早河シリーズ完結編【魔術師】
抱き締めた真愛の身体は小さくて温かくて、守るべき命の存在をいっそう実感した。
『ここにいる間に誰に会ったか、パパに教えてくれるか?』
「えっとね、目がギロッとしたゴリラの男の人と、保育園の野本先生に似てるキリンの女の人」
目がギロッとしたゴリラの男とは、おそらく表で大西に拘束されているアーサーレイノルズか、もうひとりのアメリカ人のどちらか。
野本先生に似ているキリンの女は、なぎさが催涙スプレーを吹き掛けた女だ。
真愛は人差し指を顎に当てて、あっ! と声を上げた。
「あとね、いい匂いのおじさん」
『いい匂い?』
「お花みたいな匂いのするおじさんだった。嘘つきなのに優しいおじさん。“ほっかいどう”にいる、ママのお友達のリオちゃんのお話をしたの」
早河となぎさは顔を見合わせた。北海道には寺沢莉央の墓があるが、そのことを知る人間は限られている。
サイレンの音が聞こえた。大西が手配した神奈川県警の刑事達の到着だ。
刑事達が屋敷内を慌ただしく出入りする。アメリカ人の二人と若い女はパトカーに乗せられ連行された。
山道には救急車も停まっている。早河に抱き上げられて救急車に乗せられた真愛は、救急車の外に立つ早河に手を差し伸べた。
「パパは乗らないの?」
『パパはまだ仕事があるんだ。ママと一緒にいなさい』
差し伸べられた真愛の手を握り返して優しく離す。子ども達に目立った外傷はないものの、念のため病院で検査が必要だ。
付き添いのなぎさと子ども達を乗せた救急車を見送る早河の隣に大西が並んだ。
大西は屋敷から回収した真愛のランドセルを持っている。彼はそれを早河に渡した。
『屋敷はもぬけの殻。連行した三人以外は誰もいなかった。病院から消えた木村美月の姿もない』
『そうか』
『お前、貴嶋がここにいないってわかってたのか?』
『薄々は。貴嶋がここにいないなら、木村美月もいないだろうな。だが、貴嶋は一度はここに来ている。真愛が会った男は間違いなく貴嶋だ』
『寺沢莉央の話をしたってことはそうなるよな。で、お前はさっきから何してる?』
早河は真愛のランドセルの中身を探っている。小学1年生の教科書やノート、ペンケースをすべて出して、中身が空になったランドセルを覗いた早河はかぶりを振った。
『真愛の携帯がなくなってる。子ども用の携帯は家から発見できてないよな?』
『ああ。押収品の中に子ども用の携帯電話はなかったな。どっかに捨てたんじゃないか? 万一、電源が入ればGPSで居場所が特定されちまうし』
『ランドセルは捨てずにここまで持ってきてるのに?』
外に出た教科書達は早河の手で丁寧にランドセルに戻された。真愛のピンク色のランドセルを見て大西は唸る。
『ひったくりでも金を抜いたら財布やカバンはポイ捨てするよなぁ。ランドセルがここにあって、中に入ってた携帯がないのは変だな』
『真愛の携帯を持ち去ったのは貴嶋だ』
『でも何のために?』
『……さぁな』
現在時刻は15時。そろそろ東京でも動きがある頃合いだった。
『ここにいる間に誰に会ったか、パパに教えてくれるか?』
「えっとね、目がギロッとしたゴリラの男の人と、保育園の野本先生に似てるキリンの女の人」
目がギロッとしたゴリラの男とは、おそらく表で大西に拘束されているアーサーレイノルズか、もうひとりのアメリカ人のどちらか。
野本先生に似ているキリンの女は、なぎさが催涙スプレーを吹き掛けた女だ。
真愛は人差し指を顎に当てて、あっ! と声を上げた。
「あとね、いい匂いのおじさん」
『いい匂い?』
「お花みたいな匂いのするおじさんだった。嘘つきなのに優しいおじさん。“ほっかいどう”にいる、ママのお友達のリオちゃんのお話をしたの」
早河となぎさは顔を見合わせた。北海道には寺沢莉央の墓があるが、そのことを知る人間は限られている。
サイレンの音が聞こえた。大西が手配した神奈川県警の刑事達の到着だ。
刑事達が屋敷内を慌ただしく出入りする。アメリカ人の二人と若い女はパトカーに乗せられ連行された。
山道には救急車も停まっている。早河に抱き上げられて救急車に乗せられた真愛は、救急車の外に立つ早河に手を差し伸べた。
「パパは乗らないの?」
『パパはまだ仕事があるんだ。ママと一緒にいなさい』
差し伸べられた真愛の手を握り返して優しく離す。子ども達に目立った外傷はないものの、念のため病院で検査が必要だ。
付き添いのなぎさと子ども達を乗せた救急車を見送る早河の隣に大西が並んだ。
大西は屋敷から回収した真愛のランドセルを持っている。彼はそれを早河に渡した。
『屋敷はもぬけの殻。連行した三人以外は誰もいなかった。病院から消えた木村美月の姿もない』
『そうか』
『お前、貴嶋がここにいないってわかってたのか?』
『薄々は。貴嶋がここにいないなら、木村美月もいないだろうな。だが、貴嶋は一度はここに来ている。真愛が会った男は間違いなく貴嶋だ』
『寺沢莉央の話をしたってことはそうなるよな。で、お前はさっきから何してる?』
早河は真愛のランドセルの中身を探っている。小学1年生の教科書やノート、ペンケースをすべて出して、中身が空になったランドセルを覗いた早河はかぶりを振った。
『真愛の携帯がなくなってる。子ども用の携帯は家から発見できてないよな?』
『ああ。押収品の中に子ども用の携帯電話はなかったな。どっかに捨てたんじゃないか? 万一、電源が入ればGPSで居場所が特定されちまうし』
『ランドセルは捨てずにここまで持ってきてるのに?』
外に出た教科書達は早河の手で丁寧にランドセルに戻された。真愛のピンク色のランドセルを見て大西は唸る。
『ひったくりでも金を抜いたら財布やカバンはポイ捨てするよなぁ。ランドセルがここにあって、中に入ってた携帯がないのは変だな』
『真愛の携帯を持ち去ったのは貴嶋だ』
『でも何のために?』
『……さぁな』
現在時刻は15時。そろそろ東京でも動きがある頃合いだった。