早河シリーズ短編集【masquerade】
『今は純粋に美月さんをお守りしたいと思っています。なんとなくですが、ボスが美月さんに惚れた理由もわかった気がします』
{お前も美月に惚れたか?}
面白がるボスの口調に日浦はまた大袈裟に首を振る。日浦の欠点は動作がいちいち大袈裟になるところだ。
『いえいえっ! そんなやましい気持ちではありません! 誓って俺は不純な気持ちで美月さんをお守りしているわけでは……』
{わかったわかった。そうムキにならなくていい}
珍しくボスが声を上げて笑っていた。どちらかと言えば、無口で冷静沈着なボスがこんなに大笑いしたことは今までにない。
{安心したよ。現場の最前線にいたお前が陰の任務で我慢できるのか、気掛かりだったんだ。俺が命じているから仕方なくやっているものだと思っていたからな}
『とんでもないです。俺はこの任務に就けて光栄です。ボスのためにも任務を全うする所存です』
{頼んだぞ。それと近々、夏木会長とプロジェクトの話し合いで日本に帰ることになりそうだ。お前の方にも会長から連絡があるだろう}
『わかりました。お帰りをお待ちしています』
ボスの低く柔らかな声を最後に聞いて通話は終了した。
日浦が美月を守る任務に就いたのは2年前。かつてボスが所属していた犯罪組織カオス壊滅後から、日浦は美月を影ながら見守ってきた。
本当は誰よりも美月を側で守りたいであろうボスは海の向こうの異国にいる。自分はボスの代わりだ。
日浦の役目は日本での仕事を遂行しつつ、美月の様子を時折見に行っては彼女の日常をボスに報告する。最近では美月の大学卒業をボスに伝えたばかりだ。
そして美月の身の危険を察知した場合は、ボスの判断を仰ぐ。今回の池田の件に関しても美月を付け狙う池田の動きを掴んだ日浦は、ボスの指示で池田の情報を集めていた。
ボスに打ち明けた通り、最初は見ず知らずの若い女をひっそり守るだけの刺激のない任務に対して、どうして自分がこんな仕事をしなければならないのかと退屈をもて余していた。
けれども美月の日常を垣間見ていると、不思議と安らぎを感じた。彼女のプライバシーは守りつつ陰から見守るだけなのだが、美月の笑顔を見ていると心が穏やかになれた。
あれがボスが惚れた笑顔。犯罪組織カオスのキングが手に入れたいと渇望した光。
あの光を守りたいと今は心から思える。
ボスのためにも、彼女のためにも。
{お前も美月に惚れたか?}
面白がるボスの口調に日浦はまた大袈裟に首を振る。日浦の欠点は動作がいちいち大袈裟になるところだ。
『いえいえっ! そんなやましい気持ちではありません! 誓って俺は不純な気持ちで美月さんをお守りしているわけでは……』
{わかったわかった。そうムキにならなくていい}
珍しくボスが声を上げて笑っていた。どちらかと言えば、無口で冷静沈着なボスがこんなに大笑いしたことは今までにない。
{安心したよ。現場の最前線にいたお前が陰の任務で我慢できるのか、気掛かりだったんだ。俺が命じているから仕方なくやっているものだと思っていたからな}
『とんでもないです。俺はこの任務に就けて光栄です。ボスのためにも任務を全うする所存です』
{頼んだぞ。それと近々、夏木会長とプロジェクトの話し合いで日本に帰ることになりそうだ。お前の方にも会長から連絡があるだろう}
『わかりました。お帰りをお待ちしています』
ボスの低く柔らかな声を最後に聞いて通話は終了した。
日浦が美月を守る任務に就いたのは2年前。かつてボスが所属していた犯罪組織カオス壊滅後から、日浦は美月を影ながら見守ってきた。
本当は誰よりも美月を側で守りたいであろうボスは海の向こうの異国にいる。自分はボスの代わりだ。
日浦の役目は日本での仕事を遂行しつつ、美月の様子を時折見に行っては彼女の日常をボスに報告する。最近では美月の大学卒業をボスに伝えたばかりだ。
そして美月の身の危険を察知した場合は、ボスの判断を仰ぐ。今回の池田の件に関しても美月を付け狙う池田の動きを掴んだ日浦は、ボスの指示で池田の情報を集めていた。
ボスに打ち明けた通り、最初は見ず知らずの若い女をひっそり守るだけの刺激のない任務に対して、どうして自分がこんな仕事をしなければならないのかと退屈をもて余していた。
けれども美月の日常を垣間見ていると、不思議と安らぎを感じた。彼女のプライバシーは守りつつ陰から見守るだけなのだが、美月の笑顔を見ていると心が穏やかになれた。
あれがボスが惚れた笑顔。犯罪組織カオスのキングが手に入れたいと渇望した光。
あの光を守りたいと今は心から思える。
ボスのためにも、彼女のためにも。