早河シリーズ短編集【masquerade】
午後の業務に戻った美月はトータルコーディネート部のフロアで噂の人物と出くわした。営業部配属の鈴川がトータルコーディネート部のフロアにいるのは珍しい。
「鈴川くん。どうしてここに?」
『今からトータルコーディネート部の人達と会議があって、俺も出ることになったんだよね。って言っても書類配布とかの雑用係で』
鈴川の他にも営業部の社員が数名、廊下で待機している。彼はトータルコーディネート部の部署を見渡した。
『池田ちゃんいないの?』
「池田くんはショールーム見学に出てるよ。明日から交代でショールームの業務があるんだ」
『おお、ついにかー。ショールームは営業部も立ち寄るからその時はよろしくな』
会議の時間が迫っているようで、鈴川以外の社員達が会議室に流れていく。鈴川も後に続いたが、彼は急いで引き返して美月に駆け寄った。
『今日、仕事終わった後に時間とれる?』
「少しなら大丈夫だよ」
『よかった。話したいことがあるんだ。そんなに時間はとらせないよ。定時後にここのエレベーターホールで待っててくれる? ここまで迎えに来るよ』
「わかった」
鈴川の用件は麻子のことだと予想する。鈴川が美月をアフターファイブに誘う理由は他に思い当たらない。
(隼人は今日も残業だから少し帰りが遅くなっても大丈夫だよね)
麻子も鈴川も1ヶ月の研修で苦楽を共にした同期。二人の間に感情のすれ違いが生じているなら、微力でも手助けしたかった。
定時を迎えた美月は鈴川に言われた通り、トータルコーディネート部のエレベーターホールで彼を待った。残業がある隼人には念のため、同期と話をした後に帰るから帰宅が少し遅くなるとメールを入れておいた。
『木村さん帰らないの?』
退勤する池田がエレベーターホールに佇む美月に声をかける。定時が過ぎた社内で帰り支度を済ませた社員が、エレベーターにも乗らずに立ち尽くす光景は誰が見ても奇妙だ。
「鈴川くんを待ってるの」
『鈴川を? なんでまた……』
「話があるんだって。ここで待ち合わせているんだ」
『そう……』
腑に落ちない顔で池田がエレベーターのボタンを押した直後、隣のエレベーターが開いて鈴川が降りてきた。
『美月ちゃん待たせてごめんねー。って池田ちゃーんっ! 久しぶりー!』
『昨日も駅で顔合わせただろ』
軽いノリの鈴川を池田は素っ気なく突き放す。下りのエレベーターが到着しても池田は乗ろうとしなかった。
『木村さんに話あるんだって?』
『ああ、まぁちょっとな。相談みたいなもん』
先ほどの調子の良さから一転して今度は歯切れが悪い。池田が呼んだエレベーターは誰も乗せずに扉を閉ざした。
「鈴川くん。どうしてここに?」
『今からトータルコーディネート部の人達と会議があって、俺も出ることになったんだよね。って言っても書類配布とかの雑用係で』
鈴川の他にも営業部の社員が数名、廊下で待機している。彼はトータルコーディネート部の部署を見渡した。
『池田ちゃんいないの?』
「池田くんはショールーム見学に出てるよ。明日から交代でショールームの業務があるんだ」
『おお、ついにかー。ショールームは営業部も立ち寄るからその時はよろしくな』
会議の時間が迫っているようで、鈴川以外の社員達が会議室に流れていく。鈴川も後に続いたが、彼は急いで引き返して美月に駆け寄った。
『今日、仕事終わった後に時間とれる?』
「少しなら大丈夫だよ」
『よかった。話したいことがあるんだ。そんなに時間はとらせないよ。定時後にここのエレベーターホールで待っててくれる? ここまで迎えに来るよ』
「わかった」
鈴川の用件は麻子のことだと予想する。鈴川が美月をアフターファイブに誘う理由は他に思い当たらない。
(隼人は今日も残業だから少し帰りが遅くなっても大丈夫だよね)
麻子も鈴川も1ヶ月の研修で苦楽を共にした同期。二人の間に感情のすれ違いが生じているなら、微力でも手助けしたかった。
定時を迎えた美月は鈴川に言われた通り、トータルコーディネート部のエレベーターホールで彼を待った。残業がある隼人には念のため、同期と話をした後に帰るから帰宅が少し遅くなるとメールを入れておいた。
『木村さん帰らないの?』
退勤する池田がエレベーターホールに佇む美月に声をかける。定時が過ぎた社内で帰り支度を済ませた社員が、エレベーターにも乗らずに立ち尽くす光景は誰が見ても奇妙だ。
「鈴川くんを待ってるの」
『鈴川を? なんでまた……』
「話があるんだって。ここで待ち合わせているんだ」
『そう……』
腑に落ちない顔で池田がエレベーターのボタンを押した直後、隣のエレベーターが開いて鈴川が降りてきた。
『美月ちゃん待たせてごめんねー。って池田ちゃーんっ! 久しぶりー!』
『昨日も駅で顔合わせただろ』
軽いノリの鈴川を池田は素っ気なく突き放す。下りのエレベーターが到着しても池田は乗ろうとしなかった。
『木村さんに話あるんだって?』
『ああ、まぁちょっとな。相談みたいなもん』
先ほどの調子の良さから一転して今度は歯切れが悪い。池田が呼んだエレベーターは誰も乗せずに扉を閉ざした。