早河シリーズ短編集【masquerade】
うつ伏せに寝かせた彼女の背中に早河がつけた薔薇の花弁が咲き誇る。快楽に身体が疼くなぎさは布団に両手足をつき、早河に向けて尻を高く突き出した。
四つん這いになった彼女の後ろから早河が指と舌を差し入れれば、なぎさの蜜壺はじゅわりと濡れた。
「……あっ。ダメっ」
『ダメじゃないだろ? 今日は後ろから舐めてって顔して俺に尻突き出したのは誰?』
「あっ、……私……。んっ……ぁっ……ん」
胸へ、手脚へ、そして芳しい匂いで雄を誘う女の部分へ、早河の愛撫の雨が降り注ぐ。
なぎさの涙もやがて乾き、頬が蒸気した彼女から漏れるのは甘い啼《な》き声。鍛え上げられた早河の身体にもじわりと汗が滲んでいた。
今夜の早河は初めて避妊をしなかった。
溶け合うように、男と女のふたりがひとつになって上り詰めた快楽の先に待つのは、人としての責任。
命の責任の重みを知る者と知らない者では、“避妊をしない”の意味もまるで違う。
二人の間に命が宿るのはもう少し先の未来の話。
こうして新婚旅行初日の夜が終わる。先に寝入ったなぎさの寝顔を見つめて早河は今日の出来事を振り返った。
草津に到着して早々、同じバスに乗り合わせていた挙動不審な女とバスターミナルで顔を合わせた。彼女も今は、この町のどこかの宿の布団で眠っているだろう。
温泉街の足湯で出会ったお喋り好きな婦人、宿泊先の旅館で再会したなぎさの元不倫相手。
なぎさの予想通りに、あのお喋りな婦人が小田切の妻だとして、あのバスターミナルの女はもしや……。
早河は脳裏によぎった嫌な想像を打ち消した。この予感が杞憂であればいい。そう願った。
(子どもか……。俺も自分が父親になるなんて想像つかないな)
なぎさを起こさないように寝ている彼女の髪を撫でる。
新婚旅行で子作り……自分も人並みなことをするものだと苦笑しかできない。
子を宿すのも産むのも女だから、男は考えなしに子どもが欲しいと口に出せる。出産をするのに女がどれだけの覚悟を要するのかなんて考えない。
結局、妊娠と出産に関して男はどこまでも他人事なのだ。他人事ではないはずのことも、体感できないことは他人事になる。
妊娠も出産も中絶も、きっと女の本当の気持ちを男は理解できない。だからこそ大切なのはどれだけ相手の心に寄り添えるか。
(なぎさなら母親になれると俺は思うよ)
彼女は誰よりも、命の重みを知っているから。
早河はなぎさの額におやすみのキスをした。どうか今夜の彼女がいい夢が見れるようにと。
四つん這いになった彼女の後ろから早河が指と舌を差し入れれば、なぎさの蜜壺はじゅわりと濡れた。
「……あっ。ダメっ」
『ダメじゃないだろ? 今日は後ろから舐めてって顔して俺に尻突き出したのは誰?』
「あっ、……私……。んっ……ぁっ……ん」
胸へ、手脚へ、そして芳しい匂いで雄を誘う女の部分へ、早河の愛撫の雨が降り注ぐ。
なぎさの涙もやがて乾き、頬が蒸気した彼女から漏れるのは甘い啼《な》き声。鍛え上げられた早河の身体にもじわりと汗が滲んでいた。
今夜の早河は初めて避妊をしなかった。
溶け合うように、男と女のふたりがひとつになって上り詰めた快楽の先に待つのは、人としての責任。
命の責任の重みを知る者と知らない者では、“避妊をしない”の意味もまるで違う。
二人の間に命が宿るのはもう少し先の未来の話。
こうして新婚旅行初日の夜が終わる。先に寝入ったなぎさの寝顔を見つめて早河は今日の出来事を振り返った。
草津に到着して早々、同じバスに乗り合わせていた挙動不審な女とバスターミナルで顔を合わせた。彼女も今は、この町のどこかの宿の布団で眠っているだろう。
温泉街の足湯で出会ったお喋り好きな婦人、宿泊先の旅館で再会したなぎさの元不倫相手。
なぎさの予想通りに、あのお喋りな婦人が小田切の妻だとして、あのバスターミナルの女はもしや……。
早河は脳裏によぎった嫌な想像を打ち消した。この予感が杞憂であればいい。そう願った。
(子どもか……。俺も自分が父親になるなんて想像つかないな)
なぎさを起こさないように寝ている彼女の髪を撫でる。
新婚旅行で子作り……自分も人並みなことをするものだと苦笑しかできない。
子を宿すのも産むのも女だから、男は考えなしに子どもが欲しいと口に出せる。出産をするのに女がどれだけの覚悟を要するのかなんて考えない。
結局、妊娠と出産に関して男はどこまでも他人事なのだ。他人事ではないはずのことも、体感できないことは他人事になる。
妊娠も出産も中絶も、きっと女の本当の気持ちを男は理解できない。だからこそ大切なのはどれだけ相手の心に寄り添えるか。
(なぎさなら母親になれると俺は思うよ)
彼女は誰よりも、命の重みを知っているから。
早河はなぎさの額におやすみのキスをした。どうか今夜の彼女がいい夢が見れるようにと。