ハイスぺ年下救命医は強がりママを一途に追いかけ手放さない
この忙しい最中に引っ越しというのはあまりに大変だ。一時的な同居なので、ほとんどの荷物は持っていかない。最低限の衣類と身の回りのものだけを和馬の車に乗せて、赤坂のマンションに移り住んだ。

「嫌になっちゃう」

和馬の部屋に到着し、興味深そうに探検を開始する真優紀を見張りながら荷解きをした。
部屋は綺麗に片付いていて、私たちを迎えるために和馬が努力したのが見てとれた。
私と真優紀のために一室空けてくれていて、そこにマットレスと布団を敷いた。

「嫌になっちゃうよな。本当にごめん」
「和馬が謝っても仕方ないでしょう。私は真優紀を守るために、和馬が提示した選択肢に乗っただけ」

冷たく響いてしまう言葉に後ろめたさを感じつつ、ふと見ると和馬が優しく微笑んでいた。目線の先には、よちよちと室内を探検する真優紀。危険がないか見張りながら、あどけない行動から目が離せないのだろう。
真優紀の成長は、和馬と出会って五ヶ月だけでかなり大きい。娘の成長を間近で見られるのは、和馬にとっては嬉しいだろう。
すると和馬が私の方を見た。

「月子、夕食どうしようか」
「作る。キッチン借りるから」
「材料、行ってくれれば買い出しに行ってくるよ」
「真優紀を見ててくれるなら、私が行く」

和馬と付き合っていた時代、利用した近くのスーパーもドラッグストアもコンビニも覚えている。

「前に使ってたスーパー、もう閉店しちゃったんだ」
「え、そうなの?」
「ああ。その近くに別の系列のスーパーができたから、今日は俺が買い物に行ってくるよ」

出かけていく和馬を見て、私はふうと息をついた。和馬の部屋からは都心の街並みがよく見える。真優紀を抱き上げ、窓辺に歩み寄った。

「真優紀、綺麗だね」

夕日が街を照らし、空をオレンジに染める。薄暗くなった空には月がうっすら浮かんでいた。

「ママね、夜の空を撮影するのが好きだったんだ」
「まま?」

真優紀が私の顔をぺたぺた触ってくすぐったい。

「いつか真優紀とも写真を撮りに出かけたいな」

その時、和馬はどこにいるだろう。どこにいてほしいと私は思っているのだろう。
答えが出ていない。

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