早河シリーズ短編集【masquerade】
二台の自転車に乗る制服姿の二人の男はサドルに跨がったまま、英明ゼミナールから出てきた五人の男子高校生と話をしている。
『自転車が二台……あいつら全部で七人だ』
『涼馬、俺を後ろに隠せ』
『お、おう』
矢野は立ち上がった高木の背後に隠れてデジカメのレンズを七人組に向けた。画面をズームして自転車の二人を映す。
予備校の玄関前は側にある街灯とビルから漏れる明かりに照らされ、彼らの容姿を鮮明に捉えられた。
『自転車のカゴにケースに入ってる長い棒のような物がある』
『まさか犯行に使うバット?』
『かもな。写真何枚か撮っておこう』
カメラのシャッター音が少し気になったものの、道路を通り過ぎる車の走行音や街の音がシャッターの音を巧く掻き消してくれた。
矢野の予感は的中。七人組の中にはトイレですれ違った西堀高校のあの男子生徒もいる。
先ほどまで勉強に疲れてやる気を失くしていた高木も目の色を変えた。
『自転車の二人は予備校の生徒じゃないのか?』
『わからない。今日が授業の日じゃない生徒もいるだろうし……。犯行曜日の火曜金曜が犯人グループが揃う時だと思い込んでいたけど、違うみたいだ。現地集合なら最初からバットを予備校に持ち込む必要もない』
また高木の後ろに隠れてシャッターを切る。予備校の前で合流した七人組は田町駅とは反対方向に歩き出した。
『どうする? 後を追う? 奴ら、今日もやる気かも』
『もちろん追う。あいつらがターゲットを絞ったところを確認できたらすぐに110番する』
矢野はズボンのポケットから携帯電話を出して握り締める。この携帯電話は伯父に買い与えられた物だ。
(参考:DOCOMO movaP206/1998年3月発売)
『よし。行くぞ』
反対側の道から七人を追う。気付かれないように、でも見失わないギリギリの距離感を保って彼らを尾行した。
『あの西堀の制服着てる奴とさっきトイレですれ違った』
『まじかよ。あの背が低くて気の弱そうな奴? 一輝のこと気付いたかな?』
『俺はブレザーのジャケット脱いでネクタイも外してたから、あっちは俺が西堀の生徒だとわからなかったんじゃないかと思う。見たことない顔だった』
矢野と高木のひそひそ話も七人組には聞こえない。
高校生七人は入店したコンビニを数分で出て、駐車スペースを陣取って大きな声で立ち話をしている。車止めのブロックに腰掛けているのは例の西堀高校の生徒だ。
二台の自転車は自転車置き場ではないスペースに堂々と置かれていた。あれではコンビニに出入りする人の邪魔になる。
矢野達はコンビニのある通りの反対側で彼らを見張った。
『勉強ができて偏差値高い大学に入ったとしても、人のこと考えられない大人になれば終わりだな。ああいう奴らが日本の中心を牛耳れば世も末だ』
コンビニを訪れる客のことをまるで考えない七人組に高木は呆れ、矢野も高木と同じ気持ちだった。
成績が良くても、一流大学、一流企業に所属できたとしても、他者への思いやりや配慮ができなければ意味がない。
しかしそんな人として当然の優しさを忘れてしまったまま大人になった人間が大勢いることもまた、事実だった。
『自転車が二台……あいつら全部で七人だ』
『涼馬、俺を後ろに隠せ』
『お、おう』
矢野は立ち上がった高木の背後に隠れてデジカメのレンズを七人組に向けた。画面をズームして自転車の二人を映す。
予備校の玄関前は側にある街灯とビルから漏れる明かりに照らされ、彼らの容姿を鮮明に捉えられた。
『自転車のカゴにケースに入ってる長い棒のような物がある』
『まさか犯行に使うバット?』
『かもな。写真何枚か撮っておこう』
カメラのシャッター音が少し気になったものの、道路を通り過ぎる車の走行音や街の音がシャッターの音を巧く掻き消してくれた。
矢野の予感は的中。七人組の中にはトイレですれ違った西堀高校のあの男子生徒もいる。
先ほどまで勉強に疲れてやる気を失くしていた高木も目の色を変えた。
『自転車の二人は予備校の生徒じゃないのか?』
『わからない。今日が授業の日じゃない生徒もいるだろうし……。犯行曜日の火曜金曜が犯人グループが揃う時だと思い込んでいたけど、違うみたいだ。現地集合なら最初からバットを予備校に持ち込む必要もない』
また高木の後ろに隠れてシャッターを切る。予備校の前で合流した七人組は田町駅とは反対方向に歩き出した。
『どうする? 後を追う? 奴ら、今日もやる気かも』
『もちろん追う。あいつらがターゲットを絞ったところを確認できたらすぐに110番する』
矢野はズボンのポケットから携帯電話を出して握り締める。この携帯電話は伯父に買い与えられた物だ。
(参考:DOCOMO movaP206/1998年3月発売)
『よし。行くぞ』
反対側の道から七人を追う。気付かれないように、でも見失わないギリギリの距離感を保って彼らを尾行した。
『あの西堀の制服着てる奴とさっきトイレですれ違った』
『まじかよ。あの背が低くて気の弱そうな奴? 一輝のこと気付いたかな?』
『俺はブレザーのジャケット脱いでネクタイも外してたから、あっちは俺が西堀の生徒だとわからなかったんじゃないかと思う。見たことない顔だった』
矢野と高木のひそひそ話も七人組には聞こえない。
高校生七人は入店したコンビニを数分で出て、駐車スペースを陣取って大きな声で立ち話をしている。車止めのブロックに腰掛けているのは例の西堀高校の生徒だ。
二台の自転車は自転車置き場ではないスペースに堂々と置かれていた。あれではコンビニに出入りする人の邪魔になる。
矢野達はコンビニのある通りの反対側で彼らを見張った。
『勉強ができて偏差値高い大学に入ったとしても、人のこと考えられない大人になれば終わりだな。ああいう奴らが日本の中心を牛耳れば世も末だ』
コンビニを訪れる客のことをまるで考えない七人組に高木は呆れ、矢野も高木と同じ気持ちだった。
成績が良くても、一流大学、一流企業に所属できたとしても、他者への思いやりや配慮ができなければ意味がない。
しかしそんな人として当然の優しさを忘れてしまったまま大人になった人間が大勢いることもまた、事実だった。