早河シリーズ短編集【masquerade】
続々とダイニングバーを出て行く学生を見送り、自分も出ようとした時に女性店員が渡辺に駆け寄って来た。
「あの……大学の先生ですよね?」
『ああ、はい』
大学関係者以外にはポストドクターも教官も似たようなものだ。皆が渡辺を先生と呼ぶから、店員も渡辺を教官だと思い込んでいた。
「女性の学生さんがトイレに行ったきり戻って来ないんです。皆さん帰ってしまわれたのでどうすればいいか困っていて……」
『きっと酔い潰れているんですね。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。私が責任を持って連れて帰ります』
「いえ、その……男子の学生さん達がその子を捜していたんです」
女性店員はしきりに辺りを警戒している。星城大学の学生達と変わらない年齢に見える彼女は、トイレのある通路側を見ながら渡辺に囁いた。
「私の勝手な印象ですが、その子が男子学生さん達に見つかってしまうとこの後によくないことが起きる気がして心配で。この仕事をしていると、そういった場面もたまに見るので……」
店員の話は白井が小耳に挟んだ話と合致する。つまりトイレに籠っている女子学生が男子達のターゲットだ。
『男子学生達は今どこに?』
「二階のテラスで煙草を吸っています。今ならまだ見つからないように外にも出られるので先生にご相談したんです。先生なら彼女を守ってくれるんじゃないかってこれも私の勝手なイメージなんですけど……」
渡辺も生物としては男の生き物に分類されるが、不届きを企む男子学生よりは頼りにできると判断されたらしい。
やはりここは大人として最後まで責任を持たなければいけない。それが年長者の役目だ。
『わかりました。お手数ですが、トイレにいる学生を連れて来ていただけますか?』
「はい。今連れて来ますね」
女性店員の姿が通路に消える。渡辺はカウンター席に腰掛けて二人の到着を待った。
『酔った学生の面倒まで見ないといけなくて大学の先生も大変だね』
『まったくです』
カウンターの奥で渡辺と店員の会話を聞いていたマスターが苦笑いして渡辺を労う。渡辺も同意の頷きを返した。
早々に帰るべきだったと後悔しても遅い。頼まれてしまったからには、学生を家まで送り届ける義務がある。
フラフラとおぼつかない足取りの女子学生が店員に支えられて歩いて来た。どうやら建築科の学生らしく、渡辺の知らない女だ。
「あー……! わたなべしぇんしぇいだぁ」
女子学生は渡辺を見ると目を輝かせて彼に抱き付いた。
(うわっ。酒臭ぇ……。これだけ酔ってるなら簡単にホテル連れ込めるよな)
マスターと女性店員に挨拶をして、泥酔して歩けない女子学生をおぶって外に出る。彼女を捜していた男子学生達には幸い出くわすことはなかった。
「あの……大学の先生ですよね?」
『ああ、はい』
大学関係者以外にはポストドクターも教官も似たようなものだ。皆が渡辺を先生と呼ぶから、店員も渡辺を教官だと思い込んでいた。
「女性の学生さんがトイレに行ったきり戻って来ないんです。皆さん帰ってしまわれたのでどうすればいいか困っていて……」
『きっと酔い潰れているんですね。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。私が責任を持って連れて帰ります』
「いえ、その……男子の学生さん達がその子を捜していたんです」
女性店員はしきりに辺りを警戒している。星城大学の学生達と変わらない年齢に見える彼女は、トイレのある通路側を見ながら渡辺に囁いた。
「私の勝手な印象ですが、その子が男子学生さん達に見つかってしまうとこの後によくないことが起きる気がして心配で。この仕事をしていると、そういった場面もたまに見るので……」
店員の話は白井が小耳に挟んだ話と合致する。つまりトイレに籠っている女子学生が男子達のターゲットだ。
『男子学生達は今どこに?』
「二階のテラスで煙草を吸っています。今ならまだ見つからないように外にも出られるので先生にご相談したんです。先生なら彼女を守ってくれるんじゃないかってこれも私の勝手なイメージなんですけど……」
渡辺も生物としては男の生き物に分類されるが、不届きを企む男子学生よりは頼りにできると判断されたらしい。
やはりここは大人として最後まで責任を持たなければいけない。それが年長者の役目だ。
『わかりました。お手数ですが、トイレにいる学生を連れて来ていただけますか?』
「はい。今連れて来ますね」
女性店員の姿が通路に消える。渡辺はカウンター席に腰掛けて二人の到着を待った。
『酔った学生の面倒まで見ないといけなくて大学の先生も大変だね』
『まったくです』
カウンターの奥で渡辺と店員の会話を聞いていたマスターが苦笑いして渡辺を労う。渡辺も同意の頷きを返した。
早々に帰るべきだったと後悔しても遅い。頼まれてしまったからには、学生を家まで送り届ける義務がある。
フラフラとおぼつかない足取りの女子学生が店員に支えられて歩いて来た。どうやら建築科の学生らしく、渡辺の知らない女だ。
「あー……! わたなべしぇんしぇいだぁ」
女子学生は渡辺を見ると目を輝かせて彼に抱き付いた。
(うわっ。酒臭ぇ……。これだけ酔ってるなら簡単にホテル連れ込めるよな)
マスターと女性店員に挨拶をして、泥酔して歩けない女子学生をおぶって外に出る。彼女を捜していた男子学生達には幸い出くわすことはなかった。