早河シリーズ完結編【魔術師】
東中野小学校に連絡をしても延々と呼び出し音が続くばかりで誰も電話に出ない。彼は舌打ちして小学校まで車を飛ばした。
学校の正門前にはパトカーが一台停まっていた。学校で不測の事態があったのは間違いなさそうだ。
生徒が登校した後の静まり返る門扉の前には、制服姿の警官が一人立っていた。学校の敷地に入ろうとする早河の前に警官が立ち塞がる。
『関係者以外の立ち入りはご遠慮ください』
『娘がこの学校の生徒だ。連絡があって体調が悪いようだから迎えに来た。中に入れてくれ』
『あなたのお名前とお嬢さんの学年と名前は?』
『早河仁、娘の名前は早河真愛、2年生だ』
こちらに不審な眼差しを向ける警官に苛立った。早河にも刑事だった頃がある。
事件現場に関係者以外の立ち入りをさせない、まず身元確認をとる、警察官のマニュアルとしては正解だ。
だが警察官の立場を離れた今は、そのマニュアル通りな態度が気に入らない。早河が警察事情をわきまえている元刑事だから我慢できても、民間人ならば早く通せと怒鳴り散らしているだろう。
警官が無線で校内にいる上司に指示を仰いでいる。苛立ちながら腕組みをして待っていると『早河さん』と名を呼ぶ声がした。
すらりとした体躯に馬のような顔の男が校内からこちらに歩いて来る。真愛の影響で人を動物に例える癖がついてしまった早河には、彼は馬にしか見えない。
『黒田か?』
『お久しぶりです』
馬に似た男は早河に会釈して警察手帳を掲げた。彼の名は黒田。早河が新宿西警察署にいた頃の2年後輩の刑事だ。
『今は中野警察署にいるのか』
『ええ、生活安全課に。ここの学校、早河さんの娘さんが通われている学校でしたか。ああ、この人は昔刑事だったんだ。俺の先輩だから通して構わないよ』
黒田の指示に従順な警官は、早河が元刑事と聞いて敬礼してきた。早河も目礼を返して黒田と連れ立って校内に入る。
『うさぎが腹を切られて死んでたって娘から連絡があったんだ』
『大人が何が起きたか必死で隠していても、子ども達には伝わってしまうものですね。確かに小屋の中でうさぎが死んでいました。全部じゃないですが、数匹が腹を切られて』
『気が滅入ることをやらかす奴がいるものだ。とにかく俺は娘の様子を見てくる』
黒田と下駄箱の前で別れて校舎に入った。どうやら今は自習時間らしい。
大人しく自習をしているクラスもあれば、高学年の男子生徒達は廊下で紙飛行機を飛ばして遊んでいる。
学校の正門前にはパトカーが一台停まっていた。学校で不測の事態があったのは間違いなさそうだ。
生徒が登校した後の静まり返る門扉の前には、制服姿の警官が一人立っていた。学校の敷地に入ろうとする早河の前に警官が立ち塞がる。
『関係者以外の立ち入りはご遠慮ください』
『娘がこの学校の生徒だ。連絡があって体調が悪いようだから迎えに来た。中に入れてくれ』
『あなたのお名前とお嬢さんの学年と名前は?』
『早河仁、娘の名前は早河真愛、2年生だ』
こちらに不審な眼差しを向ける警官に苛立った。早河にも刑事だった頃がある。
事件現場に関係者以外の立ち入りをさせない、まず身元確認をとる、警察官のマニュアルとしては正解だ。
だが警察官の立場を離れた今は、そのマニュアル通りな態度が気に入らない。早河が警察事情をわきまえている元刑事だから我慢できても、民間人ならば早く通せと怒鳴り散らしているだろう。
警官が無線で校内にいる上司に指示を仰いでいる。苛立ちながら腕組みをして待っていると『早河さん』と名を呼ぶ声がした。
すらりとした体躯に馬のような顔の男が校内からこちらに歩いて来る。真愛の影響で人を動物に例える癖がついてしまった早河には、彼は馬にしか見えない。
『黒田か?』
『お久しぶりです』
馬に似た男は早河に会釈して警察手帳を掲げた。彼の名は黒田。早河が新宿西警察署にいた頃の2年後輩の刑事だ。
『今は中野警察署にいるのか』
『ええ、生活安全課に。ここの学校、早河さんの娘さんが通われている学校でしたか。ああ、この人は昔刑事だったんだ。俺の先輩だから通して構わないよ』
黒田の指示に従順な警官は、早河が元刑事と聞いて敬礼してきた。早河も目礼を返して黒田と連れ立って校内に入る。
『うさぎが腹を切られて死んでたって娘から連絡があったんだ』
『大人が何が起きたか必死で隠していても、子ども達には伝わってしまうものですね。確かに小屋の中でうさぎが死んでいました。全部じゃないですが、数匹が腹を切られて』
『気が滅入ることをやらかす奴がいるものだ。とにかく俺は娘の様子を見てくる』
黒田と下駄箱の前で別れて校舎に入った。どうやら今は自習時間らしい。
大人しく自習をしているクラスもあれば、高学年の男子生徒達は廊下で紙飛行機を飛ばして遊んでいる。