ハイスぺ年下救命医は強がりママを一途に追いかけ手放さない
「もしよければなんだけど……」
「なに?」

言い淀む私を優しく促し、和馬も立ち上がった。大きな手が私の両手を優しく包んだ。

「今夜、和馬のものになりたい」

和馬の瞳がわずかに大きくなった。それからゆっくりと愛おしそうに細められる。手のひらがひたりと私の頬に押し当てられた。

「いいのか?」

私はかすかに頷いた。気持ちを伝え合い、再出発を決めたけれど、私たちはまだ身体を繋いでいない。最後に抱き合ったのはおそらく真優紀を授かった夜だろう。

「和馬が嫌じゃなければ」
「嫌なわけがないだろう」

言葉が終わるか終わらないかのうちに唇が重なっていた。
和馬の力強い腕が私の腰を抱き、大きな手が私の髪を梳いて顔の角度を変える。キスが深くなる。

「月子が好きだ。だけど、無理強いしたくなかった」

唇をわずかに離し、ささやくように和馬が言う。ダークブラウンの瞳には情熱がともっていた。

「和馬は優しいから私が誘わないと駄目かなって思ってた」

私が照れ笑いしながら言うと、力いっぱい抱きしめられた。強い抱擁に、激しい愛を感じる。

「ん……和馬。苦しいよ」
「ごめん。今まで我慢してきた気持ちが溢れそうで」
「全部受け止めるから」

和馬の顔を両手で包み、少しだけ背伸びをして、今度は私からキスをした。


翌日の午前中、わずかながら増えた荷物とともに私と真優紀は元の家に戻った。和馬と別れるとき、真優紀はしばらく会えないとは思わなかったようで、泣きもせずに手を振っていた。

「真優紀、パパとはまた会えるからね」

私は真優紀と一緒に和馬の車に手を振りながら言った。

「秋には三人で暮らそうね」

自分を励ましているみたいになってしまったのは、やっぱり私自身が寂しかったからだった。
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