早河シリーズ完結編【魔術師】
『なぎさ!』
息を切らして早河が階段を上がってきた。彼の服に付着した土や顔のかすり傷に格闘の跡が窺える。
「大西さんは?」
『表であいつらを見張ってる。それより大丈夫だったか?』
「うん。催涙スプレー使ったからなんとか……」
まだ女は痛みに悶え苦しんでいる。早河は女を一瞥した後、扉に目を向けた。
『真愛はこの部屋に?』
「そうみたい。でも鍵がかかってるの。どうしよう」
泣きそうな顔のなぎさの肩にそっと手を置く。扉を隔てたそこに真愛がいるのに会えないもどかしさは、早河も同じだ。
彼は手すりに繋がれている女に近付いた。
『部屋の鍵はどこだ?』
女は答えない。だが、女がつけているエプロンのポケットの膨らみを早河は見逃さなかった。
近付く早河に女は手足をバタつかせて精一杯の抵抗を見せるが、早河はポケットから鍵束を回収した。
キーリングについている鍵は全部で七本。扉の鍵穴の形状や大きさを考えると七本中、三本は除外できる。
『真愛! パパが今開けてやるからな。待ってろよ』
「パパー!」
扉の向こうに真愛が待っている。早河は四本の鍵をひとつひとつ鍵穴に差し込む。
最初の一本目も次も入らない。焦る気持ちを落ち着かせて三本目の鍵を差し込んだ。
『よし。開いた』
ロック解除の手応えがある。回るドアノブを押し開けて早河達は部屋に踏み込んだ。
「パパ! ママ!」
カーペットの上に寝そべる真愛が満面の笑みで迎えてくれる。真愛の隣には美月の息子の斗真もいた。
早河となぎさは一目散に子ども達に駆け寄って、二人の子どもを両手で抱き締めた。
「真愛……斗真くん……無事で良かった」
数日ぶりに肌で感じる我が子のぬくもりに涙が頬を伝う。真愛も斗真も家族と離れて、こんなに小さな身体でどれだけ怖い思いをしたことか。
「ママぁ……」
手足を縛るロープをほどかれて真愛が泣き出した。斗真もぐずくずと鼻を鳴らして涙ぐんでいるが、真愛ほど大泣きはしていない。
真愛の頭を斗真が優しく撫でた。
「斗真くんの方がお兄ちゃんみたいだね」
「違うもんっ! 真愛が、いっぱい、いっぱい、おねえちゃんしてあげたんだからぁあっ!」
年下の斗真に慰められる形になったことが不満らしく、真愛はムキになってさらに泣いた。
早河となぎさはしゃくりあげて泣く真愛が愛しくて、真愛の溢れる大粒の涙をなぎさがハンカチで拭いてやる。
『真愛……ごめんな』
早河は屈んで真愛と目線の高さを合わせる。真愛は泣き腫らした目元にハンカチを当てて首を傾げた。
「なんで、パパがごめんなさいするの?」
『うん。なんでだろうな……』
早河の娘として生まれたが故に、真愛は危険と隣り合わせの宿命を背負った。自分のせいで真愛を危険に晒してしまった。
「パパは悪くないよ。だってパパはヒーローだもん。パパは世界一強い“たんていさん”なの。真愛達を助けてくれるって思ってたよ。パパ、ありがとお!」
娘からありがとうなんて言われると思わなかった。どれだけ謝っても償いきれない思いも、真愛の笑顔とありがとうの言葉で救われる。
息を切らして早河が階段を上がってきた。彼の服に付着した土や顔のかすり傷に格闘の跡が窺える。
「大西さんは?」
『表であいつらを見張ってる。それより大丈夫だったか?』
「うん。催涙スプレー使ったからなんとか……」
まだ女は痛みに悶え苦しんでいる。早河は女を一瞥した後、扉に目を向けた。
『真愛はこの部屋に?』
「そうみたい。でも鍵がかかってるの。どうしよう」
泣きそうな顔のなぎさの肩にそっと手を置く。扉を隔てたそこに真愛がいるのに会えないもどかしさは、早河も同じだ。
彼は手すりに繋がれている女に近付いた。
『部屋の鍵はどこだ?』
女は答えない。だが、女がつけているエプロンのポケットの膨らみを早河は見逃さなかった。
近付く早河に女は手足をバタつかせて精一杯の抵抗を見せるが、早河はポケットから鍵束を回収した。
キーリングについている鍵は全部で七本。扉の鍵穴の形状や大きさを考えると七本中、三本は除外できる。
『真愛! パパが今開けてやるからな。待ってろよ』
「パパー!」
扉の向こうに真愛が待っている。早河は四本の鍵をひとつひとつ鍵穴に差し込む。
最初の一本目も次も入らない。焦る気持ちを落ち着かせて三本目の鍵を差し込んだ。
『よし。開いた』
ロック解除の手応えがある。回るドアノブを押し開けて早河達は部屋に踏み込んだ。
「パパ! ママ!」
カーペットの上に寝そべる真愛が満面の笑みで迎えてくれる。真愛の隣には美月の息子の斗真もいた。
早河となぎさは一目散に子ども達に駆け寄って、二人の子どもを両手で抱き締めた。
「真愛……斗真くん……無事で良かった」
数日ぶりに肌で感じる我が子のぬくもりに涙が頬を伝う。真愛も斗真も家族と離れて、こんなに小さな身体でどれだけ怖い思いをしたことか。
「ママぁ……」
手足を縛るロープをほどかれて真愛が泣き出した。斗真もぐずくずと鼻を鳴らして涙ぐんでいるが、真愛ほど大泣きはしていない。
真愛の頭を斗真が優しく撫でた。
「斗真くんの方がお兄ちゃんみたいだね」
「違うもんっ! 真愛が、いっぱい、いっぱい、おねえちゃんしてあげたんだからぁあっ!」
年下の斗真に慰められる形になったことが不満らしく、真愛はムキになってさらに泣いた。
早河となぎさはしゃくりあげて泣く真愛が愛しくて、真愛の溢れる大粒の涙をなぎさがハンカチで拭いてやる。
『真愛……ごめんな』
早河は屈んで真愛と目線の高さを合わせる。真愛は泣き腫らした目元にハンカチを当てて首を傾げた。
「なんで、パパがごめんなさいするの?」
『うん。なんでだろうな……』
早河の娘として生まれたが故に、真愛は危険と隣り合わせの宿命を背負った。自分のせいで真愛を危険に晒してしまった。
「パパは悪くないよ。だってパパはヒーローだもん。パパは世界一強い“たんていさん”なの。真愛達を助けてくれるって思ってたよ。パパ、ありがとお!」
娘からありがとうなんて言われると思わなかった。どれだけ謝っても償いきれない思いも、真愛の笑顔とありがとうの言葉で救われる。