シンデレラになりたくないドアマット令嬢は 、魔法使いとの幸せを思い願う
 とある森の奥に、魔法使いの男女が住んでいるという。運が良ければ大層美人な女の魔法使いに出会えるが、その姿を見てしまったが最後。魔王のような男に消し屑にされてしまうらしい。

「でも少しやり過ぎではないかしら?」

 魔法で編み上げられた上品かつシンプルなドレスを身に纏った私は、実質的に夫となったランベールのローブを指先でつまむ。その手は魔法でよく手入れされ傷一つ無い。

「私の愛するリエラ目当てで集まる男なんて皆炭になればいいんだ。リエラの願い通り静かに二人きりで暮らしたいのに、邪魔するやつは許さん」

 ランベールは私の頬に一つ口付けを落とす。

 私が初めて心から思い願った魔法は、本当に魔法のような日々を私に与えてくれた。
 
 森の奥に建てられた、普通の庶民が暮らすような一軒家。そこで目立たないよう静かに、愛する人と共に過ごす。魔法があるから衣食住に困る事は無い。無理に笑顔を貼り付けなくていい。理不尽に打たれる事もない。特別に何かが起こるわけではないが、ゆったりとした理想の毎日を過ごせて私は……幸せだった。
 
 ──魔法は思い願えば何でも叶う、だからこそ『魔法』なのだ。

 いつの日かランベールが言った言葉を思い出す。だから私は、ランベールと生きる未来を想像し、これから先も願い続ける。

「私なんて初めてリエラに魔法で洗ってもらった時から好ましく思っていたのに。後から出てきた男になんて、姿を見せてやる必要も無い」
「じゃあ私を舞踏会になんて行かせなきゃ良かったのよ」

 つい何年も前の出来事を思い出して、私は拗ねるようにしてランベールから顔を背ける。そもそも私目当てで森に入ってくる人間がいるのは「チャーミング王子の求婚を退けた美人の魔法使い」という異名がついてしまったせいだ。

「あれは……すまない。好きな女を綺麗に飾って一緒に踊りたかっただけなんだ。目立つのが嫌いなリエラがまさか本当に行くと言うとは思わなくて……」

 ──行きたくないと、私に縋り付いて甘えて欲しかった。

 そう白状するランベールが……顔に似合わず可愛く思えて。私は不貞腐れた顔をフッと緩めて、彼の手を握る。そして愛する人に口付ける為に背伸びをしつつ──彼の両手に私の魔力を流した。
 
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