早河シリーズ短編集【masquerade】
その夜。帰宅した隼人は七海との出来事を包み隠さず美月に話した。今まで言わなかったことの謝罪も含めて、すべてを話した隼人を責める言葉は美月からは一言もない。
けれど彼女の横顔は隼人の予想通り悲しげな色に沈んでいた。
「最近の隼人は疲れてるとは思ってたけど、仕事のことだけじゃなかったんだね」
『ごめん。美月にそんな顔させたくなくて、言わないつもりだった。でも隠すのも嫌だった』
隼人に抱き寄せられた美月は大人しく彼の腕の中に収まった。
わかってはいたが、自分と出会う前の隼人には一夜限りの身体の付き合いの女が多くいた。実際に過去に関係があった女が隼人に復縁を迫ったと聞かされると、美月は複雑な気持ちが拭えない。
『こんな沢山の女と遊んできた男に触れられるのは嫌?』
「隼人に触れられるのは嫌じゃないよ。だけど私以外の女の人には触れないで……」
ドロドロとした嫉妬の感情に蝕まれる。隼人にしがみついて美月は彼の香りを強く吸い込んだ。
『当たり前だろ。俺は美月が居てくれればそれでいい。俺が触れたいと思うのは美月だけだよ』
唇から伝わる熱。優しいキスは甘くとろけて、だんだんと息をするのも苦しく激しく。彼の熱で溶けて消える黒い心。
『美月は今日の帰り道も何もなかった?』
「うん、大丈夫。帰りに変な感じがしたのはこの前の一度きりだったから、やっぱり勘違いだったのかも」
誰かに尾行されているような感覚があったのは4月の帰り道の一度だけ。上野警部の手配でしばらくは自宅付近のパトロールを強化してもらっていたが、今のところは幸いにも被害はなくパトロールも不要となった。
三輪七海の件も一段落してこれ以上何も起きないと美月も隼人も思っていた。いや、そう思いたかった。
しかしまだ終わっていなかった。
本当の闘いはこれから始まる。
けれど彼女の横顔は隼人の予想通り悲しげな色に沈んでいた。
「最近の隼人は疲れてるとは思ってたけど、仕事のことだけじゃなかったんだね」
『ごめん。美月にそんな顔させたくなくて、言わないつもりだった。でも隠すのも嫌だった』
隼人に抱き寄せられた美月は大人しく彼の腕の中に収まった。
わかってはいたが、自分と出会う前の隼人には一夜限りの身体の付き合いの女が多くいた。実際に過去に関係があった女が隼人に復縁を迫ったと聞かされると、美月は複雑な気持ちが拭えない。
『こんな沢山の女と遊んできた男に触れられるのは嫌?』
「隼人に触れられるのは嫌じゃないよ。だけど私以外の女の人には触れないで……」
ドロドロとした嫉妬の感情に蝕まれる。隼人にしがみついて美月は彼の香りを強く吸い込んだ。
『当たり前だろ。俺は美月が居てくれればそれでいい。俺が触れたいと思うのは美月だけだよ』
唇から伝わる熱。優しいキスは甘くとろけて、だんだんと息をするのも苦しく激しく。彼の熱で溶けて消える黒い心。
『美月は今日の帰り道も何もなかった?』
「うん、大丈夫。帰りに変な感じがしたのはこの前の一度きりだったから、やっぱり勘違いだったのかも」
誰かに尾行されているような感覚があったのは4月の帰り道の一度だけ。上野警部の手配でしばらくは自宅付近のパトロールを強化してもらっていたが、今のところは幸いにも被害はなくパトロールも不要となった。
三輪七海の件も一段落してこれ以上何も起きないと美月も隼人も思っていた。いや、そう思いたかった。
しかしまだ終わっていなかった。
本当の闘いはこれから始まる。