早河シリーズ短編集【masquerade】
不愉快で胸糞悪い光景に怒りでシャッターを押す手が震える。
『あー……もう。こうなればやけくそだ』
矢野はジャケットを脱ぎ捨て、カバンもその場に置いて走った。
『止めろっ!』
七人に突進する勢いで彼らを突飛ばし、口や手から血を流す男性を庇って前に立つ。
『なんだお前!』
『警察呼んだからな! もうすぐここに来るぞ』
警察の名前に彼らは怯んだ。殴られた男性は目に涙を溜め、顔は血だらけだ。
『こんな酷いことがよくできるな』
『関係ないだろっ』
振り下ろされたバットを矢野は素手で掴んだ。動体視力は昔から良い。早河に指導してもらって身につけた護身術もある。
『関係あるんだよ! 俺はお前らのおかげで犯人と間違えられたんだからな』
反動をつけて掴んだバットを相手に向けて跳ね返す。バットを跳ね返された弾みで後ろに大きく仰け反った高校生は、不安定な足元に耐えられずに尻餅をついた。
『君達……っ! 何してる!』
懐中電灯の明かりが矢野達を照らす。七人組は舌打ちをしてそれぞれ自転車に飛び乗り、自転車に乗っていない者は全速力で走って逃げようとした。
逃げる彼らを追いかける警官達。トンネル内は大勢の人間の足音で物凄い地響きだ。
到着したパトカーから警官が降りてきた。矢野は座り込む男性の顔の傷に自分のハンカチを当てて警官を見上げる。
『大丈夫ですか?』
『俺は大丈夫です。この人を早く手当てしてあげてください』
被害者の男性を警官に引き渡す時、矢野は無意識に男性にすみませんと謝った。
どうして助けに入った矢野が謝るのか男性にはわからなかったようだが、怪我が酷く会話ができる状態ではない彼は、矢野に謝罪の意味を問わなかった。
謝罪の意味は矢野だけが知っている。証拠の写真を撮るためでも男性に怪我をさせてしまった。本当は犯行を犯す直前で彼らを止めて男性を助けるべきだったのに。
『一輝!』
電柱の下に置いてきた矢野のジャケットと荷物を抱えた高木が走ってくる。
『奴らは? パトカーいるからついに捕まえた?』
『警官が追いかけて行ったけど……どうだろうな』
体に当たる寸前でバットを掴んだ右手はわずかに赤くなって痺《しび》れていた。
『あー……もう。こうなればやけくそだ』
矢野はジャケットを脱ぎ捨て、カバンもその場に置いて走った。
『止めろっ!』
七人に突進する勢いで彼らを突飛ばし、口や手から血を流す男性を庇って前に立つ。
『なんだお前!』
『警察呼んだからな! もうすぐここに来るぞ』
警察の名前に彼らは怯んだ。殴られた男性は目に涙を溜め、顔は血だらけだ。
『こんな酷いことがよくできるな』
『関係ないだろっ』
振り下ろされたバットを矢野は素手で掴んだ。動体視力は昔から良い。早河に指導してもらって身につけた護身術もある。
『関係あるんだよ! 俺はお前らのおかげで犯人と間違えられたんだからな』
反動をつけて掴んだバットを相手に向けて跳ね返す。バットを跳ね返された弾みで後ろに大きく仰け反った高校生は、不安定な足元に耐えられずに尻餅をついた。
『君達……っ! 何してる!』
懐中電灯の明かりが矢野達を照らす。七人組は舌打ちをしてそれぞれ自転車に飛び乗り、自転車に乗っていない者は全速力で走って逃げようとした。
逃げる彼らを追いかける警官達。トンネル内は大勢の人間の足音で物凄い地響きだ。
到着したパトカーから警官が降りてきた。矢野は座り込む男性の顔の傷に自分のハンカチを当てて警官を見上げる。
『大丈夫ですか?』
『俺は大丈夫です。この人を早く手当てしてあげてください』
被害者の男性を警官に引き渡す時、矢野は無意識に男性にすみませんと謝った。
どうして助けに入った矢野が謝るのか男性にはわからなかったようだが、怪我が酷く会話ができる状態ではない彼は、矢野に謝罪の意味を問わなかった。
謝罪の意味は矢野だけが知っている。証拠の写真を撮るためでも男性に怪我をさせてしまった。本当は犯行を犯す直前で彼らを止めて男性を助けるべきだったのに。
『一輝!』
電柱の下に置いてきた矢野のジャケットと荷物を抱えた高木が走ってくる。
『奴らは? パトカーいるからついに捕まえた?』
『警官が追いかけて行ったけど……どうだろうな』
体に当たる寸前でバットを掴んだ右手はわずかに赤くなって痺《しび》れていた。