大嫌い同士の大恋愛 ー結婚狂騒曲ー
『――そう、ですか。……残念ですが……これからも、聖とは、仲良くしてやってください』
「――申し訳ありません……。……ありがとうございます」
粘る江陽をようやく帰すと、私は、想真さんに電話をかけた。
やはり、期待を持たせるような事はしたくない。
率直に、事実だけを告げると、彼は、一瞬だけ言葉を失くし――そして、穏やかにそう言ってくれた。
『でも、良かったですね。――婚約者さんと、よりを戻せて』
「――……ハイ……」
私は、素直にうなづく。
それは――本心なのだから。
「でも、想真さんには、仕事上の良い刺激をいただきました。……これからは、ライバルとして、よろしくお願いします」
私など、彼の足元にも及ばないだろうが――それを目指したいと思った。
『それは――ええ、ぜひ。――……それに、これから提案するのですが――昇龍さんと合同で、本当に、勉強会などいかがかと思いまして』
「え」
『オレも、羽津紀さんと一緒に出掛けた時、同じ思いでしたよ。同業種、共通の話題にも事欠かないですし、お互いライバルとはいえ、同じ日本の企業です。海外企業に対抗するためにも、協力できるところは、していきたいと思ってますし』
「――想真さん」
私は、彼の構想に驚かされた。
ライバルだからといって、すべて対立するとは限らない事。
――そして――既に、世界を視野に入れている事。
それは――これからを考えると、とても重要な気がした。
「良い考えだと思います」
そう、私が言えば、
『――でしょう?――振られても、ただでは起きませんよ、オレは』
彼は、そう返し、笑った。
翌、月曜日。
江陽は、ようやく叶津家から解放されたのだが、昇龍食品に戻れるはずもなく。
仕事はどうするのかと思えば、あっさりと言われた。
――ああ、親父の独立の手伝いしてるんだよ、今。
どうやら、本気で三ノ宮社長は独立するようで――そして、江陽はきっと、ともに仕事をするのだろう。
――そう言えば……話を聞きに来い、とか、言われたような……。
けれど、息子の嫁と仕事をするとか――気まずさはあるだろうに。
そもそも、私が行く訳にもいかないと思うのだ。
やはり、周囲の感情というものもあるのだから。
「名木沢さん、おはよう」
「――片桐さん。……おはようございます」
社屋に入ると、片桐さんが待っていたのか、ロビーのソファから立ち上がり、私のもとへやって来た。
「――どう?……カタはついたのかな?」
私は、その問いかけに、しっかりとうなづく。
「――ハイ。……本当に……ありがとうございました」
そして、深々と頭を下げた。
すると、彼は、困ったように笑う。
「……顔上げて、名木沢さん。まるで、また、僕が振られてるみたいでしょ」
「え」
私は、言われたとおりに顔を上げ、周囲を見やると――興味津々の野次馬社員達が、私達の様子を、遠巻きにうかがっていた。
「あ、す、すみません!」
慌てる私。――苦笑いを浮かべた、片桐さん。
――その間の空気は――もう、”戦友”の時のそれだった。
私に、まだ、気持ちを残してくれているのは――申し訳無いけれど……。
でも、人の気持ちは、そんな簡単なものではないと、もう、知っている。
だから――私にできるのは、彼とともに”仕事”をする事。
――そして、幸せになる事だ。
「――申し訳ありません……。……ありがとうございます」
粘る江陽をようやく帰すと、私は、想真さんに電話をかけた。
やはり、期待を持たせるような事はしたくない。
率直に、事実だけを告げると、彼は、一瞬だけ言葉を失くし――そして、穏やかにそう言ってくれた。
『でも、良かったですね。――婚約者さんと、よりを戻せて』
「――……ハイ……」
私は、素直にうなづく。
それは――本心なのだから。
「でも、想真さんには、仕事上の良い刺激をいただきました。……これからは、ライバルとして、よろしくお願いします」
私など、彼の足元にも及ばないだろうが――それを目指したいと思った。
『それは――ええ、ぜひ。――……それに、これから提案するのですが――昇龍さんと合同で、本当に、勉強会などいかがかと思いまして』
「え」
『オレも、羽津紀さんと一緒に出掛けた時、同じ思いでしたよ。同業種、共通の話題にも事欠かないですし、お互いライバルとはいえ、同じ日本の企業です。海外企業に対抗するためにも、協力できるところは、していきたいと思ってますし』
「――想真さん」
私は、彼の構想に驚かされた。
ライバルだからといって、すべて対立するとは限らない事。
――そして――既に、世界を視野に入れている事。
それは――これからを考えると、とても重要な気がした。
「良い考えだと思います」
そう、私が言えば、
『――でしょう?――振られても、ただでは起きませんよ、オレは』
彼は、そう返し、笑った。
翌、月曜日。
江陽は、ようやく叶津家から解放されたのだが、昇龍食品に戻れるはずもなく。
仕事はどうするのかと思えば、あっさりと言われた。
――ああ、親父の独立の手伝いしてるんだよ、今。
どうやら、本気で三ノ宮社長は独立するようで――そして、江陽はきっと、ともに仕事をするのだろう。
――そう言えば……話を聞きに来い、とか、言われたような……。
けれど、息子の嫁と仕事をするとか――気まずさはあるだろうに。
そもそも、私が行く訳にもいかないと思うのだ。
やはり、周囲の感情というものもあるのだから。
「名木沢さん、おはよう」
「――片桐さん。……おはようございます」
社屋に入ると、片桐さんが待っていたのか、ロビーのソファから立ち上がり、私のもとへやって来た。
「――どう?……カタはついたのかな?」
私は、その問いかけに、しっかりとうなづく。
「――ハイ。……本当に……ありがとうございました」
そして、深々と頭を下げた。
すると、彼は、困ったように笑う。
「……顔上げて、名木沢さん。まるで、また、僕が振られてるみたいでしょ」
「え」
私は、言われたとおりに顔を上げ、周囲を見やると――興味津々の野次馬社員達が、私達の様子を、遠巻きにうかがっていた。
「あ、す、すみません!」
慌てる私。――苦笑いを浮かべた、片桐さん。
――その間の空気は――もう、”戦友”の時のそれだった。
私に、まだ、気持ちを残してくれているのは――申し訳無いけれど……。
でも、人の気持ちは、そんな簡単なものではないと、もう、知っている。
だから――私にできるのは、彼とともに”仕事”をする事。
――そして、幸せになる事だ。