早河シリーズ短編集【masquerade】
“彼”は他の六人からはツルと呼ばれていた。ツルが彼の本名なのかアダ名かはまだわからない。
高木をコンビニに行かせたのはその場の思いつきだったがなんでもやってみるものだ。
『お前何か善からぬことに首突っ込んでんじゃないだろうな? 一応、議員センセのお坊ちゃんなんだからあまり無茶なことやると伯父さんに迷惑かかるぞ』
『伯父さんの許可はもらってるから大丈夫。好きなようにやれってさ』
『武田議員も物好きだなぁ。ホレ、これで全部だ。持っていけ』
『ありがとうございまーす』
三学年のクラスごとの学級写真をカバンに入れて矢野は指導室を出た。もうすぐ始業のチャイムが鳴る時間だ。
矢野は高木とは別のクラスだ。2年生の自分のクラスの席に座り、学級写真を机に広げた。まず自分の学年から見ていくことにしよう。
矢野の目的はグループのリーダー、〈ツル〉を捜し出すこと。
西堀高校は全学年8クラス。ひとつのクラスの人数は40人前後で男子生徒は20人弱。
自分のクラスの2年4組にツルがいないのは確定している。高木もツルに見覚えはないと言っていたから、高木のクラスの2年2組も除外。
昨夜デジカメで撮った犯人グループの写真とクラス写真を見比べる。2組と4組は除外してあっても、残りの6クラスの男子生徒の顔を集団写真で確認していく作業は骨が折れる。
始業のホームルームも授業中も、机の下でこっそり作業を行い、1限、2限が過ぎた。
『矢野ー。何してるんだ?』
2限終了の休憩時間に矢野の前の席に座る友人の今泉が矢野の手元を覗き込んだ。
ようやく最後の8組だ。2組と4組を除いたこれまでのクラスにツルはいなかった。矢野は凝った肩と首を回して溜息をつく。
『人捜し』
『人捜しぃ?』
『ツルって呼ばれてる生徒を捜してるんだ』
『ツルって、何それアダ名?』
『アダ名かもしれないし、苗字や名前の一部かもしれない』
早弁のおにぎりを咀嚼しながら考え込む今泉を一瞥して、矢野は2年8組の確認作業に入った。デジカメの写真を見過ぎたおかげでツルの風貌はすっかり目に焼き付いている。
ツルは犯人グループの中でも最も背が低い。英明ゼミナールのトイレですれ違った時も矢野の身長より10㎝は低く感じた。
おそらくツルの身長は推定で165㎝程度だ。
色白の肌に細面の中性的な顔立ちは生真面目で弱々しい印象を受ける。その彼が犯人グループのリーダー格である事実は、やはり人は見かけによらないことを実感させる。
男子生徒と女子生徒が名簿番号順に整列している8組の学級写真を凝視した。前列の生徒は椅子に座り、後列は雛壇に並んでいる。
前列からひとりひとり顔の確認を行い、中央の列に目を留めた時に矢野は大きく息を吸った。
『いたっ!』
『いたって捜してた奴?』
今泉に答える余裕も今はない。矢野はもう一度デジカメの写真を出して犯人グループのツルと学級写真の男子生徒を見比べた。
高木をコンビニに行かせたのはその場の思いつきだったがなんでもやってみるものだ。
『お前何か善からぬことに首突っ込んでんじゃないだろうな? 一応、議員センセのお坊ちゃんなんだからあまり無茶なことやると伯父さんに迷惑かかるぞ』
『伯父さんの許可はもらってるから大丈夫。好きなようにやれってさ』
『武田議員も物好きだなぁ。ホレ、これで全部だ。持っていけ』
『ありがとうございまーす』
三学年のクラスごとの学級写真をカバンに入れて矢野は指導室を出た。もうすぐ始業のチャイムが鳴る時間だ。
矢野は高木とは別のクラスだ。2年生の自分のクラスの席に座り、学級写真を机に広げた。まず自分の学年から見ていくことにしよう。
矢野の目的はグループのリーダー、〈ツル〉を捜し出すこと。
西堀高校は全学年8クラス。ひとつのクラスの人数は40人前後で男子生徒は20人弱。
自分のクラスの2年4組にツルがいないのは確定している。高木もツルに見覚えはないと言っていたから、高木のクラスの2年2組も除外。
昨夜デジカメで撮った犯人グループの写真とクラス写真を見比べる。2組と4組は除外してあっても、残りの6クラスの男子生徒の顔を集団写真で確認していく作業は骨が折れる。
始業のホームルームも授業中も、机の下でこっそり作業を行い、1限、2限が過ぎた。
『矢野ー。何してるんだ?』
2限終了の休憩時間に矢野の前の席に座る友人の今泉が矢野の手元を覗き込んだ。
ようやく最後の8組だ。2組と4組を除いたこれまでのクラスにツルはいなかった。矢野は凝った肩と首を回して溜息をつく。
『人捜し』
『人捜しぃ?』
『ツルって呼ばれてる生徒を捜してるんだ』
『ツルって、何それアダ名?』
『アダ名かもしれないし、苗字や名前の一部かもしれない』
早弁のおにぎりを咀嚼しながら考え込む今泉を一瞥して、矢野は2年8組の確認作業に入った。デジカメの写真を見過ぎたおかげでツルの風貌はすっかり目に焼き付いている。
ツルは犯人グループの中でも最も背が低い。英明ゼミナールのトイレですれ違った時も矢野の身長より10㎝は低く感じた。
おそらくツルの身長は推定で165㎝程度だ。
色白の肌に細面の中性的な顔立ちは生真面目で弱々しい印象を受ける。その彼が犯人グループのリーダー格である事実は、やはり人は見かけによらないことを実感させる。
男子生徒と女子生徒が名簿番号順に整列している8組の学級写真を凝視した。前列の生徒は椅子に座り、後列は雛壇に並んでいる。
前列からひとりひとり顔の確認を行い、中央の列に目を留めた時に矢野は大きく息を吸った。
『いたっ!』
『いたって捜してた奴?』
今泉に答える余裕も今はない。矢野はもう一度デジカメの写真を出して犯人グループのツルと学級写真の男子生徒を見比べた。