早河シリーズ完結編【魔術師】
早河は娘の頭を撫でて笑いかける。真愛の必死な依頼を断れるはずがない。
『わかった。真愛の依頼、パパが引き受けた。パパが犯人見つけて捕まえてやる』
うさぎ殺しの捜査責任者は幸いにも後輩の黒田だ。黒田ならば、ある程度の融通は利く。
早河は真愛を保健室に残して明美と廊下に出た。小さな依頼人の依頼を遂行するには、まず現場を見なくてはならない。
「まさか真愛ちゃんが早河さんにお仕事の依頼をするなんて驚きました」
『俺も思いもしませんでしたよ。依頼料は真愛の肩叩き券でも請求します』
明美の案内で事件現場のうさぎ小屋に向かう。二人は校舎を出てグラウンド沿いの小道を進んだ。
「あそこがうさぎ小屋です」
明美は右手を出そうとしたが何故かその手を途中で引っ込めて、左手で小屋を指差した。うさぎ小屋の周りは立ち入り禁止を意味する規制線の黄色いテープで囲われている。
『憂鬱な話になりますが、先生はうさぎが死んだ現場をご覧になりましたか?』
「……はい。あの、朝にうさぎが死んでいるのを発見したのは用務員さんなんです。私は今日は朝当番だったのでいつもより早めに学校に来ていたんですけど、うさぎが死んでいると用務員さんが知らせに来て」
明美はさらに顔を下に伏せた。日時計の前では茶色い枯れ葉が虚しく宙を待っている。
『それで用務員の方とうさぎ小屋に?』
「ええ。うさぎが小屋の中で血を流して倒れていました」
『小屋の鍵の管理はどうしています?』
「職員室で保管しています。今は警察の方に鍵を預けています」
飼育小屋の鍵は職員室で保管。学校の人間なら誰もが鍵の在り処《か》を知っている。
『ここで結構ですよ。お忙しい中、案内ありがとうございました』
早河は規制線のテープの前で明美を返した。眼鏡が違う以外に明美に変わった点はないと思っていたが、以前の明美はもっと明るい印象があった。
今日の彼女はうさぎの死体を見たことも影響してか、顔色は冴えない。早河とも目を合わせようとしない。
トレードマークの赤い眼鏡がある方が明美はハツラツとできるのかもしれない。
小道を引き返す明美の後ろ姿を見送り、早河は規制線の黄色いテープを潜った。見張りの警官に咎められたが、現場の前で黒田刑事が片手を挙げている。
『娘さんの具合どうでした?』
『今は落ち着いてる。次の授業には出るって言ってた』
早河は現場となった飼育小屋の周囲を見渡した。向かって右側がニワトリ小屋、左側がうさぎ小屋。
『わかった。真愛の依頼、パパが引き受けた。パパが犯人見つけて捕まえてやる』
うさぎ殺しの捜査責任者は幸いにも後輩の黒田だ。黒田ならば、ある程度の融通は利く。
早河は真愛を保健室に残して明美と廊下に出た。小さな依頼人の依頼を遂行するには、まず現場を見なくてはならない。
「まさか真愛ちゃんが早河さんにお仕事の依頼をするなんて驚きました」
『俺も思いもしませんでしたよ。依頼料は真愛の肩叩き券でも請求します』
明美の案内で事件現場のうさぎ小屋に向かう。二人は校舎を出てグラウンド沿いの小道を進んだ。
「あそこがうさぎ小屋です」
明美は右手を出そうとしたが何故かその手を途中で引っ込めて、左手で小屋を指差した。うさぎ小屋の周りは立ち入り禁止を意味する規制線の黄色いテープで囲われている。
『憂鬱な話になりますが、先生はうさぎが死んだ現場をご覧になりましたか?』
「……はい。あの、朝にうさぎが死んでいるのを発見したのは用務員さんなんです。私は今日は朝当番だったのでいつもより早めに学校に来ていたんですけど、うさぎが死んでいると用務員さんが知らせに来て」
明美はさらに顔を下に伏せた。日時計の前では茶色い枯れ葉が虚しく宙を待っている。
『それで用務員の方とうさぎ小屋に?』
「ええ。うさぎが小屋の中で血を流して倒れていました」
『小屋の鍵の管理はどうしています?』
「職員室で保管しています。今は警察の方に鍵を預けています」
飼育小屋の鍵は職員室で保管。学校の人間なら誰もが鍵の在り処《か》を知っている。
『ここで結構ですよ。お忙しい中、案内ありがとうございました』
早河は規制線のテープの前で明美を返した。眼鏡が違う以外に明美に変わった点はないと思っていたが、以前の明美はもっと明るい印象があった。
今日の彼女はうさぎの死体を見たことも影響してか、顔色は冴えない。早河とも目を合わせようとしない。
トレードマークの赤い眼鏡がある方が明美はハツラツとできるのかもしれない。
小道を引き返す明美の後ろ姿を見送り、早河は規制線の黄色いテープを潜った。見張りの警官に咎められたが、現場の前で黒田刑事が片手を挙げている。
『娘さんの具合どうでした?』
『今は落ち着いてる。次の授業には出るって言ってた』
早河は現場となった飼育小屋の周囲を見渡した。向かって右側がニワトリ小屋、左側がうさぎ小屋。