早河シリーズ短編集【masquerade】
講師が教室に入ってきて現代文の授業がスタートする。刻々と流れる時間。理系に比べて文系の問題は解きやすく、事件について考察する余裕もあった。
例えば犯人が英明ゼミナールの生徒の可能性があることを警察が掴んでいるのか。この予備校に警察が捜査に来たことはあるのか。
先月に警察が西堀高校に来ていたことと集団暴行事件は関係があるのか。
(さすがに警察の情報は入ってこないよな。早河さんもまだ警察学校の生徒だから無理だし……)
警察関係は議員である伯父のコネを使う手もあるが、できればそれはしたくない。誰の力も借りずに自分の力で情報を獲ることに意味がある。
授業終了のチャイムが鳴ると同時に高木は机に突っ伏した。文系が苦手な高木は現代文の授業が相当堪えたらしい。
立ち上がった矢野が高木の肩を叩く。
『おーい。涼馬、生きてるかー?』
『高木涼馬はただいま天国への階段を登っております……』
『じゃあ早く降りて来い。置いていくぞ』
のそのそと立ち上がった高木と共に廊下に出る。帰り支度をする生徒と、席が空くのを教室の前で待つ生徒で廊下は埋め尽くされていた。
『まだこれから授業の奴もいるんだな』
『カリキュラムがみんな違うからな。体験の俺達は3時間だけど、生徒になると土曜日曜は6時間授業まであったりするってパンフレットに書いてあった』
『6時間って学校と一緒じゃん。俺は3時間だけで腹いっぱいご馳走さんだ。一輝はなんでそんなに平気そうなんだよ』
『俺も疲れてるって。ファミレスで何か食おうぜ』
疲れ果てた高木もファミレスの言葉には目を輝かせる。午後2時からの授業を3時間こなして今は午後5時、夕食には早くても小腹が空く頃合いだ。
『俺が受けた授業では怪しい人間って奴はいなかったなぁ。みんな絵に描いたガリ勉って感じ』
『一見して怪しい見た目の人間ばかりが悪さするものでもない。人間は裏の顔を上手く隠してるからな』
予備校の廊下や階段ですれ違う人々は、気の弱そうな女、いかにも優等生な男、髪を茶髪にした男もいた。茶髪の男は浪人生かもしれない。
犯罪とは無縁の風体をした人間が実は凶悪犯罪者だったなんてことも珍しくない。表と裏の顔を使い分け、裏の顔を上手く隠して生きている。
誰もが時と場合に応じてピエロになる。
それが、人間だ。
例えば犯人が英明ゼミナールの生徒の可能性があることを警察が掴んでいるのか。この予備校に警察が捜査に来たことはあるのか。
先月に警察が西堀高校に来ていたことと集団暴行事件は関係があるのか。
(さすがに警察の情報は入ってこないよな。早河さんもまだ警察学校の生徒だから無理だし……)
警察関係は議員である伯父のコネを使う手もあるが、できればそれはしたくない。誰の力も借りずに自分の力で情報を獲ることに意味がある。
授業終了のチャイムが鳴ると同時に高木は机に突っ伏した。文系が苦手な高木は現代文の授業が相当堪えたらしい。
立ち上がった矢野が高木の肩を叩く。
『おーい。涼馬、生きてるかー?』
『高木涼馬はただいま天国への階段を登っております……』
『じゃあ早く降りて来い。置いていくぞ』
のそのそと立ち上がった高木と共に廊下に出る。帰り支度をする生徒と、席が空くのを教室の前で待つ生徒で廊下は埋め尽くされていた。
『まだこれから授業の奴もいるんだな』
『カリキュラムがみんな違うからな。体験の俺達は3時間だけど、生徒になると土曜日曜は6時間授業まであったりするってパンフレットに書いてあった』
『6時間って学校と一緒じゃん。俺は3時間だけで腹いっぱいご馳走さんだ。一輝はなんでそんなに平気そうなんだよ』
『俺も疲れてるって。ファミレスで何か食おうぜ』
疲れ果てた高木もファミレスの言葉には目を輝かせる。午後2時からの授業を3時間こなして今は午後5時、夕食には早くても小腹が空く頃合いだ。
『俺が受けた授業では怪しい人間って奴はいなかったなぁ。みんな絵に描いたガリ勉って感じ』
『一見して怪しい見た目の人間ばかりが悪さするものでもない。人間は裏の顔を上手く隠してるからな』
予備校の廊下や階段ですれ違う人々は、気の弱そうな女、いかにも優等生な男、髪を茶髪にした男もいた。茶髪の男は浪人生かもしれない。
犯罪とは無縁の風体をした人間が実は凶悪犯罪者だったなんてことも珍しくない。表と裏の顔を使い分け、裏の顔を上手く隠して生きている。
誰もが時と場合に応じてピエロになる。
それが、人間だ。