そうだとしても4月の飲み会の時は皆がいたから遠慮しただけかもしれないでしょ! だって二人で飲んだ後にはあっさり手を出してきたんだから」
薫と美月のフォローも今の麻子は聞き入れない。憤慨する麻子の側で美月と薫はやれやれと肩をすくめた。
「ヤるだけヤって一夜限りで終わり、ハイ、忘れようって都合良すぎるよね。別にこっちはあんな奴好みじゃないし、最初から恋愛対象外だから告白されたって困るだけよ!」
飲み過ぎた麻子にも責任はあるが、鈴川が麻子との今後をどうするつもりなのかも疑問が残る。
麻子の落ち込み様は尋常ではない。鈴川と何かあったのは“お察しの通り”だろう。
「鈴川くんに告白されたの?」
「告白ならまだいいの。告白ならね! もうすぐ甥っ子の8歳の誕生日で、プレゼント選びに付き合ってもらった後にバーで飲んだの。元彼の愚痴聞いてもらったりしたんだけど、私って調子乗ると飲み過ぎる馬鹿だから、あの日も飲み過ぎちゃったみたいで……。朝起きるとホテルにいて隣にアイツが寝てたってこと。社会人1年目でやらかしちゃったぁってヤツ」
美月も大方の状況把握はできた。ここまで“お察しの通り”だとは思わなかったが、落ち込む麻子を責める気にはなれない。
「そうしたら今回のことはなかったことにしようって言われたの。ホテルのベッドの上でよ? なかったことって何? こっちは酔ってたとは言え、なんでこうなって何したのかは覚えてるんだよ。何もなかったならまだしも実際ヤってるんだし……それをなかったことって何なの? ってなるじゃないっ?」
麻子の勢いに気圧されて、美月は苦笑いして頷くことしかできなかった。薫がまぁまぁと麻子をなだめる。
新宿の街が一望できる5月の屋上庭園。向こうのベンチからは女性社員の楽しげなお喋りが聞こえる中で、ひそひそ話をしているのは美月達だけだ。
「だけど麻子ちゃん。さっきも言ったけど4月の飲み会では鈴川くんは麻子ちゃんをお持ち帰りしなかったんだよ。スカートめくれ上がってる麻子ちゃん気遣って自分の上着かけてあげたりして。ね、美月ちゃん?」
フォローする薫に話を振られて美月は4月の二次会の出来事を思い返した。カラオケの席で酔い潰れて寝てしまった麻子にジャケットをかけてやる鈴川は、確かに紳士だった。
「うん。あの時の鈴川くんは優しい顔して麻子ちゃんを見てたよ。なかったことにしようって言うのも鈴川くんなりの気遣いなんだと思う。麻子ちゃんが気にしないようにって……」
「そうだとしても4月の飲み会の時は皆がいたから遠慮しただけかもしれないでしょ! だって二人で飲んだ後にはあっさり手を出してきたんだから」
薫と美月のフォローも今の麻子は聞き入れない。憤慨する麻子の側で美月と薫はやれやれと肩をすくめた。
「ヤるだけヤって一夜限りで終わり、ハイ、忘れようって都合良すぎるよね。別にこっちはあんな奴好みじゃないし、最初から恋愛対象外だから告白されたって困るだけよ!」
飲み過ぎた麻子にも責任はあるが、鈴川が麻子との今後をどうするつもりなのかも疑問が残る。