早河シリーズ短編集【masquerade】
『こういった犯罪にはだいたい法則性があるんだ。いつ、何時に、どの辺りで事件が起きているのかがわかるだけでも犯人に繋がる手がかりになる。そして連続犯罪には犯人の嗜好性が現れるんだ』

 ノートに書き出された日付の4月のカレンダーを交互に見て早河は満足げに指を鳴らした。

『やっぱりこの事件にも法則性があるな。お前、事件の日付は書き出しても、曜日までは書いてなかっただろ』
『……あっ! 事件が全部火曜日と金曜日に起きてる』
『そう。4月3日は金曜、7日は火曜、10日はまた金曜。その後の事件発生日の14、17、21、24、お前が補導された28日もすべて火曜と金曜だ』

二人は顔を見合せた。矢野が口の端を上げて笑顔になる。

『事件は毎週火曜と金曜に起きている……すげぇ! 早河さんすげぇ!』
『お前が発生日だけじゃなく曜日も書いていればもっと早く気付けたことだ。ちなみに今日は金曜だな』

 卓上カレンダーをめくって5月のカレンダーになる。奇しくも今日は5月1日の金曜日。

『まさか今日も事件が……』
『起きてるかもな』

 ノックの音で矢野は慌てて開いていたノートを閉じた。扉を開けると頬を火照らした梨乃が顔を覗かせる。

「お風呂空いたよ」
『お、おお。サンキュー』
「どうしたの? 何か様子が変」

挙動不審な矢野の様子を梨乃は訝しむ。矢野は室内の早河を一瞥してからまた梨乃を見た。

『別に変じゃねぇよ! ちょっと早河さんと男同士の話をな……』
「……へぇ。いいねぇ、男同士は楽しそうで」

梨乃の眉間に刻まれたシワが深くなった気がした。言い訳をミスったと思った時にはもう遅い。

「早くお風呂入って寝なさいよ。くれぐれもうちの回線使って“いかがわしい”ビデオなんて観ないでね!」

 矢野の挙動不審の理由を誤解したまま梨乃は自室に行ってしまった。扉を閉めた彼は項垂れる。
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